いやしの道協会ブログ

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7月 東京月例会

1.静坐
坐禅、正座で呼吸、姿勢、心を整えます。

 

2.講話  海野 流観先生
「鍼道発秘における表裏・深浅」

 

いやしの道の治療では、四部録(『万病一風論の提唱』『鍼道発秘』『傷寒論真髄』『経絡流注講義』)を基本として病を見ていきます。
海野先生は湘南研で講義を始めて18年になるそうですが、皆と勉強していくうちに、四部録それぞれが関連して、同じことを違う側面から表現しているところがあるとわかってきたそうです。
又、それは、各本の各章一つずつも同様で、『鍼道発秘』も42の治療法が書いてあるが、共通した考えがあるのだそうです。
以前、観風先生に「それぞれの文章の裏に書いてある、共通したところを読み取らなければ意味がない」と言われた時にはその意味がわからなかったが、経験を積んでいくうちに少しずつ全体像がわかってきたので、今日はそれについてお話したい。とのことで本日の講義が始まりました。

 

・『鍼道発秘』の眼目は「万病一邪」である。
では、邪の場所、動き、性質、如何に取り去るかについて、わかっていない人は治療はできないのか?
自分は「邪」がまだわかってないから良い治療ができないのでは…という不安を抱えた状態では、患者さんも不安になるし、治療効果も落ちてしまうことになります。
ある程度の治療はポイント、概要、大まかな法則が分かっていればできるので、どの段階にいる人も(ある程度)安心して治療をして欲しい。「鍼灸治療とは寒熱虚実のコントロールである」

 

・寒熱虚実のコントロールの柱となる刺法

1章【放心】(虚実に対する刺法)
放心の身体の状態は、下焦が虚して、気が上に上ってしまって、胸と表位に邪が実してしまい、その邪が頭の方に行き、突然精神状態がおかしくなってしまう、というもの。
治療は、胸と表位の邪を瀉し、下焦の虚を補う、ということ。1章には補瀉の一番シンプルな治療法が書かれている。


4章【大熱】(熱に対する刺法)
即刺則抜で早く多く刺す。術を施すエリアは後ろ。


5章【大寒】(寒に対する刺法)
深く久しく留める。肩背のこわばる所のスジバリに当てる。その後手足にビリビリくるほど強く引く。

 


海野先生は、四部録の他に『鍼灸真髄』(沢田流)や『名家灸選』(江戸後期の灸法の専門書)を読み、それらとも共通するところ、法則のようなものがあるのではないか…と考えてきたそうです。
そして、親試実験を繰り返していくうちに、だんだん、見えてきたそうです!
それは、「体のエリアによって、また、深さによって、作用が逆になる」ということ。

 

背中の場合は、深くやると温まり、浅くやると熱をとる。手足は、強く、深めにやると温まり、浅く引くと熱をとる。
・背中を深く、おなかを浅く、手足を深く→あたためる、機能を高める
・背中を浅く、おなかを深く、手足を浅く→熱・痛みをとる

 

☆とどめる、あたためる、機能を高めるという治療が必要な症状
下痢、嘔吐、不妊症

 

☆熱や痛みをとり去る、排出するという治療が必要な症状
便秘、難産

 

・自律神経作用
自律神経の調整という観点からも、エリアによって作用が逆になるということを実感している。

例えば井穴への引き針→人差し指と薬指で作用が逆
薬指の井穴に引き針→目がトロンと閉じてしまう
人差し指の井穴に引き針→目がパッチリ開く
同じような操作をしても、作用が逆となる。

 

・お灸の作用
鍼は、その刺激に「深浅」があり、お灸は知熱灸、多壮灸、打膿灸があり、それが鍼の「深浅」にあたると思われるが、
普通のお灸の刺激は表面の刺激であるので、『名家灸選』はお灸をするエリアで作用を組み立てているのでは?と仮説を立ててみて、各症状の治療法を確認していったそうです。

 

そうは言っても、より洗練された誤差の少ない治療をするには、やはり、気を感じ、邪気を頼りにする必要があります。
今回の講義で伝えたことは「洗練された治療への架け橋」と思ってください。とのことです。

 

海野先生の工夫されてきた過程を惜しみなくお話くださった、大変濃い講義でした。ありがとうございました!

 

 

3・症例検討会 伊藤 翠観先生


「月経(瘀血)と皮膚疾患の観察」

 

【はじめに】この症例は瘀血の排出を目標に続発無月経(二〇一七年一月〜)の治療をしたところ、主訴の皮膚紅斑が減退した例である。
「洗顔後、ひかない顔面発赤」という訴えに困惑するも、以前から諸先輩方から「瘀血と皮膚疾患」の発表がされており、わからないながらも治療のヒントをいただけて取り組めた症例である。
【初診日】二〇一七年七月十四日
【患者】女性 四〇歳 瘦せ型(一六〇cm 四二kg)
【主訴】洗顔後の皮膚紅斑。洗顔後、三時間ほど赤みが消えない。皮膚の乾燥。(症状は顔面のみ)
【現病歴】二〇一五年九月 肌乾燥強まる。背中、腹に湿疹。’一六年六月 肌さらに悪化。眉毛根本から赤み(顔に脂漏性皮膚炎)同年十二月 少し改善。’一七年二月 乾燥は改善。洗顔後の赤みはそのまま。同年六月 赤みは悪化。洗顔やシャワー後に顔面に赤みが生じ三時間ほど消えない。発赤がみられた部位は主に胃経、フェイスラインである。 
【随伴症状】・冷え性・肩凝り・ドライアイ・睡眠、途中覚醒あり(小用あり)・便通二、三日に一度・下肢浮腫 
月経不順(二〇一三年九月(体重三七kg)から。同年十一月〜から一年間ほど鍼灸施術(他院)を受け月経が再開するが、その後まばらに。二〇一七年一月の月経を最後に止まる。
【既往歴】特になし【増悪因子】乾燥 日焼け 石鹸
【その他】朝が弱く怠い。食事は玄米菜食。辛いもの、冷たいものが苦手。子供の頃からトンカツなど食べると胃が不調に。検診にて貧血傾向が指摘されている。知的好奇心が強い。不安神経症的な気質。
【個人歴】ご主人がアメリカ人であり、海外での居住歴(十年以上)が長い。また引越しも多く(十回以上)、海外、国内数か所を転々としている。二〇一四年七月に母親が死去。子供はいない。

【初診所見】側頚部は張り、硬い腹で内はガスで膨満している。後頭部と右季肋部と胸骨に沿って邪熱あり、膻中周辺に圧痛。心下悸。左下腹少腹急結。
脊柱起立筋は痩せてこわばる。手足はひどく冷えている感じではない。顔面艶がなく、くすみ、額は表皮が硬い。顔面に枕などが当ると容易に発赤してしまう。腹診にて異様に痛がる。
脈診/浮細弱 右がやや強め 舌診/紅 苔、薄く無に近い 舌下静脈怒張あり(腹診図参照)
【診断】元来、虚弱体質であり、長年にわたる海外での生活や頻繁な転居はストレスも多かったと思われる。生理不順が日常化していたさ中、今回の主訴につながる皮膚症状が出現。腹状からも瘀血の問題があることが考えられた。また顔面の発赤が胃経にそっていることから脾胃の関与が考えられた.物理的刺激(入浴、洗顔、化粧品の使用など)が契機となり胸中の邪熱が虚した経絡をつたい顔面に出現するのではないかと考えられた。
【治療方針】胸中や季肋部の邪熱をさばき、腹部の気を巡らせ水滞や瘀血の排出(月経を正常化する)をうながす。(「婦人の鍼」「肝症」の治療をイメージ)。

【治療及び経過】鍼 基本一番 寸三使用 全二十八回治療(継続中)。十月まで週一回。以降二、三週に一回ペースで治療。
初診(二〇一七年七月一四日)患者は臆病で触診にて痛がるので今回のみ〇一番鍼にてごく軽めに施術。(心包経、合谷によく引く。季肋部の邪熱を瀉す。気海、中脘、右スジバリ、左大巨他に刺鍼、腹をゆるめる。血海、三陰交に刺鍼。頸肩背中の邪熱を瀉して硬結をゆるめ、痞根、章門などを補す。(太衝辺りで津波鍼?))
第二診(七月二一日)腹のガスがよく出た。寝つきよく途中覚醒なし。前回より腹、背中が柔らかく触診も痛がらない。血海、三陰交に加え次髎などの仙骨上の反応点にも刺鍼。
第三診(七月二八日)頭痛の後、七月二三日、半年ぶりに生理がきて大量出血。熟睡できるが早朝覚醒もあった。入浴後、目が充血、長風呂であちこちに赤み出るが数時間後消褪。
第四診(八月四日)洗顔後の赤み低下。日中痒みが出る。朝方トイレに行かず熟睡できた。毎日便通あり。自宅施灸開始(膈、肝、脾兪、次髎、三陰交、足三里、大巨、中脘)。
(刺激後の赤みはすぐ消える傾向に。八月一二日以降痒みが増悪。口周り、顎の赤み残る。一四日〜胸痛(PMS症状)、帯下多くなる。)
第七診(八月二五日)便秘気味。腰が重い。早朝覚醒あり。嗜眠。眉毛、ほうれい線、顎、フェイスラインに赤みと痒み。木のうろのようなカサブタがある。脈・沈
(八月二八日に月経開始。九月中旬まで赤みと痒みが増悪。冷たいタオルをあて紛らわす。ドライアイ右が辛い。血液の混ざる帯下。過食傾向。※自覚できる変化/汗がかける/熟睡できる/体重増加。)
第十一診(九月二二日)入浴後の赤みが低下。ほうれい線のカサブタがとれて正常な皮膚が出現。胸に違和感(PMS症状)。
(十月二日に月経開始。経血量多め。血塊混ざる。怠さ痛みなし。)
第十四診(十月八日)〜第十五診(十月二十日)便秘。肩関節水平挙上時に痛みあり。風邪ぽいが熱はない。ふわっとする眩暈がした。運動時に痛めたのか左頸部、右肩甲間部に痛みあり。
(第十八診まで前述の運動器疾患が残る。一一月六日月経開始)
第十八診(十一月十七日)肌全体的に艶。顔色良好。手足冷える。
(十二月二二日に月経開始。血塊混ざる。痛みあり。)
※冷え傾向出始めたため冬季は「大寒」の治療を加える。
第二十一診(‘一八年一月一二日)肌荒れないが額こめかみに痒みあり。睡眠の質悪く多夢。鳩尾が痛くて覚醒。食後、腹部の不快感あり。「日本は寒い」と話す。脈・浮、やや緊 舌診・白舌、舌先紅
(尿意で途中覚醒あり。目の痛みあり。肩関節痛あり。治療開始時より五kg体重増加。二月三日に月経開始)
第二十三診(三月二日)頭痛あり風邪のようだった。目の下に青いくまが出現。手指末端が紫色。化粧品を試すせいか、顔の赤みが再発、数時間から一日中消えないこともあり。二月十四日より仕事を開始。生活リズムが崩れ、職場環境にも、かなりストレスを感じている。
(四月七日に月経開始。出血量少め。四月下旬まで、目下に青いくま、手足の冷え、多夢、途中覚醒、便通二、三日に一度など低調な状態。)
第二十七診(五月十八日)目の下のくま、少し改善。顔面、パウダーが粉うきしている(ビニール肌というのだそう※後述)。かわらずスキンケアの際、眉毛や目の下に赤み出現。すぐ消えることも3日残ることもある。仕事のストレスも変化なし。
(六月十二日に月経開始。婦人科未受診。)

【考察】
月経が再開すると皮膚の乾燥と発赤は出にくく、随伴症状の睡眠、便通、下肢浮腫も改善がみられた。
治療開始一カ月を過ぎるとを顔面に痒みが出始め、さらに一カ月を過ぎると顔面から粉をふくかのように皮膚が剥がれ落ち始めた。
月経も回を重ねるとPMS症状が顕著になり、冬季に入ると体調不良、運動器疾患も見られ、皮膚の回復が停滞。
僅かだが未だに赤みは出現する。皮膚の回復がみられ月経が整い始めたため治療間隔をあけたが、冬季の寒冷刺激が加わった上に予期せぬ仕事の開始でストレスが増え、月経周期が大幅に遅延(約三五日から直近約七十日)して主訴が治りきらない状況を作ったと思われる。
先々、身体がどう変転するか、もっと想像して対処するべきだった。発赤に加え、さらに皮膚が薄い(ビニール肌)状態となっており、脾胃虚弱(による栄養摂取障害?鉄など)や菜食傾向(タンパク質不足)などの影響も考えられた。
患者は神経質、依存的、頑固な気質であり、精神的ストレスが体に対する影響は大きいが、自覚的でないと思われる。今まで呼吸法、内観、思考を切る事など助言してきたが、余り当人には響いていないよう。
この「みえざる一鍼」が出来なければ、本当の完治には至らない気がしている。

 

《参考資料》
○機関紙 いやしの道(第八号)女性の皮膚疾患 安田無観先生
○鍼道発秘講義
「婦人の鍼」
孕める時は、合谷、三陰交を忌むべし。石門を多く刺せば、孕むこと無し。余は、男におなじ。
「肝症」
すべて気の滞りより生ず。或は熱し、或は寒し、手足痺れ、筋引きつり、其の甚だしきに至っては、気迫って、物言う事能わぬなり。項、肩、背の内を多く刺して、気を漏らし、後、痞根、章門を深く刺し、手足に強く引くべし。皆、員利鍼を以てすべし。中脘、粱門、気海、毫鍼にて気を治むべし。   
「大寒」
是れは其の鍼を深くして、久しく留むべし。肩背中の強張る所を、多く刺して、その気をめぐらし、後、手足を員利鍼にて、強く刺すべし。立ち所に暖まるなり。

○漢方用語大辞典
○漢方養生談 皮膚掻痒症157p
○病気がみえる「婦人科・乳腺外科」より
・無月経・標準体重の八五%以下で起きて来る。
・続発無月経の原因としては、視床下部性が大半である。

※ビニール肌↓医学的名称ではないそうだが「角層が薄くなって肌理のない、ビニールのようにつるつるになったごく薄い肌」とのこと。肌バリアが崩壊し、肌トラブルを起こしやすい。通常は過剰なスキンケアでなる。肌のターンオーバーの乱れ、新陳代謝が早すぎて角質細胞が育ちきらず未熟な状態。

 

治療の方法や技術だけではなく、患者さんと治療者の信頼関係や距離感など、大事なことを考える機会となり、大変勉強になりました。
 

4・実技稽古
今月は初伝と中伝が組んで稽古しました。

 

5・連絡事項
・合宿の申込期限は7月29日です。是非お早目にお申込みください!

・当協会の副会長である三輪先生が代表を務める「災害 鍼灸マッサージ プロジェクト」が平成30年7月豪雨の支援活動を広島県で始められました。
詳しくはホームページ(https://sinkyu-sos.jimdo.com/)をご覧ください。


(文責:中川)

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