いやしの道協会ブログ

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4月 東京月例会

1.静坐
坐禅、正座で心を整えます。三輪先生から、「何があっても動じてないように」とのお言葉。

 

2.講話  朽名 宗観先生
「ことばが『養生』する 〜アメリカ先住民の口承詩を例にして〜」

 

 

「養生」とは「生を養う」「いのちを養う」ということです。
なので、「ことばが『養生』する」というのは、ことばがいのちを養うということ。
ことばがいのちを養うような力を与えていくというのは、どういうことなのか。
この時間では、それを、アメリカ先住民の口承詩を見ながら考えていきます。

「講話」というのは、鍼灸治療の技術的なことだけではなく「いやしとは何か」「いやしというのはどういうものなのか」を考えていくための時間でもあります。

 

そもそも日本の古方漢方家というのは半分以上が儒学者でした。吉益東洞も、山脇東洋もそうです。
儒学の基本科目は詩、書、礼、楽の4つ。
詩と音楽が必須だというのは意外ではありませんか?

詩で学ぶのは、中国の最も古い漢詩を集めた『詩経』で、日本で言うと『万葉集』にあたるものです。
そして、『詩経』を伝承していったのは瞽師(こし)という盲目の楽師でした。つまり、口承であったのです。
古代のリズムに乗って、耳から入ってくることばとして、学んでいたのです。

一方、北アメリカ先住民は、19世紀にアメリカ合衆国によって奪われ支配されるまで、一万五千年以上にわたって無文字文化を継承してきました。彼らの様々な知恵を伝えていくために数々の口承詩がありました。
それを見ていくことで、『詩経』を伝承してきた様が感じられるのではないか…。
ということで、色々な例を挙げていただきました。

 

●音声言語由来の心と文字言語由来の心
精神科医・神田橋條治先生は、文字言語を持たない人には心身症はいない、との説を唱えられているそうです。
音声言語由来の心(心1)は、生理的な世界と一致した精神機能であり、
文字言語由来の心(心2)は生理的な世界と切り離されて、抽象性が高くなり、頭との親和性が高いそうです。
文字言語由来の心(心2)が音声言語由来の心(心1)にプレッシャーをかけることが、心身症を招く原因となるというのです。
現代社会で生きていくためには、もちろん文字言語由来の心(心2)も重要ですが、音声言語由来の心(心1)を充実させていくことで、バランスをとっていくのが良いのではないか。とのことです。

 

●今回紹介してくださった色々な例
・「ヴィジョン・クエスト」の実際〜スー族のメディスンマン レイム・ディアーの場合〜
・北アメリカ先住民のことば 若い戦いの神の歌(ナバホ族)
・子どもの訓練(ルーサー・スタンディング・ベア)(ラコタ族)
・『平成狸合戦ぽんぽこ』

『平成狸合戦ぽんぽこ』にそんな深い意味があるとは…。是非、観てみようと思いました!

 

 

3・症例検討会 井上 泰観先生
「十月になると起こる腰痛」
今月は、関西支部の井上先生がいらしてくださいました。

 


【はじめに】これは十月になると腰痛を起こす患者で、自分では意図しない治り方をした症例となる。
【患者】二十一歳男性。身長一七〇センチ程。やせ型。鉄工所勤務。
【初診】平成二十九年十月五日。
【主訴】腰の痛み。
【現病歴】二週間ほど前から腰の痛みが起こった。腰痛になる様なこころあたりはなく、風邪を引いた覚えもない。痛みは最初に比べて強くなっている。痛みは左右両方だが、左の方がより痛い。昨年、初めてこの時期に今回のような腰の痛みが起こったが、その時は整体にいって痛みが無くなった。それで今回もいってみたものの改善が見られず鍼灸治療を受けてみたいと来院。病院で検査は受けておりMRIでは異常なく原因は不明と診断された。痛みのせいで仕事を二週間休んでいる。
【既往歴】特になし。
【増悪因子】歩行時に痛み、治療院でベッドに向かう時もゆっくりそろそろと歩いている。特に階段はつらい。また動かなくても同じ姿勢で二十分ほど横になったり座ったりしているだけで痛くなる。前屈、後屈など腰の運動はほとんどできない。

【診察所見】
〈問診〉食欲あり。二便異常なし。睡眠中に寝返り時の腰の痛みで、二回ほど目が覚める。足の冷えあり。
〈脈状〉実、数。尺はやや虚。大きな左右差は無し。
〈舌状〉舌尖紅。舌下静脈怒張。舌を出すときにふるえており、小さくペロッと舌の先のほうしか出せない。
〈腹状〉腹直筋の拘攣あり。また胸から臍あたり(主に右)にかけて熱くザワザワした感じがする。心下部はやや硬いが指は入る。下焦はやや虚。押すとくすぐったがる。
〈背候診〉肩から肩甲間部にかけては皮膚がザラザラして赤みを帯びたまだら模様っぽく細絡が多い。T10からL3あたりにかけて左右緊張していて熱感がある。痛みの最も強い左の腎兪あたりは熱くビリビリとしている。

【診断】主訴の腰の状態以外で気になったのは胸部から腹部にかけての熱感と舌診時の舌の出方やふるえ。腰の状態の悪さに比べて胸部は熱っぽいもののそこまでビリビリしているわけではないが、この胸の邪熱が腰に波及して痛みを起こしているのかもしれない。舌のふるえは初めての鍼灸治療で緊張している可能性も考えた。これらをふまえ最初の診断では病のメカニズムの第五段階とした。

【治療方針】まずは腰部の邪熱を除き、筋の緊張をゆるめて循環を促していく。これは腹部からもアプローチしていく。それとともに胸から腹にかけての邪を散じていく。

【治療経過】治療は寸六、三番のステンレス鍼で行う。鍼灸治療は初めてという事なので、様子をみながら軽めの刺激で始めていく。まずは仰臥位で内関から気を手に引く。次に散鍼で胸腹の邪を散じる。次に腹部の圧痛のあるスジバリを二,三ミリ程度の深さで、撚鍼、雀啄してゆるめていく。このとき左天枢辺りでビリッと邪気を感じる。
 次に伏臥位にて、一番痛みの強い左腎兪辺りを中心にして腰部全体に散鍼、切皮を繰り返し邪熱を瀉していく。この段階で腰全体にあった邪はほとんど無くなるが、左腎兪辺だけに限局して残っている(十→六)。こののち足に気を引き温めるために湧泉に半米粒大の透熱灸を三壮する。
 ここで腰を動かしてもらうと、左に痛みはあるものの可動域は拡がっており(前屈三十度→六十度、後屈は変化なし)腰が軽くなったと言う。立位で右後谿を使って運動鍼をして終了。
 治療後に一緒に来ていた父親と話していると、「精神的な問題ではないか」という。舌の出し方をみてもその可能性はあるなあ、と思いつつも時間もなくそれ以上は話さなかった。

 

・第二診(十月十日)治療効果が続かなかったのか、期待ほどではなかったのかわからないが、二日ほど前に整体に再び行き、逆に腰の状態が悪化してしまったという。痛みの範囲や強さはほぼ初診時に戻っている。治療は基本的に前回と同じだが、左腰には前回よりもやや深めに刺して邪を引きぬくようにしていく。また邪を去る目的で左腰に刺絡を行う。治療後は左腎兪辺を除けば楽だという。腰の可動域も前回同様拡がり、歩行も五割くらいは良くなっているように見える。
治療後に再び父親と話すとストレスの原因は秋祭りの年少者への太鼓の指導役になったからではないかと言っている。これは昨年から役についているらしい。患者の住んでいる地域の秋祭りは仕事を休んで参加するほど盛んで、指導役は責任重大だそうである。

 

・第六診(十月二十四日)二日前は秋祭り当日で腰の調子は良く、当然神輿は担げないが無事に参加はできたという。しかし翌日から再び腰の痛みが悪化。

 

・第七診(十月三十日)腰は痛いが夜がよく眠れるようになったという。また会社にも出勤するようになった。左腰の邪はあいかわらず強い。

 

・第八診(十一月十一日)会社で紹介された接骨院に行ってから腰の状態が悪化し、再び夜に痛みで目が覚めるようになった。左天枢に圧痛あり。治療は同じく胸腹と腰部を中心に行う。またこの時から側臥位にて左腰へ十分ほど置鍼を加える。

 

・第九診(十一月十五日)少し歩くのが楽になってきた。置鍼中はよく眠っている。前屈以外の腰の動きは改善している。

 

・第十一診(十一月二十八日)腰の痛みがかなり改善している。前回もいつもと同じような治療をしたのだが痛みは左腰の一部分のみで、初診の状態からすると三割程度になっている感じがする。会社での残業もするようになった。
 治療後に父親に何か変わったことがあったのかと聞くと、心療内科でもらった抗うつ剤を二週間ほど前から服用していると聞かされる。昨年の腰痛時もその薬を飲みはじめて良くなってきたそうだ。心療内科には日頃から通っているわけではないという。最初の問診時には整体に行って治ったと言っていたのだが。

 

・第十二診(十二月十二日)調子はよく腰の痛みはほとんどない。最初の痛みに比べると一割程度か。やや遠方から来られており治療のために仕事を早退しなくてはいけないことと、父親による送迎が大変なこともあり、ここで治療は終了となる。

 

【考察】第十一診で腰痛が劇的に良くなっていた。もちろんそれまでの鍼灸治療の効果もあったとは思うのだが、腰の症状が良くなったタイミングと抗うつ剤を服用しだしたタイミングが同じだったのは精神面の状態が腰に影響していたのだろう。最初は病のメカニズムの第五段階で胸の毒が腰部に影響を及ぼしたのかと考えた。しかし胸に触れた時の邪は毒性化増大しているというような特別な感じはせず散鍼でいつもすっきりしていた。だとすれば第五段階ではなく所生病的是動病だったのか。祭りの指導役というストレスを受けた時に胸にあった毒が動き、そこから発生した邪が腰痛を起こしたとも考えられる。
 私自身の課題としては、あまり症状に変化が無く壁にぶつかっている気持ちになってしまったことがある。その焦りは患者に伝わっていただろうし、それが他の治療にも手を出させた一因でもあるのだろう。あとは胸の毒による所生的是動病として肩甲間部の触診をもっと細かく見ておけば、なにか治療のポイントがあったかもしれない。肩背部への刺絡もしておけばよかったかと今更ながら思う。

 

【質疑応答】
・(質)腰痛ということなので、一般的な診断、例えば、棘突起間、脊際、一行線、二行線の圧痛や、腸骨稜の際、仙腸関節の圧痛などはどうでしたか?
→(回)SLRなどは実施したが、病因でMRI検査をして異常がなかったということで、そこまで詳しくみていません。
→(質)圧痛点の分布とか、腰痛の原因が筋肉由来か関節由来か、障害部位が具体的にどこなのか…。痛いところが痛みの元なのか、原因は他にあるのかは痛いところを圧せば分かると思うのですが。
→(回)圧したとは思うのですが、特筆すべきことはなかったと思います。
→(質)ということは、痛い箇所が原因ではなかったということではないですか?
→(回)痛い箇所は実している感じが強かったので、あまり圧せる感じではなく、そんなに圧せていません。ただ、触った感じ、そこが一番邪が多いというか強かったです。
→(質)悪いところに鍼すれば良いわけですが、「どこが悪いところなのか」というのをはっきりさせないと、「悪いところに鍼する」ということが難しいと思います。

 

・(質)お肉とかお酒を取らないということですが、胃腸の弱いようなところもありますか?
→(回)あると思います。

 

・(質)胃腸の弱さによる症状は何かありましたか?
→(回)特に症状があるわけではないが、強くはなさそう、という感じです。

 

・(質)お祭りには参加できたとのことですが、会社は依然として休んでいたのですか?
→(回)はい。休んでました。
→(質)太鼓を打つこともできたのですか?
→(回)ずっと打つわけではなく、やっている人達を見回るような感じです。
→(質)この時の痛みの度合いは、出られる程度に治まっていたということですか?
→(回)一日中動き回っていたそうです。

 

・(質)患者のお父さんから精神的な問題かもしれないということを聞いてから、何か変えましたか?
→(回)こちらからは話を投げかけてみて、話したかったら話してもらえるようには心掛けていた。実際の治療においては同じです。邪を見て、それを抜いていくという。

 

・(質)初診時に、ゆっくりそろそろ歩くという様子がありますが、会社に行けるようになった時もその状態だったのですか?
→(回)書いていないのですが、3診目には普通に歩けるようになっていました。
→(質)それは是非書いて欲しい情報です。明確な改善の情報なので。
→(回)すみません。

 

・(質)抗うつ剤はいつ飲み始めたのですか?
→(回)明確にいつとは聞いていないです。
→(質)大体9診の頃ですかね?

 

・(質)心療内科に行くということは、よっぽどのことだと思うのですが、不眠があったり他に何かあったのですか?
→(回)特にある感じはないです。

 

・(質)左腰の邪は、症状が良くなっても変わらなかったのですか?
→(回)左腰の邪だけは、ずっとこんこんと沸き出してくるように、ずっと変わらずありました。
→(質)かなり良くなった11診の時もですか?
→(回)11診の時は、あるけれどもかなりましになっていました。
→(質)左腰の邪が腰痛のポイントだということは間違いないという感じですか?
→(回)そう思いました。

 

・(質)ガスの感じとかはどうでしたか?奥の方触るのかわいそうだな、という感じで触らなかったかもしれないのですが、大棗のすじばりとかはありましたか?
→(回)ガスっぽさは感じませんでした。特に水毒で冷たいことろも感じませんでした。

 

・(質)初診時に「左天枢辺りでビリッと邪気を感じる。」とあり、又、8診に「左天枢に圧痛あり。」とある。これがポイントなんじゃないかなと思うのです。左腰の邪気をとってもとっても沸き出してくるというのは、奥の方からどんどん出ていたのではないかと思うのですが、いかがでしょうか?
→(回)初診でビリッと来たので、「大分抜けたかな」と思ったのですが、その後の経過を見ると抜けてなかったのだと思います。そこに毒があって、そこから邪が出てたのかなと今は思います。

 

・(質)診断のところで胸の邪熱が波及して腰に痛みを起こしたと書かれています。また、抗うつ剤が効くということを考えても胸の邪熱が関係していたと考えられるのですが、胸の邪熱の変化についてはどうですか?
→(回)最初の頃は熱い感じで、2、3回治療していくうちにグッと減りました。

 

などなど、ここに書ききれないほど活発な質疑応答がありました。
井上先生、ありがとうございました。


4・実技稽古
今月は中伝同士、初伝同士での稽古です。

 


5・連絡事項
・指導者になられた伊藤 翠観(すいかん)先生に認定証が授与されました。

 

おめでとうございます!

 

 

(文責:中川)

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