いやしの道協会ブログ

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10月 東京月例会

少し前まですっきりしない天気が続いていましたが、本日は秋らしい晴天に恵まれました。先月は合宿だったため、二ヶ月ぶりに月例会が行われました。

 

1.静坐   坐禅、正座で呼吸、姿勢、心を整えます。



 


 

2.講話  三輪 圓観先生


 

 

 

患者さんとどのように関わるか。

 

それは、施術者の考え方によっても違いますし、患者さんの症状によっても異なります。これが正解不正解というものはありません。


今回、先生ご自身が経験している症例を元に、グループディスカッション形式で話し合いながら、各グループが発表する形で、講話が進んでいきました。




輪になってお互いの意見を出し合っていきます。

 

 

 

もし自分だったらどうするか。

 

 

 

サポートする時にどんな情報を知りたいか。

 

 

 

その情報を知った中でどう関わるか。

 

 

 

 

時には患者さんのご家族に重点を置くことも必要、必ずしも深く関わることが良いわけではない等、様々な観点から意見があり各自新たな気づきがあったと思います。

その中から何を選択するかは、施術者と患者さんの関係の中から選ばれるものですが、その中で、我々が現状で何ができるかを明確にすることも重要だと感じました。




 

3.症例検討会  森 勝先生







元気に外出できる様になった肩凝りの治療
               
【はじめに】
運動が嫌いで歩く事が苦手であった患者が、主訴の肩凝りが改善し元気に外出できる様になった症例。
【患者】五十三才 女性 身長 百六十五儖漫‐し痩せ型。
【個人歴】貿易会社に勤務していた。結婚(いつかは不明)後二児をもうけ、現在は主婦業の傍ら書道を教えている。紹介され来院した。
【初診日】平成三十年五月十五日
【主訴】特に最近悪化した訳では無いが、慢性的に特に右側の頚や肩が重く頚が動かし辛い。(頚の可動域は診察していない)
【現病歴】十代の頃から頚や肩が重く感じていた。頚が動かし辛い。
【随伴症状】喉に突っかかる感じが有り声がかすれて出し辛い。(診察の結果異状は無く病名は無い。発症時期不明)・側彎症(胸椎六番から九番までが右側に捻じれている)・胃下垂・下肢静脈瘤・足の冷え。
【既往歴】三月頃に食後や歩行時に動悸が出た。(心電図に少し乱れが有ったが病名は無かった、初診時動悸の訴えは無し。三月以前及び三月以降初診までの動悸の有無は問診せず)・中学三年に虫垂炎を手術。
【家族歴】父に不整脈が有った。
【診察所見】脈診/全体に柔かく細弱。右≻左。不整脈無し。舌診/大きさ色は普通・薄白苔と歯痕・静脈怒張無し。腹診/心下痞硬・小腹満・臍周辺冷たい・季肋部細絡有り・側腹部硬い・腹部の広範囲にガス。胸脇苦満無し。その他/頸椎前彎減少、細いスジが督脈の傍らに有る。胸椎一番から六番位までの傍側に細絡が有る。胸椎六番から九番位まで右側に捻じれ。問診/食欲普通・小便近い・大便普通・睡眠普通・閉経・足部冷たい・梅核気・精神症状無し。体質改善の為に(体質改善の内容・目的は問診せず)医師からサフラン、柴胡加竜骨牡蛎湯を処方してもらっている(現在の患者の状態に合っていないと考えた)。毎日水を二ℓ飲んでいる。(体に良いからとアドバイスされた為)。
【腹診図】

【診断】脈が細く弱い、舌に歯痕が有る、腹部の広範囲にガスが有る臍周辺の冷たさ等から、水毒により身体全体の気血の巡りが悪くなって肩こりが生じていると判断。陰症で虚証であると考えた。
【治療方針】初診は肩こりの局所を中心に項・肩のスジバリを弛める様に治療(局所に熱を持たせない様に少し早めに抜鍼。腹部には施術せず)。二診から四診までは咳の治療(腹部を補って温め表位の熱を取る)、五診以降は体質改善の治療(腹部を補い温め表位のスジバリを弛め体全体が温まる様にする)。寸六―三番ステンレス鍼使用。
【経過】
 第一診(平成三十年五月十五日)右手の肺経に引き、項・肩のスジバリを弛める様に刺鍼。大椎近辺の細絡に刺絡を加えた。左足部に津波鍼。
 第二診(五月二十二日)十六日は動悸(この時の動悸と以後起こる動悸は、三月に起こった動悸と関係が有ると考えた)がしてお腹が張り、おならがよく出た。二十日から咳が出て風邪と診断された。今日は少し喉がイガイガしているが肩こりは無い。五日間肩こりを感じ無かったがこんな事は十数年ぶりである。下腹部の張りが少し減った(気血の巡りが改善されおならが出た為と考えた)と本人が言う。私の触診では腹部の状態は初診時と余り変化無い。喉や項背は前回無かった熱が有る。脈は前回と同じだが右関上が一番強く少し浮。右心包経に引き、臍周辺は補い温め、心下は少し深く刺し補う。刺鍼後腹鳴。喉・項背は熱を瀉す。動悸予防の為左心包経に引き、左足部に津波鍼。
 第三診(五月二十八日)咳が少し出て喉がイガイガしている、風邪は改善している。肩こりが殆ど無く体調がとても良い。肌が白くなり眼が少し開く様になった。(気血の巡りが改善された為と考えた、眼の症状は訴えてい無かった)指圧に行かなくて済む様になった。体調が良くなり昨日三時間位歩いた。今朝少し動悸。治療は二診と同様。臍周辺に灸を加えた。心下は前回より柔らかい。                                 
第四診(六月五日)咳はほんの少し。肩こりがどんどん辛くなる事が無くなった、こんな事は今まで無かった。お菓子を控えてから体が軽い。海藻を食べ始め体が良くなる感じがする(体を冷やさない為食事指導)。運動が嫌いで歩く事が苦手だったが元気に歩ける様になった。前回の治療に頚椎の督脈の傍側に有る細いスジバリの刺鍼を加えた。
第五診(六月十一日)咳は治った。今まで外出する事が辛かった(外出が辛い事は初診時聞き取れ無かった)が外出できる様になり、階段を上り辛く感じていたが楽に上れる様になった。ライブを三時間半観てよく歩いたが平気だった。肩こりは今日少し感じるが大分楽である。
 第九診(七月十七日)昨日少し動悸が出た。実家に帰省し母の世話をしたが、以前の様に母と話をしていてもイライラし無くなった(普段の生活で病的にイライラする事は無い)。動いても疲れ難くなった。足の冷えは改善した。
 第十三診(八月十四日)動悸がした日が一日だけ有った。肩こりがどんどん辛くなり、下降線を辿ってゆく事が無い。喉の突っかかる感じが改善している。
 第十四診(八月二十一日)以前より汗をかく様になった(他人と比べて汗をかき難いと本人が言う)、小便が近いのは治った。
【考察】
 肩こりは改善したが、症状の有る局所と全身の関係、診断は陰症で虚症としたがその状態から何故肩こりが起こるのか等を余り考えなかったので今後は一歩前に進んだ考え方が出来る様にしたい。
目立った瞑眩は起き無かったが、以前よりも汗をかく様になったと言う事は汗の形で毒を排出する事が出来る様になったと推察した。
運動が嫌いで歩く事が苦手な患者が元気に外出し、長い時間・距離を歩く事が出来る様になった事は治療によって気血の巡りが改善された為と考えた。母と話してもイライラしなくなったと言う事だが、これも巡りが良くなり精神状態が改善されたと考えた。症例資料で読んだ事は有ったが自身の症例では余り無かったので良い経験となった。



 

4.実技タイム




各自、指導者の先生と課題を確認します。




今回もとても活気のあるものになりました。

 

 


来月は18日14:00から開催されます。

よろしくお願い致します。

 

(文責・尾崎)

| ◇東京月例会 | 07:09 | - | -
8月 東京月例会
今年は本当に暑い夏になっていますが、
関東はここ数日、秋のようなお天気。
少し過ごしやすく感じます。
さてさて、お盆休みも終わりの本日、
恒例、東京月例会が開催されました。


正座タイム



 



蝉時雨とエアコンの音をただただ追いかけ坐する。




講和 石部愚観先生



 



本日はわざわざ大阪から石部先生がいらしてくださりました。
そして、おもむろに白板へ…。波乱の予感。


まず広島の豪雨災害、災プロへの協力への感謝を述べられました。

石部先生は治療に関して「引き出しは多い方がよい」とのスタンスで、これまで
機関紙にて整体法、スパイラルテープ、刺絡療法、小児鍼、置鍼法などを書かれてきた
そうです。(10号、11号参照)寸6、3番の一本鍼に拘らず、
臨床においては、一寸02番から三寸10番までの鍼を使いこなすとのこと。
鍼以外のアプローチとして「患者さんと散歩をする」「一緒にお昼ご飯を食べる」
「手を握って患者さんの話を聞く」「患者さんを抱きしめて背中をとんとん叩く」
などを行っているとのことです。
上記の紹介と共に、患者さんに合わせるとは何か?を体験して欲しいそう。

患者さんにリラックスして話をしてもらうには?公園で話を聞く
治療院では話さなかった両親や別れたご主人の事などを話してきて
患者さんとの距離がぐっと近づいた。
また、一緒に時間を過ごすことを大切にする患者とはご飯を食べる。
胃弱の患者さんとは、一緒にご飯を食べに行き普通に食べれていること
を指摘して喜んでもらったり。
外出した方がよい鬱病の患者さんとは水族館へ行き、色々な個性の魚を例えに、
現状を受け入れて、機会があれば変われることもあるとつぶやいたり・・。
手を握ってひたすら話だけ聞いていただけの時があったり、抱きしめて背中を
とんとん叩いて治療(タッピング療法というそうだ。虐待や親に捨てられたりした
経験のある人に有効)したり。※セクハラに間違えられないように注意。
治療法に違和感を覚えたら伝えて下さいと言ってあるそう。
石部先生は今話してきたような事をすることを皆には勧めないそうで、カウンセラーでも
臨床とプライベートは分けるべきとあったりするそうなのですが、
先生は24時間365日、何かあれば連絡してきてくださいと、患者さんに伝えているそう。
そう言われたことが患者さんの安心につながるからだそう。
どちらが正しいとかではなく、各々が患者さんとの距離を感じながら
どのくらいプライベートに踏み込むかを決め、それに対してはブレないように、、
とおっしゃっていました。
ともあれ患者さんとの心の距離が分からなかったら何も出来ない。
患者さんを丸ごと受け取るとは何か考えてみよう!とのことで、ここからは
実技タイムとなりました。
初中伝と指導者に分けて二人一組に。

いつもの治療ポジションで相手の腹に手を置くのみ。
指導者は鍼を持たずして鍼をする。



次は鍼を持った感じで。初中伝者は違いに気づけてますか?



石部先生の得意技「背中トントン」をみんなで練習。
少し照れ笑いがある中で、自然にハグしている先生方が。。(笑)
下は石部先生のお手本(👏)





なかなか、誰しも実践出来る事ではありませんが、非常に面白いアプローチ!
初学者の方々はなんだろう?と思ったかもしれませんが、これが私たちが「いやしの道」と
いう名前の集団である所以です。
石部先生、貴重な講義をありがとうございました。



臨床検討会 堀 麻里 先生




「転倒後の長引く腰痛が仙腸関節刺鍼で改善」
患者は数年前から定期的に治療(腰痛のメンテナンス)している患者(77才 女性 やせ型)だそう。
昨年12月末に交差点で人にぶつかって横転、二日後に歩けない程の腰痛を発症。
レントゲンでは異常なしとのこと。
<主訴>右腰痛、右坐骨部痛、右恥骨部痛 (2017年12月25日初診)
<随伴症状・他疾患>骨粗しょう症、左下肢静脈瘤
<既往症>腰椎圧迫骨折(L2辺り 2010〜)うつ症状(2008〜2010)
※イライラ多く右季肋部はいつも熱い
<診察所見>座位以外の姿勢がつらく腹診と治療は座位にて行う。
脈状・弦浮やや数 右が強い 舌状・暗紅 微黄苔 腫れぼったい 右舌下静脈怒張
他・普段は快便だがやや便秘。痛みにより眠りは浅い。
<診断>右腰臀部打撲、衝撃による右恥骨部炎症と推測。痛みが出るまで二日かかったのは
筋肉痛のように年齢や体質により症状が出るまでに時間のかかるタイプと診た。
<治療方針>先急後緩で主訴部分に絞って治療。
<治療内容>熱感と邪を感じる右腰部、右坐骨部、右恥骨部に対して瀉法の散鍼と単刺で
邪と熱を取り、右太衝に引き鍼。
<経過>
・第一診 痛みの変化なし。脈状は、やや柔らかく。
・第二診〜四診(12/26、12/27、12/29)右恥骨部が一番痛む。恥骨部を中心に第一診と
同様に治療。施術直後の痛みの変化なし。四診目、熱感と邪が少し減る。ほぼ歩けない状態
から杖をつけば家事ができる。「寝たきりになったら…」と不安な様子。
・第五、六診(1/4、1/11)座位以外の姿勢で治療ができるようになる。足を着いた時の
ビーンと痛むのは減少、家での杖歩行が可能に。一番痛む右鼠蹊部をかばうせいか左股関節
周辺も痛む。右鼠蹊部中心に、右腰部坐骨部、左股関節周辺を単刺。左足へ引き鍼。
「杖なしで歩けなくなったら怖い」と弱気なので「最初に比べたらだいぶ早く歩けて
いますよ」と励ます。
・第七診(1/19)杖をついて近所まで外出可能。杖なしで数歩歩けるようになった。踏み込
んだ時、右恥骨部から鼠径部に痛みが走るが、腰部坐骨部の痛みは軽減。
・第八診(1/29)杖なしで当院まで歩けた(徒歩5分程)。踏み込み時の痛みはある。
前後屈、側屈痛の検査法(―)。右横臥位、仰臥位、長時間の伏臥位で腰が痛い。気温が低いせいか顔色が青白く脈状も弱く、便ややゆるめ。手足、腹部の冷えがひどく、腹部点灸、
手足に台座灸を加える。「以前のように早く歩けず安静にしているのがもどかしい」とのこと。
・第九診(2/5)踏み込み時の鼠径部痛が減少。昨日30分ほど歩き右腰をかばって体に力が
入り過ぎてどっと疲れた。手足、腹部の冷えに変化なく、ここ数日便がゆるい。陽池に
台座灸、気海、復溜に灸頭鍼。
・第十診(2/15)痛みの程度は前回と変わらずだが、電車に乗り、休んでいた趣味のパッチ
ワークに出かけられた。
・第十一、十二診 著変なし。
・第十三診(3/15)踏み込み時の痛みはなくなったが、右腰部、坐骨部に痛み再発。
右大腿部にもビリビリした痛みが走る。レントゲン検査で異常なし、坐骨神経痛と診断
される。立位で腰の運動痛はなく下肢感覚異常もない。右腰部に邪熱が最も強い。
パッチワーク作りを一日4時間以上、一か月間、座りっぱなしで作業したことが、
坐骨神経痛を誘発したとみた。右腰部、右坐骨部、右臀部、右大腿部に単刺。左足に
引き鍼。
・第十四診(3/23)パッチワークの時間を減らした。踏み込み時の痛み、ビリビリ感も減る。右腰の細絡に刺絡。右臀部、右大腿部に単刺。左足に引き鍼。
・第十五(4/3)踏み込み時の痛みがさらに減る。ニュートンテストを行ったところ、
陽性のため右仙腸関節裂隙に単刺。「すごく響く。この瞬間から腰痛やビリビリした
痛みがなくなった気がする」と患者。
これ以降主訴が劇的に改善。六月上旬にハワイに行ったが飛行機内でも腰を気にする
ことなく楽しめた。
<考察>横転時の腰痛と、第十三診以降の腰痛は性質が違うように感じる。前者は横転時の衝撃による外傷が原因で、後者は元々弱かった腰に外傷が加わり患者の日々の過ごし方
(根詰めて作業)により坐骨神経痛と仙腸関節障害を引き起こしたものと思われる。
第一診から第十四診は緩やかな改善しかなく、それが自分の診断や治療のせいなのか、
外傷の治癒していく過程や年齢により時間を要するものなのかが分からなかった。しかし
十五診時の劇的な変化を見ると、適切な診断と治療ができると年齢に関わらず効くもの
だとわかり、診立ての大切さを実感した症例である。仙腸関節障害がどの時点で起こっていたのか今となってはわからないが、もっと早く見つけていたら、より早い時点で改善して
いたかと思う。

堀麻里先生は今回初めての発表ということで、内容をまとめたり質問に答えたりと、大変であっただろうと思います。ただ沢山の先生方からご助言いただき、とても参考になったのではと思います。


実技タイム

申し訳ございません。指導に夢中?で、(あたふたしていて)写真を撮り忘れました(-_-;)
しかし、暑い中、集まった志あるもの達ばかりですから、白熱した実技風景であることは間違いありません。






上、最後の総礼時の写真。大所帯になってきました。

来月は合宿ですので七倉会館での例会はありません。
お間違えのないように。

(文責・伊藤)
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| ◇東京月例会 | 00:54 | - | -
7月 東京月例会

1.静坐
坐禅、正座で呼吸、姿勢、心を整えます。

 

2.講話  海野 流観先生
「鍼道発秘における表裏・深浅」

 

いやしの道の治療では、四部録(『万病一風論の提唱』『鍼道発秘』『傷寒論真髄』『経絡流注講義』)を基本として病を見ていきます。
海野先生は湘南研で講義を始めて18年になるそうですが、皆と勉強していくうちに、四部録それぞれが関連して、同じことを違う側面から表現しているところがあるとわかってきたそうです。
又、それは、各本の各章一つずつも同様で、『鍼道発秘』も42の治療法が書いてあるが、共通した考えがあるのだそうです。
以前、観風先生に「それぞれの文章の裏に書いてある、共通したところを読み取らなければ意味がない」と言われた時にはその意味がわからなかったが、経験を積んでいくうちに少しずつ全体像がわかってきたので、今日はそれについてお話したい。とのことで本日の講義が始まりました。

 

・『鍼道発秘』の眼目は「万病一邪」である。
では、邪の場所、動き、性質、如何に取り去るかについて、わかっていない人は治療はできないのか?
自分は「邪」がまだわかってないから良い治療ができないのでは…という不安を抱えた状態では、患者さんも不安になるし、治療効果も落ちてしまうことになります。
ある程度の治療はポイント、概要、大まかな法則が分かっていればできるので、どの段階にいる人も(ある程度)安心して治療をして欲しい。「鍼灸治療とは寒熱虚実のコントロールである」

 

・寒熱虚実のコントロールの柱となる刺法

1章【放心】(虚実に対する刺法)
放心の身体の状態は、下焦が虚して、気が上に上ってしまって、胸と表位に邪が実してしまい、その邪が頭の方に行き、突然精神状態がおかしくなってしまう、というもの。
治療は、胸と表位の邪を瀉し、下焦の虚を補う、ということ。1章には補瀉の一番シンプルな治療法が書かれている。


4章【大熱】(熱に対する刺法)
即刺則抜で早く多く刺す。術を施すエリアは後ろ。


5章【大寒】(寒に対する刺法)
深く久しく留める。肩背のこわばる所のスジバリに当てる。その後手足にビリビリくるほど強く引く。

 


海野先生は、四部録の他に『鍼灸真髄』(沢田流)や『名家灸選』(江戸後期の灸法の専門書)を読み、それらとも共通するところ、法則のようなものがあるのではないか…と考えてきたそうです。
そして、親試実験を繰り返していくうちに、だんだん、見えてきたそうです!
それは、「体のエリアによって、また、深さによって、作用が逆になる」ということ。

 

背中の場合は、深くやると温まり、浅くやると熱をとる。手足は、強く、深めにやると温まり、浅く引くと熱をとる。
・背中を深く、おなかを浅く、手足を深く→あたためる、機能を高める
・背中を浅く、おなかを深く、手足を浅く→熱・痛みをとる

 

☆とどめる、あたためる、機能を高めるという治療が必要な症状
下痢、嘔吐、不妊症

 

☆熱や痛みをとり去る、排出するという治療が必要な症状
便秘、難産

 

・自律神経作用
自律神経の調整という観点からも、エリアによって作用が逆になるということを実感している。

例えば井穴への引き針→人差し指と薬指で作用が逆
薬指の井穴に引き針→目がトロンと閉じてしまう
人差し指の井穴に引き針→目がパッチリ開く
同じような操作をしても、作用が逆となる。

 

・お灸の作用
鍼は、その刺激に「深浅」があり、お灸は知熱灸、多壮灸、打膿灸があり、それが鍼の「深浅」にあたると思われるが、
普通のお灸の刺激は表面の刺激であるので、『名家灸選』はお灸をするエリアで作用を組み立てているのでは?と仮説を立ててみて、各症状の治療法を確認していったそうです。

 

そうは言っても、より洗練された誤差の少ない治療をするには、やはり、気を感じ、邪気を頼りにする必要があります。
今回の講義で伝えたことは「洗練された治療への架け橋」と思ってください。とのことです。

 

海野先生の工夫されてきた過程を惜しみなくお話くださった、大変濃い講義でした。ありがとうございました!

 

 

3・症例検討会 伊藤 翠観先生


「月経(瘀血)と皮膚疾患の観察」

 

【はじめに】この症例は瘀血の排出を目標に続発無月経(二〇一七年一月〜)の治療をしたところ、主訴の皮膚紅斑が減退した例である。
「洗顔後、ひかない顔面発赤」という訴えに困惑するも、以前から諸先輩方から「瘀血と皮膚疾患」の発表がされており、わからないながらも治療のヒントをいただけて取り組めた症例である。
【初診日】二〇一七年七月十四日
【患者】女性 四〇歳 瘦せ型(一六〇cm 四二kg)
【主訴】洗顔後の皮膚紅斑。洗顔後、三時間ほど赤みが消えない。皮膚の乾燥。(症状は顔面のみ)
【現病歴】二〇一五年九月 肌乾燥強まる。背中、腹に湿疹。’一六年六月 肌さらに悪化。眉毛根本から赤み(顔に脂漏性皮膚炎)同年十二月 少し改善。’一七年二月 乾燥は改善。洗顔後の赤みはそのまま。同年六月 赤みは悪化。洗顔やシャワー後に顔面に赤みが生じ三時間ほど消えない。発赤がみられた部位は主に胃経、フェイスラインである。 
【随伴症状】・冷え性・肩凝り・ドライアイ・睡眠、途中覚醒あり(小用あり)・便通二、三日に一度・下肢浮腫 
月経不順(二〇一三年九月(体重三七kg)から。同年十一月〜から一年間ほど鍼灸施術(他院)を受け月経が再開するが、その後まばらに。二〇一七年一月の月経を最後に止まる。
【既往歴】特になし【増悪因子】乾燥 日焼け 石鹸
【その他】朝が弱く怠い。食事は玄米菜食。辛いもの、冷たいものが苦手。子供の頃からトンカツなど食べると胃が不調に。検診にて貧血傾向が指摘されている。知的好奇心が強い。不安神経症的な気質。
【個人歴】ご主人がアメリカ人であり、海外での居住歴(十年以上)が長い。また引越しも多く(十回以上)、海外、国内数か所を転々としている。二〇一四年七月に母親が死去。子供はいない。

【初診所見】側頚部は張り、硬い腹で内はガスで膨満している。後頭部と右季肋部と胸骨に沿って邪熱あり、膻中周辺に圧痛。心下悸。左下腹少腹急結。
脊柱起立筋は痩せてこわばる。手足はひどく冷えている感じではない。顔面艶がなく、くすみ、額は表皮が硬い。顔面に枕などが当ると容易に発赤してしまう。腹診にて異様に痛がる。
脈診/浮細弱 右がやや強め 舌診/紅 苔、薄く無に近い 舌下静脈怒張あり(腹診図参照)
【診断】元来、虚弱体質であり、長年にわたる海外での生活や頻繁な転居はストレスも多かったと思われる。生理不順が日常化していたさ中、今回の主訴につながる皮膚症状が出現。腹状からも瘀血の問題があることが考えられた。また顔面の発赤が胃経にそっていることから脾胃の関与が考えられた.物理的刺激(入浴、洗顔、化粧品の使用など)が契機となり胸中の邪熱が虚した経絡をつたい顔面に出現するのではないかと考えられた。
【治療方針】胸中や季肋部の邪熱をさばき、腹部の気を巡らせ水滞や瘀血の排出(月経を正常化する)をうながす。(「婦人の鍼」「肝症」の治療をイメージ)。

【治療及び経過】鍼 基本一番 寸三使用 全二十八回治療(継続中)。十月まで週一回。以降二、三週に一回ペースで治療。
初診(二〇一七年七月一四日)患者は臆病で触診にて痛がるので今回のみ〇一番鍼にてごく軽めに施術。(心包経、合谷によく引く。季肋部の邪熱を瀉す。気海、中脘、右スジバリ、左大巨他に刺鍼、腹をゆるめる。血海、三陰交に刺鍼。頸肩背中の邪熱を瀉して硬結をゆるめ、痞根、章門などを補す。(太衝辺りで津波鍼?))
第二診(七月二一日)腹のガスがよく出た。寝つきよく途中覚醒なし。前回より腹、背中が柔らかく触診も痛がらない。血海、三陰交に加え次髎などの仙骨上の反応点にも刺鍼。
第三診(七月二八日)頭痛の後、七月二三日、半年ぶりに生理がきて大量出血。熟睡できるが早朝覚醒もあった。入浴後、目が充血、長風呂であちこちに赤み出るが数時間後消褪。
第四診(八月四日)洗顔後の赤み低下。日中痒みが出る。朝方トイレに行かず熟睡できた。毎日便通あり。自宅施灸開始(膈、肝、脾兪、次髎、三陰交、足三里、大巨、中脘)。
(刺激後の赤みはすぐ消える傾向に。八月一二日以降痒みが増悪。口周り、顎の赤み残る。一四日〜胸痛(PMS症状)、帯下多くなる。)
第七診(八月二五日)便秘気味。腰が重い。早朝覚醒あり。嗜眠。眉毛、ほうれい線、顎、フェイスラインに赤みと痒み。木のうろのようなカサブタがある。脈・沈
(八月二八日に月経開始。九月中旬まで赤みと痒みが増悪。冷たいタオルをあて紛らわす。ドライアイ右が辛い。血液の混ざる帯下。過食傾向。※自覚できる変化/汗がかける/熟睡できる/体重増加。)
第十一診(九月二二日)入浴後の赤みが低下。ほうれい線のカサブタがとれて正常な皮膚が出現。胸に違和感(PMS症状)。
(十月二日に月経開始。経血量多め。血塊混ざる。怠さ痛みなし。)
第十四診(十月八日)〜第十五診(十月二十日)便秘。肩関節水平挙上時に痛みあり。風邪ぽいが熱はない。ふわっとする眩暈がした。運動時に痛めたのか左頸部、右肩甲間部に痛みあり。
(第十八診まで前述の運動器疾患が残る。一一月六日月経開始)
第十八診(十一月十七日)肌全体的に艶。顔色良好。手足冷える。
(十二月二二日に月経開始。血塊混ざる。痛みあり。)
※冷え傾向出始めたため冬季は「大寒」の治療を加える。
第二十一診(‘一八年一月一二日)肌荒れないが額こめかみに痒みあり。睡眠の質悪く多夢。鳩尾が痛くて覚醒。食後、腹部の不快感あり。「日本は寒い」と話す。脈・浮、やや緊 舌診・白舌、舌先紅
(尿意で途中覚醒あり。目の痛みあり。肩関節痛あり。治療開始時より五kg体重増加。二月三日に月経開始)
第二十三診(三月二日)頭痛あり風邪のようだった。目の下に青いくまが出現。手指末端が紫色。化粧品を試すせいか、顔の赤みが再発、数時間から一日中消えないこともあり。二月十四日より仕事を開始。生活リズムが崩れ、職場環境にも、かなりストレスを感じている。
(四月七日に月経開始。出血量少め。四月下旬まで、目下に青いくま、手足の冷え、多夢、途中覚醒、便通二、三日に一度など低調な状態。)
第二十七診(五月十八日)目の下のくま、少し改善。顔面、パウダーが粉うきしている(ビニール肌というのだそう※後述)。かわらずスキンケアの際、眉毛や目の下に赤み出現。すぐ消えることも3日残ることもある。仕事のストレスも変化なし。
(六月十二日に月経開始。婦人科未受診。)

【考察】
月経が再開すると皮膚の乾燥と発赤は出にくく、随伴症状の睡眠、便通、下肢浮腫も改善がみられた。
治療開始一カ月を過ぎるとを顔面に痒みが出始め、さらに一カ月を過ぎると顔面から粉をふくかのように皮膚が剥がれ落ち始めた。
月経も回を重ねるとPMS症状が顕著になり、冬季に入ると体調不良、運動器疾患も見られ、皮膚の回復が停滞。
僅かだが未だに赤みは出現する。皮膚の回復がみられ月経が整い始めたため治療間隔をあけたが、冬季の寒冷刺激が加わった上に予期せぬ仕事の開始でストレスが増え、月経周期が大幅に遅延(約三五日から直近約七十日)して主訴が治りきらない状況を作ったと思われる。
先々、身体がどう変転するか、もっと想像して対処するべきだった。発赤に加え、さらに皮膚が薄い(ビニール肌)状態となっており、脾胃虚弱(による栄養摂取障害?鉄など)や菜食傾向(タンパク質不足)などの影響も考えられた。
患者は神経質、依存的、頑固な気質であり、精神的ストレスが体に対する影響は大きいが、自覚的でないと思われる。今まで呼吸法、内観、思考を切る事など助言してきたが、余り当人には響いていないよう。
この「みえざる一鍼」が出来なければ、本当の完治には至らない気がしている。

 

《参考資料》
○機関紙 いやしの道(第八号)女性の皮膚疾患 安田無観先生
○鍼道発秘講義
「婦人の鍼」
孕める時は、合谷、三陰交を忌むべし。石門を多く刺せば、孕むこと無し。余は、男におなじ。
「肝症」
すべて気の滞りより生ず。或は熱し、或は寒し、手足痺れ、筋引きつり、其の甚だしきに至っては、気迫って、物言う事能わぬなり。項、肩、背の内を多く刺して、気を漏らし、後、痞根、章門を深く刺し、手足に強く引くべし。皆、員利鍼を以てすべし。中脘、粱門、気海、毫鍼にて気を治むべし。   
「大寒」
是れは其の鍼を深くして、久しく留むべし。肩背中の強張る所を、多く刺して、その気をめぐらし、後、手足を員利鍼にて、強く刺すべし。立ち所に暖まるなり。

○漢方用語大辞典
○漢方養生談 皮膚掻痒症157p
○病気がみえる「婦人科・乳腺外科」より
・無月経・標準体重の八五%以下で起きて来る。
・続発無月経の原因としては、視床下部性が大半である。

※ビニール肌↓医学的名称ではないそうだが「角層が薄くなって肌理のない、ビニールのようにつるつるになったごく薄い肌」とのこと。肌バリアが崩壊し、肌トラブルを起こしやすい。通常は過剰なスキンケアでなる。肌のターンオーバーの乱れ、新陳代謝が早すぎて角質細胞が育ちきらず未熟な状態。

 

治療の方法や技術だけではなく、患者さんと治療者の信頼関係や距離感など、大事なことを考える機会となり、大変勉強になりました。
 

4・実技稽古
今月は初伝と中伝が組んで稽古しました。

 

5・連絡事項
・合宿の申込期限は7月29日です。是非お早目にお申込みください!

・当協会の副会長である三輪先生が代表を務める「災害 鍼灸マッサージ プロジェクト」が平成30年7月豪雨の支援活動を広島県で始められました。
詳しくはホームページ(https://sinkyu-sos.jimdo.com/)をご覧ください。


(文責:中川)

| ◇東京月例会 | 12:29 | - | -
6月 東京月例会

1.静坐
坐禅、正座で呼吸、姿勢、心を整えます。

 

2.講話  池内 毘観先生
「鍉鍼による私の気の感得方法」

 

 

池内先生は、以前は現代医学的な鍼灸を実践されていたそうですが、目に見える臓器や組織を対象にした鍼灸では色々な検査ができ、手術もできるお医者さんにはかなわないのではないか…と思うところがあり、目に見えない「気」を感得し、扱えるようになりたいという思いを強く持つようになって、いやしの道協会にいらっしゃったそうです。

皆さんも実技の時間などで、「邪気がわかるようになりたい」とか「響きがわかるようになりたい」とか「気」に関するところに興味が集まっているように思うと池内先生はおっしゃいます。
そして、いやしの道協会では、「気」を感得できるようになるよう、実技のチェックシートにも色々な項目があります。
・気がいたることを感得できるか
・鍼先から気が体の隅々まで広がるか
・鍼先から気が外へ広がるか
・鍼先から気が無限に広がるか
など

 

観風先生の著書『万病一風論の提唱』には「気」についてどう書いてあるかと言うと、「気」とは「目に見えない働き」とあります。
真気:臓器、血管、神経、組織などの諸器官を正常に機能させるはたらき
邪気:臓器、血管、神経、組織などの諸器官を異常に機能させるはたらき

そして、池内先生は、いやしの道の機関誌(17号)にも書いておられる通り、東日本大震災の後にボランティアで一日に二十人ほどの治療を「鍉鍼のみ」で治療した経験が、気の存在を確固たるものとして肚落ちさせるきっかけとなったそうです。

体内に刺入することなく、ツボをギュウギュウ押すわけでもない、侵害刺激ではない「鍉鍼」での治療で効果が出ていることについて自分自身で確認するために、一人二役(治療者と患者)を演じ、鍉鍼でセルフケアをしてみることにしてみたのだそうです。

そのためにまず、鍉鍼の出来上がりイメージをスケッチした図を持って、御徒町の金物屋さんに赴き、金の鍉鍼、銀の鍉鍼を格安で準備されたとか。

 

 

セルフケアの具体例
下腹部の関元あたりのペコペコに虚したところに金の鍉鍼を当てておく
(治療者として)冷え→温まってくる
(患者として)頭の熱が取れ涼しくなってくる、翌日の疲れが全然違う

 

鍉鍼でのセルフケアの実演

 

画家のピカソを例にされ、毫鍼を扱えてこその鍉鍼だ。というお話が印象深かったです。
又、逆に、普段毫鍼を扱う際も、物理刺激としてでなく、気を扱っているという意識を強く持つ必要があるのだなと思いました。

 

 

3・症例検討会 木村 克彦先生
「高齢不妊治療」

 

【はじめに】平成29年2月より肩こり腰痛で治療していた患者さんの不妊治療症例です。未だ妊娠にはいたっていません。
初めての不妊治療であることや患者さんが高齢で時間がかかるとさらに妊娠が難しくなることから、今後の治療に関して皆様のご意見、ご助言を頂きたく発表いたします。

 

【患者】44歳 身長161cm 体重 49kg 色白細身 事務職
【初診】平成29年11月12日
【主訴】不妊
【現病歴】
平成26年5月 結婚。
平成27年5月 婦人科通院始める(排卵誘発剤使用)。タイミング法は行わず、人工授精を二か月行う。その後体外受精を六回行う。採卵するが空胞が多く、移植にはいたらず。移植一回のみ。
平成28年12月 漢方専門医院受診。その後、月一回定期的に通院。臍下硬さが顕著とのことで当帰四逆湯・折衝湯・八味地黄湯服薬を始める。
平成29年2月 婦人科変更(排卵誘発剤使用)。体外受精を六回行う。卵胞は採取できるが分割が悪く移植までいたらないことが多かった。移植は二回。
平成30年1月 婦人科変更。血液検査の結果、甲状腺機能が数値は正常範囲内だが、高めのため服薬をはじめる。
平成30年4月 当帰芍薬散に変方。舌下動脈怒張は減り、生理痛は楽になっている。*漢方薬服用前と比較して

【既往歴】子宮筋腫
【随伴症状】肩こり、腰重
【その他】月経周期 不順、長めのことが多い。

【診察所見】脈:沈弱 右〉左 
舌:薄白苔 歯痕ややあり 舌先紅  
腹診:胸 熱あり 左季肋部・季肋下硬い 左右下焦奥冷え 下焦虚冷え 腰殿仙骨 硬い(右〉左) 
足先冷
小便 一日に五、六回(黄色) 
大便 一日に一、二回(軟便)

【診断】下焦の寒による女子胞の機能低下。

【治療方針】よい卵子が採取できるようように卵巣機能を高めることや着床しやすいように子宮機能を高めることを目的に下焦の冷えを取り気血のめぐりをよくする。
【治療】下腹部 三、四か所補法。冷えなどの反応が強い部位に深めに刺鍼時間を長めにする。
左下焦の気血のめぐりを促進するために、左季肋部と季肋下を緩める。バネ式提鍼使用。 
下焦への気血のめぐりを促進目的に両仙骨腰部を緩める。 三陰交・補。 合谷・寫。

【治療経過】寸六一番使用 バネ式提針使用
初診 11月12日 
第二診 11月23日 下焦中央硬さあり。 *右下焦邪あり。 左下焦冷えなし。 仕事ストレス増える。 11月18日採卵。
第三診 12月16日 *下焦右圧痛あり。 *左腹直筋硬さあり。 左腹直筋刺鍼部位追加。前日採卵。
第四五六診 左下焦冷えなし。
第七診 1月26日 *右下焦圧痛あり。 *左下焦冷えなし。 1月17日採卵。
第八診 2月3日  月経五日目。 下焦中央と左の冷え。 下焦右圧痛あり。 *病院を変える。
第九診 2月10日 排卵直前。 *下焦中央及び右奥硬と圧痛。
第一〇診 2月17日 排卵なし。 下焦中央冷えあり。 *下焦左右圧痛あり。 右奥硬さあり。*右腹奥スジを緩めるような手技追加(スジにあてるか反応のある深さで微雀琢)。 
第一一診 3月10日 排卵なし。 *下焦中央虚あり。*下焦左右に邪あり。 *年度末の為、仕事によるストレスが増える。帰宅時間が遅くなる。
第一二診 3月17日 月経二日目 下焦中央冷えがいつもより少ない。*月経周期を意識(『機関誌第十五号』五四一ページ越籐先生症例参考に*古血排出意識(杉山真伝流「推指菅術」使用)
第一三診 4月8日 下焦中央右冷え *下焦右奥圧痛あり。 3月31日排卵後4月2日子宮内膜の厚さが足りなかった為移植はせず。

【考察】今回は長年の生活様式(ストレスの多い仕事・長時間の椅子での座位など)や体質によって下焦が虚して、卵巣や子宮の機能低下しているものと推測される。虚しているために、寒や邪、ストレスの影響をうけやすいという悪循環に陥っていると考えた。また、右側は周りが全体的(腰殿部・大腰筋)に硬いことや左側は季肋部・腹直筋が硬いことも気血がめぐらない原因となる。採卵後全身の筋緊張が高まることから女子胞にも影響を与えていると思われる。
今回女子胞の毒は漢方薬により排出されていると考え、今までは考慮していなかった。しかし、子宮筋腫がありいつも冷えている部位と関連しているようである。
治療は始めは下腹部を中心に施術。効果が感じられなかったため、他部位(左季肋部・季肋下や腹直筋や腰仙骨部)や月経周期を意識して行った。はじめより下腹部の温まりを実感できるようになった。しかし、工夫が足りず妊娠に至っていない。その原因とし下焦の虚、血毒や月経不順への考慮が足りなかったものと考える。さらに、局所的な冷えにとらわれ全体がみえていなかった。また、部品としての臓器にとらわれ気の流れを意識できていなかった。
全身的に上焦や四肢を使い、下焦の状態を改善すること、下焦の虚や月経不順の原因になりうる要素に対する生活指導や自宅施灸などを行う必要がある。
 

4・実技稽古
今月は中伝同士、初伝同士での稽古です。

 

 

 

5・連絡事項


・合宿の告知がありました。
(http://blog.iyashinomichikyokai.com/)
是非、是非、ご参加ください!

 

(文責:中川)

| ◇東京月例会 | 13:02 | - | -
5月 東京月例会

新緑がまぶしく 鳥たちのさえずりやこどもたちの賑やかな声がきこえるなか 東京月例会が 5月20日(日)根津 七倉会館に於いて おこなわれました。

 

1.静坐
身・息・心の調和のため 20分ほど 静かにすわりました。

 

2.講話
堀雅観先生「境涯といやし 秘教から学んだいやしの本質」

秘教について本格的にお話をされるのは初めてということで 堀せんせい御自身 新しい試みにわくわくドキドキ の心境のなか お話しいただきました。

3月月例会講話・・・関西の村田せんせいの「禅」のお話
4月月例会講話・・・朽名せんせいの「境涯や人間性」に深く関わるお話

「今月の私の話しもそういうテーマで、学術道でいったら道に関する講話が3ヶ月連続に。意図せずしてこういう巡り合わせになりましたが、どの道から行っても、同じところにたどり着くものだと思っています。禅を通じてそこに行く方もいらっしゃるでしょうし、それとは違った道で同じところに行く方も。そこは正解がないものかなと思っています。私なりの探求の仕方です。」

・鍼道発秘余論
鍼道発秘の最後に書かれている、葦原検校の鍼をする上での心持ちに関する奥義といっても過言ではない、3つの和歌をご紹介いただきました。

 仏にも 神にも人は成るものを など徒に持つ 心なるらむ

 迷いにし 心一つの開くれば 知恵も情も 有明けの月

 為せば成る 為さねば成らず 成る物を 成らぬは己が 為さぬなりけり

観風せんせいの解説のなかでは、この和歌のこころは道を歩んで行くなかで我々ひとりひとりが見つけ出すもの、として宿題となっているということです。
堀せんせいが秘教について実体験を伴った学びをすすめて行くと、葦原検校が言っていた様なこのうたの意味するところと一致してくるような気がし、御自身なりの答えということで、そこをまとめて、ダイジェストでお伝えくださいました。

堀せんせいが秘教を学ぶことになった経緯

堀せんせいが鍼灸師になられた初期は、西洋医学的な勉強一辺倒をされていたそうです。

2000年 鍼灸師になる
2009年 『バイブレーショナル・メディスン』に出会う
2010年 いやしの道入門、秘教について学び始める

『バイブレーショナル・メディスン』・・・目に見えるもの以外に、目を向ける大きなきっかけとなった本
リチャード・ガーバーというアメリカ人のドクターが書いた本で、解剖学的からだとエネルギーとしてのからだが重なって人間は存在しているというお話を、この本で初めて知ることとなったそうです。
東洋医学で言っていることは全部本当なんだ、と この本を読んで納得することができ、それから東洋医学を勉強しようと、いやしの道に入られたそうです。
いやしの道の勉強と平行して、『バイブレーショナル・メディスン』の中にあった「秘教」というワード、(この本の元になったのが『秘教』という本)これを読み解いていくと鍵があるのでは、と 秘教について学びはじめ、学びを深めるなかで、秘教の実践的な体現者であるサイ・マーという方(女性のインドの聖人、サイ・ババの弟子)との出会いがあり、秘教というものを実体験を持って学ぶことができたということです。

そして、秘教の教えについてのお話に入っていきます。

・全てはエネルギー
この宇宙に存在する、全ての物質・全ての現象はエネルギーである、ということを解説していただきました。

大きく分けて二つのエネルギー、波動の高いエネルギー(愛と愛から派生したもの)と、波動の低いエネルギー(恐れと恐れから派生したもの)があり、全ての物質はエネルギーが凝縮してあるものであり、起こっている全ての現象はエネルギーの交流の結果であるということです。

・人間は多次元的存在
人間とはどういう存在か ということを解説していただきました。

この宇宙に存在する全てはエネルギーであり、神であり、愛であり、すべて一体であるので、それ以外のものがなく、必然的に人間というのも本質的には神であり、神という一体の大きな存在があるとして、そのひとかけら、ぽんと外れた小さな塊が「魂」、そしてその魂が人格とからだを備えて地球に降り立った存在であるということです。

複数のエネルギーのからだが重なって人間というものが存在しており、肉体の周りには、内側から順に、エーテル体、感情体、メンタル体、コーザル体、スピリチュアル体、という様に、気のエネルギーのからだが存在するそうです。
*それぞれのもつ機能
肉体:我々が通常知っている解剖学的なからだ。
エーテル体:肉体の鋳型。中に肉体の設計図の様なものが全部含まれていて、エーテル体がきちんと機能すれば肉体がきちんと維持される。
感情体:感情が貯蔵されている。
メンタル体:思い浮かべたことや考えたことがある。
コーザル体:カルマを貯蔵している。(カルマ:前生や今生で自分が行ったこと)
スピリチュアル体:生まれる前の魂の状態のときに、こんど地球に生まれたらやろうと決めている契約を貯蔵している。

・法則と規定
宇宙の法則と地球のルールについて 解説していただきました。
1)引き寄せの法則(宇宙全体の法則)、2)カルマの法則(宇宙全体の法則)、3)自由意思(地球限定の規定)

宇宙の法則には、引き寄せの法則(共鳴する波動のエネルギーを引き寄せる法則)と、カルマの法則(ある行動を取ったら同じ行動が自分に戻ってくるという法則)があるそうです。
自分が覚えていないカルマは沢山あり、地球で取った行動に対するカルマは、地球にいる間にしか解消できないというルールがあるため、人間は何回も地球に転生してきているといわれているそうです。
我々は普段、自由意思にもとづいて行動しており、これは人間に与えられた特権で、どんな聖人や神様であってもひとりひとりの人間の自由意思というのを侵害することは絶対にやらないということになっているそうです。

・人間の営み
こういった法則に基づいた地球での人間の生活というのはどういうものなのか ということを解説していただきました。
1)誰もが創造主(引き寄せの法則により、本人の意識が現実を創造している)、2)認識できずに創造してしまう人生(自分で認識している顕在意識と、意識全体の9割ほどを占めている自分が認識していない潜在意識)、3)病気の原因(波動の低い思考と感情(内因)・物質的要因(外因・不内外因)・カルマ・魂の課題)

望む人生を創造するには、潜在意識にどのようなエネルギーがあるのかを認識していくことが重要で、瞑想や座禅など、行を積んでいくと、そういう潜在意識がみえてくるのではないか、ということです。
そして、病気はどういう風に起こるのか。
一番大きな要因が、波動の低い思考と感情であり、現代人の病気の原因の大部分が感情体に起因すると秘教のなかでは言われてるそうです。
潜在意識に怒りや不安など、波動の低いエネルギーがあり、それに基づくエネルギーが引き寄せられ、更にそういった感情が度々増大、すると、感情体やメンタル体がひび割れたり欠損ができ、外側のエネルギー体から内側の方にエネルギーが順番に下りてきて、最終的にエーテル体や肉体の方にもだんだん障害が出始めてくる、というメカニズムになっているということです。
傷寒論的に考えると、エネルギー的なからだに滞りが生じ、気が滞ったところに邪や毒が生じる。見えないからだから、見えるからだに、病気がだんだん具現化していく、そういう構造があるのではないか、と仰っていました。
物質的要因は、一般的な病気の原因、けがやオーバーユース、生活の中の疲労によるもの、化学物質や放射能の影響、食品添加物や農薬を摂取することによるもの、食べ過ぎ、睡眠不足、房事過多、天候の影響など、いろいろ。ただ、これらも、自分が引き寄せない限りは影響を受けないというのが、法則の側の立場での考え方ということです。

・多次元的ないやし
これまで話した人間観に基づいていくと、「いやし」というものがどういう形になっていくのか、ということを解説していただきました。
からだの状態を見極め、問題が大きい要素にそれぞれに合ったアプローチしていくことが大事ではないか、と仰っていました。
*アプローチの主な仕方
肉体:西洋医学
エーテル体:万病一風的治療(疾医の鍼)。寒熱虚実、邪毒に対してそれを目標に鍼をやっていく。
感情体:感情との関わり方の提案(見えざる一鍼)
メンタル体:考え方の提案(見えざる一鍼)

*会場から*
・秘教では、輪廻転生が大前提としてあるが、他の宗教では転生しないという考え方もある。
ターミナルケア等に関わっていくときに出てくる問題なので、自分がどう思うのか、各自それぞれ考えることが大事。
・病気や怪我で、肉体だけに問題がある場合はあるか?
→あまりないと思うが、ごくわずかな割合で肉体が原因の病気等がある、というのが秘境の中ではある。
ただ、引き寄せの法則を前提にすると、自動車の追突事故でうしろからぶつけられた場合でも、純粋な被害者ということが無くなる。自分で転ぶにしても、なにかそうなるエネルギー的な下地があってそういう現象が起こるのではないか。
・いまのはなしを受けて、本人は全く悪いと思っていないが追突事故をされた患者の方、被害者意識が強く、その後の人生も全てあそこを起点に始まった、と、そこから屈折していってしまうということがあったときに、その本人に自分が引き寄せたいうことを納得してもらうのはなかなか難しい作業だと思うが、その辺りはどう考えているか?
→本当に難しいと思う。人に言われて納得できるようなことでもない気がする。だから、今この人に言っても到底受け入れられないだろうという人には言わない。鍼禅あれこれの中で、「啐啄同時(そったくどうじ)」、という言葉があったが、たまごがあって内側からこんこんと破るのと、親鳥がこんこんというのが同時でないと、そこは難しいと思う。
・昔きいた話しだが、歩いていたら、ゴルフボールか何かが飛んできて頭にぶつかった。いてっ、といった時に、どう判断するか。そのときに、この野郎、といって怒るのか、これは相殺だったのかな、と考えるのか。他にも、エレベータに乗ろうとしたら向こうからぶつかってきた。このやろう、といって怒り言葉で発し殴るのか、そのときにどうするのかが一番大事だということ。
その本では、ぶつかった時に、いてっあたりだ、と、そのときに笑って、消えたと。現象が起きたときに、ちきしょうって、なるか、その人がどう受け止めていくのかが大事だ。

話は尽きず、資料の解説は途中となりましたが、

引き寄せの法則という、意識が現象をつくっていく法則の中で、鍼を持って施術をする、癒やしをする、肉体の修繕だけではない、いやしの道が目指しているいやしということをやろうとしたときに、その鍼というものはどういうものなのかを考えること。
治療者がどのような意識で治療の場にいるか、患者さんと共にあるかということが、そこから先に起こっていくことに、大きな影響を及ぼすことになること。
良い現実を創造していくためには、本日お話しした要素が大事なのではないか、と、秘境文献に基づいてはいるが自分自身が実感していることだ、と結ばれました。

再び、鍼道発秘余論、
ここの観風せんせいの解説が、全てを物語っていると思うと、最後にお話くださいました。

「この図(鍼道発秘余論に掲載されている図)の大いなるもののところは、秘境の中では神となっていますが、仏であったり、アッラーと言ってもいいし、何が入ってもいい。
自分の、医者の波動というのが、一旦高い波動のところまで高まるとその高い波動の世界では、もう、我も神も仏もみっつ差別無し、というのが最初の詩のなかの解説にありましたけれど、そういうところに行くと思うんですね。そうすると患者さんの人間性の根っこの部分というのが共鳴されるので、そこら辺が朽名せんせいの仰る、からだがあってお腹同士のつながりのような、そういったところとも通じるのではないかなと私は受け止めている。そんなところが、現時点で私が考えて居るいやしの本質についてのお話です。
また機会があればこのお話をするかもしれないし、引き続き勉強したいと思っています。」

 

3.臨床検討会
福嶋青観先生「ドクターショッピングする保護者の説得」

母親のこどもへのケアが良い方向に作用していない可能性がある 小児のアトピーの症例を 発表していただきました。
保護者への見えざる一鍼について 検討をおこないました。

【はじめに】早く治してあげたい親心なのだろうが、時として周りを振り回すばかりで、必ずしも患児の為になっていないのではないかと危惧される保護者が、アトピーの患児の保護者に多い。現在進行形の症例を元に、保護者への見えざる一鍼を検討したい。
【患者概要】一才四ヶ月、男児。普通分娩。体つき・体重:やや小さめ。(抱っこひもで来院。背骨の形状がまだC型。八ヶ月くらいに見える。)。栄養:人工乳及び離乳食三回。母:花粉症。父:アレルギー無し。母育児休暇中。四月から保育園(我が子に目が行き届かないのが不安な為、我が子への対応希望書を提出し、2時間かけて園長と担任に説明した。)
【主訴】アトピー性皮膚炎。痒がって寝れない。
【現病歴】生後六ヶ月、離乳食を始めた位から、症状が出始めた。ステロイドを塗ったらすぐ綺麗になったが、薬が怖いので止めたら症状がひどくなり、別なドクターへ。そこでもステロイドを出された為、食事療法へ(静岡県のドクター)。人工乳は一切やめて「味噌」を中心とした和食。しかし、改善しないので、別な医師のアレルギーテストを受けたら、味噌が遅延アレルギーと出る。新たな食事療法(長野県のドクター)へ。離乳食をやめ、人工乳を主食とする。現在も人工乳が主食で、離乳食は、肉を中心としてたんぱく質を多く取る。症状は小康状態で、一才過ぎて、再び、別なドクターに行くと、さほど症状はひどくないからと「様子を見ましょう。」と言われるだけで、何も薬が出なかった。一番症状がひどい時(九か月味噌療法の頃)は、頬・首・肘・手首にかさぶたと口の周りのただれ。ネットで京都の鍼灸師が我が子に毎日小児はりをしたら良くなった記事を見つけ、連絡を取り、その鍼灸院から当院に紹介された。薬・保湿剤等一切使用していない。夜中痒がって二、三度起きる。その際、布団をはいでいるので、布団をかけなおしている。中々寝付けず、両親とも寝不足が続いている。
【他に気になる症状】ウンチが出ていると肌は綺麗になるが、二、三日出ないと、悪化。硬水を飲ませるとうんちが出やすい(というより下痢っぽい))
【初診所見】長いメールが三通。京都の鍼灸師さんの賛美・予防接種に関する質問・当院の場所予約時間など。患児は玄関先から怖がって泣いているが、声に力が無い。症状は拍子抜けするくらい軽い。右手首のしわに赤味、左前腕陽経に輪染みのような円形のかさぶた。口の周りの赤味。目の下にクマ。ヨダレが出るからと数分ごとにウエットティッシュで口を拭う。通常、子どもは大人より服一枚少ないのが一般的だが、異常に着ぶくれている。
腹診:腹部全体的に力が無く、手がずぶっと入る感じ。左鼠経部は硬い。皮膚は、新生児のごとく、薄くて柔らかい。ほぼ全身の皮膚が弛緩して、下の筋肉層と遊離し、タルタルな状態。耳周りにスジ張り数本。
【診断】(最初の診断)虚弱な素因に、日常の刺激の多さ、睡眠不足で、患児はかなり疲労状態にあり、受け入れられる刺激量はわずか。アトピーに関しては、最初からミルクで初乳を飲ませていないことから、胎毒の排出がされておらず、かつ、離乳食の進行状況が患児にとってタイミングが早すぎた、又、便がうまく輩出できず、便毒が創成されたと思われる。
【治療方針】上に上っている邪気を瀉し、気を巡らせてお腹の力をあげる。
【治療及び経過】
・第1診(平成30年3月5日)
母と二人で来院。「こんなに泣いていやがるんじゃ余りに可哀そうなので、通うの止めた方が良いですよね?」「小さな子どもは泣くことで意思表示しています。又、泣くと腹筋が鍛えられ、肺活量も増えます。それに何回か来れば、慣れます。」大師流小児はりにて、側頭部、特に耳周りのスジ張りを切るようにさする。頭部の施術時は泣き声が止む。他は、指頭で触れるとのけぞって嫌がる。「腹部の力無く皮膚は超過敏状態で、今日はこれ以上、身体が刺激を受け止められませんので終了します。」と説明。当面、週三回通ってもらうこととする。空振りも入れつつ、施術時間三分位。施術後、体温が上がった為か、首を掻こうとするが、その度、母が子どもの手を勢いよく振り払う。水を飲ませると落ち着いて掻かなくなる。

・第2診(3月7日)
前回施術後、ウンチがたっぷり出て、良く寝て、翌日は肌の調子が良かったが、今朝はまだ、ウンチが出て無い。施術部位は頭部のみ。見た目の症状は変わらない。玄関先でぐずるが、母が歌を歌うと大人しくなる。
・第4診(3月12日)
長野の食事療法へ行って帰ってきて又、ウンチが出ず、かゆがって夜泣きがひどく、家族三人ほぼ寝ていない。「三ヵ月で治してくれるなら、仕事を休んで毎日通います。京都の鍼灸師の先生も、毎日じゃないと効果無いと言ってたし。」「電車で一時間かけて来るのは大変ですし、余り無理せず、週三回ペースで続けていきましょう。気候やイベントなどさまざまな要因で一時的に悪くなることもありますが、少しづつ良い方向に向かうと思いますよ。」
・第5診(3月14日)
百会を中心とした頭頂部、側頭部、左後谿、右足臨泣に小児はり。背中はまだ弛緩している。腹部はほんの少しながら力が出てきたように思える。施術が終わるとベッドにつかまり立ちで歩き回る。

・第6診(3月17日)
母は、「父一人で通うのは絶対無理」と言っていたが、問題なく来院。玄関で泣く。普段はこもったような泣き声だが、この日一瞬、声が通る。お腹に力がついてきている。「妻は行動力と体力があるので、行き過ぎる所があります。それを止めるのは僕の役割かもしれません。」母と来る時は、アンテナを立てている感じだが、父と来るとリラックスしている。
・第9診(3月24日)
背筋がピンと伸び、足つきが変わっていて、背が伸びたように感じ、父も同様に感じているという。
・第11診(3月26日)
前夜、全然寝ず、夜泣きがひどかった。腹部がガスでパンパンに膨れている。鍼前と鍼後にお腹を触ってもらいガスが下がったのを確認してもらう。しばらくして、臭いオナラが出た。(ガスの原因は、現在の食事療法の玉ねぎスープで、夜飲ませるのを辞めたら、ガスが無くなったと母談)
・第15診(4月4日)
慣らし保育一時間中、泣きっぱなしだった。左腕の輪染み様の輪のふちが消えてきて三日月状になっているのを母と確認。
・第16診(4月7日)
前日、風邪を引き、鼻水・咳・発熱(37度5分)で保育園を休んだが、治療を受けても良いかとメール。「再び、発熱が無ければ来て下さい。」
胸に熱。普段は触れるとのけぞるが、右膏肓の施術にはうっとり。帰り、靴下を履くのを嫌がり、一度脱いでしまう。

・第17診(4月9日)
来るなり、自分から手をつなぎに来る。前回後ぐっすり寝て、翌日、肌がピカピカだった。口の赤味殆ど無し。右手のしわ部の赤味もほぼ無し。左手の三日月は更に薄く小さくなった。帰り、母の手を振り切って、治療院に戻ってくる。食事の様子が前はむさぼるように食べたが今はスマート(腸の吸収が悪いと本能で飢餓感を感じ、年中なんでも食べようとしたが、今は好みを見せたり、食べ方が綺麗になっている。

・第18診(4月11日)
保育時間が午後二時までに延長。「うちの子だけ泣いている。」若干、赤味が増していて、「痒みがひどい。」「小児はりの効果、まだ、全くありませんね。」
(次の日、メールでウンチがたっぷり出て、肌がつるつるの由。)

※その後、4月末までは治療継続、GWも予約が入っていたが、5月に入り患児がRSウィルスに罹患し来られず、「食事療法で様子をみる」という主旨のメールが届いた後、治療には来ていないということ。
【考察】薬を辞めた直後など、ひどく症状が出ているタイミングで来院されたケースほど、初期の症状改善が目に見えやすいが、本症例の患児の症状は薬・保湿剤無しでわずかな症状を残すのみであり、それもちょっとしたストレスや暑さなどで体温が上昇するとかゆみが増す為、症状は一進一退で少しづつの改善となった。経済力・行動力あり、知識も豊富、が、むしろ、患児や家族を疲弊させ、結果的に、より患児を過敏にさせていると思われる。最初の診断では、虚弱な体質と思っていたが、母親からの過剰な刺激による疲労により胃腸の機能低下で便秘が原因と考えるならば、敏感ではあるものの決して、虚弱ではないのではないかという気さえしている。

 

*会場から(一部)*
・カウンセリングの話しで、「自分がみる患者の方のどこか好きになるところが見つけられなければみるな。他の人に紹介した方がお互い幸せだから」ということがある。合う合わないというのがあって、合わないひととうまくやっていくというのも技術のひとつだが、自分が苦しくなるかんじであったら、あまり抱え込まず他の人を紹介するというのも手。
・治療院の環境(緑が沢山ある、昆虫がたくさんいる、等、こどもが好きな環境)も見えざる一鍼として機能する。
・笑うことをたくさんするように(母親に助言)すると、気が発散されてこどものアトピーに一途になりすぎずいいのではないか。
・母親にとってはこどものアトピーはノイローゼになってしまうくらいのできごと。
・否定せず頑張りすぎている母親には60点くらいでいいというようなことが伝わるように言葉の端に付け足す。
・母親をもっと知ることをしていくといいのではないか。
・治療者の考えを、すぐに踏み込んで患者の方(この場合は母親)に伝えるか、信頼関係を築くことができるまで待つか。難しい課題である。
・(母親は)もうすこし年を重ねて、自分の頭では無くからだの声をきくことができるようになるきっかけがあれば、変わっていくのではないか。

 

4.実技稽古
指導者・中伝者・初伝者の組に分かれ 実技の稽古をおこないました。

 

来月は 6月17日(日)14:00〜 開催されます。

 

 

(文責 小池)

| ◇東京月例会 | 23:00 | - | -
4月 東京月例会

1.静坐
坐禅、正座で心を整えます。三輪先生から、「何があっても動じてないように」とのお言葉。

 

2.講話  朽名 宗観先生
「ことばが『養生』する 〜アメリカ先住民の口承詩を例にして〜」

 

 

「養生」とは「生を養う」「いのちを養う」ということです。
なので、「ことばが『養生』する」というのは、ことばがいのちを養うということ。
ことばがいのちを養うような力を与えていくというのは、どういうことなのか。
この時間では、それを、アメリカ先住民の口承詩を見ながら考えていきます。

「講話」というのは、鍼灸治療の技術的なことだけではなく「いやしとは何か」「いやしというのはどういうものなのか」を考えていくための時間でもあります。

 

そもそも日本の古方漢方家というのは半分以上が儒学者でした。吉益東洞も、山脇東洋もそうです。
儒学の基本科目は詩、書、礼、楽の4つ。
詩と音楽が必須だというのは意外ではありませんか?

詩で学ぶのは、中国の最も古い漢詩を集めた『詩経』で、日本で言うと『万葉集』にあたるものです。
そして、『詩経』を伝承していったのは瞽師(こし)という盲目の楽師でした。つまり、口承であったのです。
古代のリズムに乗って、耳から入ってくることばとして、学んでいたのです。

一方、北アメリカ先住民は、19世紀にアメリカ合衆国によって奪われ支配されるまで、一万五千年以上にわたって無文字文化を継承してきました。彼らの様々な知恵を伝えていくために数々の口承詩がありました。
それを見ていくことで、『詩経』を伝承してきた様が感じられるのではないか…。
ということで、色々な例を挙げていただきました。

 

●音声言語由来の心と文字言語由来の心
精神科医・神田橋條治先生は、文字言語を持たない人には心身症はいない、との説を唱えられているそうです。
音声言語由来の心(心1)は、生理的な世界と一致した精神機能であり、
文字言語由来の心(心2)は生理的な世界と切り離されて、抽象性が高くなり、頭との親和性が高いそうです。
文字言語由来の心(心2)が音声言語由来の心(心1)にプレッシャーをかけることが、心身症を招く原因となるというのです。
現代社会で生きていくためには、もちろん文字言語由来の心(心2)も重要ですが、音声言語由来の心(心1)を充実させていくことで、バランスをとっていくのが良いのではないか。とのことです。

 

●今回紹介してくださった色々な例
・「ヴィジョン・クエスト」の実際〜スー族のメディスンマン レイム・ディアーの場合〜
・北アメリカ先住民のことば 若い戦いの神の歌(ナバホ族)
・子どもの訓練(ルーサー・スタンディング・ベア)(ラコタ族)
・『平成狸合戦ぽんぽこ』

『平成狸合戦ぽんぽこ』にそんな深い意味があるとは…。是非、観てみようと思いました!

 

 

3・症例検討会 井上 泰観先生
「十月になると起こる腰痛」
今月は、関西支部の井上先生がいらしてくださいました。

 


【はじめに】これは十月になると腰痛を起こす患者で、自分では意図しない治り方をした症例となる。
【患者】二十一歳男性。身長一七〇センチ程。やせ型。鉄工所勤務。
【初診】平成二十九年十月五日。
【主訴】腰の痛み。
【現病歴】二週間ほど前から腰の痛みが起こった。腰痛になる様なこころあたりはなく、風邪を引いた覚えもない。痛みは最初に比べて強くなっている。痛みは左右両方だが、左の方がより痛い。昨年、初めてこの時期に今回のような腰の痛みが起こったが、その時は整体にいって痛みが無くなった。それで今回もいってみたものの改善が見られず鍼灸治療を受けてみたいと来院。病院で検査は受けておりMRIでは異常なく原因は不明と診断された。痛みのせいで仕事を二週間休んでいる。
【既往歴】特になし。
【増悪因子】歩行時に痛み、治療院でベッドに向かう時もゆっくりそろそろと歩いている。特に階段はつらい。また動かなくても同じ姿勢で二十分ほど横になったり座ったりしているだけで痛くなる。前屈、後屈など腰の運動はほとんどできない。

【診察所見】
〈問診〉食欲あり。二便異常なし。睡眠中に寝返り時の腰の痛みで、二回ほど目が覚める。足の冷えあり。
〈脈状〉実、数。尺はやや虚。大きな左右差は無し。
〈舌状〉舌尖紅。舌下静脈怒張。舌を出すときにふるえており、小さくペロッと舌の先のほうしか出せない。
〈腹状〉腹直筋の拘攣あり。また胸から臍あたり(主に右)にかけて熱くザワザワした感じがする。心下部はやや硬いが指は入る。下焦はやや虚。押すとくすぐったがる。
〈背候診〉肩から肩甲間部にかけては皮膚がザラザラして赤みを帯びたまだら模様っぽく細絡が多い。T10からL3あたりにかけて左右緊張していて熱感がある。痛みの最も強い左の腎兪あたりは熱くビリビリとしている。

【診断】主訴の腰の状態以外で気になったのは胸部から腹部にかけての熱感と舌診時の舌の出方やふるえ。腰の状態の悪さに比べて胸部は熱っぽいもののそこまでビリビリしているわけではないが、この胸の邪熱が腰に波及して痛みを起こしているのかもしれない。舌のふるえは初めての鍼灸治療で緊張している可能性も考えた。これらをふまえ最初の診断では病のメカニズムの第五段階とした。

【治療方針】まずは腰部の邪熱を除き、筋の緊張をゆるめて循環を促していく。これは腹部からもアプローチしていく。それとともに胸から腹にかけての邪を散じていく。

【治療経過】治療は寸六、三番のステンレス鍼で行う。鍼灸治療は初めてという事なので、様子をみながら軽めの刺激で始めていく。まずは仰臥位で内関から気を手に引く。次に散鍼で胸腹の邪を散じる。次に腹部の圧痛のあるスジバリを二,三ミリ程度の深さで、撚鍼、雀啄してゆるめていく。このとき左天枢辺りでビリッと邪気を感じる。
 次に伏臥位にて、一番痛みの強い左腎兪辺りを中心にして腰部全体に散鍼、切皮を繰り返し邪熱を瀉していく。この段階で腰全体にあった邪はほとんど無くなるが、左腎兪辺だけに限局して残っている(十→六)。こののち足に気を引き温めるために湧泉に半米粒大の透熱灸を三壮する。
 ここで腰を動かしてもらうと、左に痛みはあるものの可動域は拡がっており(前屈三十度→六十度、後屈は変化なし)腰が軽くなったと言う。立位で右後谿を使って運動鍼をして終了。
 治療後に一緒に来ていた父親と話していると、「精神的な問題ではないか」という。舌の出し方をみてもその可能性はあるなあ、と思いつつも時間もなくそれ以上は話さなかった。

 

・第二診(十月十日)治療効果が続かなかったのか、期待ほどではなかったのかわからないが、二日ほど前に整体に再び行き、逆に腰の状態が悪化してしまったという。痛みの範囲や強さはほぼ初診時に戻っている。治療は基本的に前回と同じだが、左腰には前回よりもやや深めに刺して邪を引きぬくようにしていく。また邪を去る目的で左腰に刺絡を行う。治療後は左腎兪辺を除けば楽だという。腰の可動域も前回同様拡がり、歩行も五割くらいは良くなっているように見える。
治療後に再び父親と話すとストレスの原因は秋祭りの年少者への太鼓の指導役になったからではないかと言っている。これは昨年から役についているらしい。患者の住んでいる地域の秋祭りは仕事を休んで参加するほど盛んで、指導役は責任重大だそうである。

 

・第六診(十月二十四日)二日前は秋祭り当日で腰の調子は良く、当然神輿は担げないが無事に参加はできたという。しかし翌日から再び腰の痛みが悪化。

 

・第七診(十月三十日)腰は痛いが夜がよく眠れるようになったという。また会社にも出勤するようになった。左腰の邪はあいかわらず強い。

 

・第八診(十一月十一日)会社で紹介された接骨院に行ってから腰の状態が悪化し、再び夜に痛みで目が覚めるようになった。左天枢に圧痛あり。治療は同じく胸腹と腰部を中心に行う。またこの時から側臥位にて左腰へ十分ほど置鍼を加える。

 

・第九診(十一月十五日)少し歩くのが楽になってきた。置鍼中はよく眠っている。前屈以外の腰の動きは改善している。

 

・第十一診(十一月二十八日)腰の痛みがかなり改善している。前回もいつもと同じような治療をしたのだが痛みは左腰の一部分のみで、初診の状態からすると三割程度になっている感じがする。会社での残業もするようになった。
 治療後に父親に何か変わったことがあったのかと聞くと、心療内科でもらった抗うつ剤を二週間ほど前から服用していると聞かされる。昨年の腰痛時もその薬を飲みはじめて良くなってきたそうだ。心療内科には日頃から通っているわけではないという。最初の問診時には整体に行って治ったと言っていたのだが。

 

・第十二診(十二月十二日)調子はよく腰の痛みはほとんどない。最初の痛みに比べると一割程度か。やや遠方から来られており治療のために仕事を早退しなくてはいけないことと、父親による送迎が大変なこともあり、ここで治療は終了となる。

 

【考察】第十一診で腰痛が劇的に良くなっていた。もちろんそれまでの鍼灸治療の効果もあったとは思うのだが、腰の症状が良くなったタイミングと抗うつ剤を服用しだしたタイミングが同じだったのは精神面の状態が腰に影響していたのだろう。最初は病のメカニズムの第五段階で胸の毒が腰部に影響を及ぼしたのかと考えた。しかし胸に触れた時の邪は毒性化増大しているというような特別な感じはせず散鍼でいつもすっきりしていた。だとすれば第五段階ではなく所生病的是動病だったのか。祭りの指導役というストレスを受けた時に胸にあった毒が動き、そこから発生した邪が腰痛を起こしたとも考えられる。
 私自身の課題としては、あまり症状に変化が無く壁にぶつかっている気持ちになってしまったことがある。その焦りは患者に伝わっていただろうし、それが他の治療にも手を出させた一因でもあるのだろう。あとは胸の毒による所生的是動病として肩甲間部の触診をもっと細かく見ておけば、なにか治療のポイントがあったかもしれない。肩背部への刺絡もしておけばよかったかと今更ながら思う。

 

【質疑応答】
・(質)腰痛ということなので、一般的な診断、例えば、棘突起間、脊際、一行線、二行線の圧痛や、腸骨稜の際、仙腸関節の圧痛などはどうでしたか?
→(回)SLRなどは実施したが、病因でMRI検査をして異常がなかったということで、そこまで詳しくみていません。
→(質)圧痛点の分布とか、腰痛の原因が筋肉由来か関節由来か、障害部位が具体的にどこなのか…。痛いところが痛みの元なのか、原因は他にあるのかは痛いところを圧せば分かると思うのですが。
→(回)圧したとは思うのですが、特筆すべきことはなかったと思います。
→(質)ということは、痛い箇所が原因ではなかったということではないですか?
→(回)痛い箇所は実している感じが強かったので、あまり圧せる感じではなく、そんなに圧せていません。ただ、触った感じ、そこが一番邪が多いというか強かったです。
→(質)悪いところに鍼すれば良いわけですが、「どこが悪いところなのか」というのをはっきりさせないと、「悪いところに鍼する」ということが難しいと思います。

 

・(質)お肉とかお酒を取らないということですが、胃腸の弱いようなところもありますか?
→(回)あると思います。

 

・(質)胃腸の弱さによる症状は何かありましたか?
→(回)特に症状があるわけではないが、強くはなさそう、という感じです。

 

・(質)お祭りには参加できたとのことですが、会社は依然として休んでいたのですか?
→(回)はい。休んでました。
→(質)太鼓を打つこともできたのですか?
→(回)ずっと打つわけではなく、やっている人達を見回るような感じです。
→(質)この時の痛みの度合いは、出られる程度に治まっていたということですか?
→(回)一日中動き回っていたそうです。

 

・(質)患者のお父さんから精神的な問題かもしれないということを聞いてから、何か変えましたか?
→(回)こちらからは話を投げかけてみて、話したかったら話してもらえるようには心掛けていた。実際の治療においては同じです。邪を見て、それを抜いていくという。

 

・(質)初診時に、ゆっくりそろそろ歩くという様子がありますが、会社に行けるようになった時もその状態だったのですか?
→(回)書いていないのですが、3診目には普通に歩けるようになっていました。
→(質)それは是非書いて欲しい情報です。明確な改善の情報なので。
→(回)すみません。

 

・(質)抗うつ剤はいつ飲み始めたのですか?
→(回)明確にいつとは聞いていないです。
→(質)大体9診の頃ですかね?

 

・(質)心療内科に行くということは、よっぽどのことだと思うのですが、不眠があったり他に何かあったのですか?
→(回)特にある感じはないです。

 

・(質)左腰の邪は、症状が良くなっても変わらなかったのですか?
→(回)左腰の邪だけは、ずっとこんこんと沸き出してくるように、ずっと変わらずありました。
→(質)かなり良くなった11診の時もですか?
→(回)11診の時は、あるけれどもかなりましになっていました。
→(質)左腰の邪が腰痛のポイントだということは間違いないという感じですか?
→(回)そう思いました。

 

・(質)ガスの感じとかはどうでしたか?奥の方触るのかわいそうだな、という感じで触らなかったかもしれないのですが、大棗のすじばりとかはありましたか?
→(回)ガスっぽさは感じませんでした。特に水毒で冷たいことろも感じませんでした。

 

・(質)初診時に「左天枢辺りでビリッと邪気を感じる。」とあり、又、8診に「左天枢に圧痛あり。」とある。これがポイントなんじゃないかなと思うのです。左腰の邪気をとってもとっても沸き出してくるというのは、奥の方からどんどん出ていたのではないかと思うのですが、いかがでしょうか?
→(回)初診でビリッと来たので、「大分抜けたかな」と思ったのですが、その後の経過を見ると抜けてなかったのだと思います。そこに毒があって、そこから邪が出てたのかなと今は思います。

 

・(質)診断のところで胸の邪熱が波及して腰に痛みを起こしたと書かれています。また、抗うつ剤が効くということを考えても胸の邪熱が関係していたと考えられるのですが、胸の邪熱の変化についてはどうですか?
→(回)最初の頃は熱い感じで、2、3回治療していくうちにグッと減りました。

 

などなど、ここに書ききれないほど活発な質疑応答がありました。
井上先生、ありがとうございました。


4・実技稽古
今月は中伝同士、初伝同士での稽古です。

 


5・連絡事項
・指導者になられた伊藤 翠観(すいかん)先生に認定証が授与されました。

 

おめでとうございます!

 

 

(文責:中川)

| ◇東京月例会 | 16:43 | - | -
3月東京月例会

3月18日 根津七倉会館にて東京月例会が行われました。

 

静坐

静かに集中して坐ります。

 

 

講話    村田 底観 先生

 

本日は関西支部より支部長の村田底観先生に御越し頂き、厳冬期

の坐禅体験についてお話頂きました。

 

 

村田先生は筑波山麓にある、八郷研修所において約十年程、横田

観風先生の指導を受けておられます。

筆者も四年程村田先生と一緒に指導を受けさせて頂いております。

(先生にお茶をたてて頂く、八郷接心にて。)

 

大浦先生、朽名先生、昔の先輩達の頃は接心と言う一週間程坐禅に

打ち込む修行を御寺等でされていましたが、村田先生にはそういう

経験が無い。その事に負い目と言うか引け目と言うか、そんな事を

感じていたそうです。

そこである老師を頼って、滋賀県の山奥まで一週間の坐禅修行に赴

かれたそうです。

 

接心に向かわれる前に、奥様・お子様を奥様の御実家へ送られ、歓迎

され沢山御馳走を食べお酒も沢山飲まされ、尚且つ風邪を引きそんな

状態で参加されたそうです。

 

接心では室温が薪を焚いても5℃位にしかならない所で、長い時間坐り

続け咳が止まらなくなってしまったそうです。

 

そんな中、老師か言われたある言葉に感動し、涙が止まらなかったそう

です。

 

村田先生は長い坐禅を通して、御自分を見つめ直された訳ですが、これは

長く坐禅をする事が出来ない方でも日常生活において出来る事です。

自分を見つめ直して反省し、成長して行く事が良い治療者としての道では

ないでしょうか。

 

 

症例報告  市川 友里 先生

 

(はじめに)、この症例は今までのように完治しましたという症例では

ありません。現在も入退院を繰り返している状態です。

【初診】平成二九年一〇月二三日。

【患者】男性・七七歳・身長一七〇僉β僚展渕鍬圈元来食が細く

胃腸が弱く、痩せてねこ背。

【主訴】腹痛。

【現病歴】平成二九年一〇月二三日現在。

二九年六月七日排便時に力み、その後「下腹部が絞るように痛み」病院へ

行く。六月九日「貧血」の為、血液内科受診。更に六月一三日、別の病院

の血管外科へ回された。六月一六日入院し、胃、大腸、肺、心臓の検査を

した結果、病名の付くものは無かった。退院直前に病院のシャワーを使用

した時、急に腹痛を起こした。その時お腹の中でバリンと何かが落ちたよ

うな感じがし、以降一ヶ月位痛みは無し。その後起こった二回目の腹痛は

、一週間位で止まった。三回目は一〇月一〇日夕方から痛くなり、今も続

いている。その間、七月から月一度七日間入院をして抗癌剤を三クールし

た。明日から四クール目になるが、血球が少ない状態。本人から病名を言

おうとしないので、病院の検査結果の持参を依頼した。

【既往歴】

‐学低学年の時、右足小児麻痺の手術。∋綾渋紊念瀋掾腓砲覆蝓一ヶ

月入院をして食事療法で治癒。J神二〇年、大腸癌を内視鏡で取る。

腰痛を繰り返し、平成二五年に来院、その時は四回の治療で完治。ナ神

二八年四月一一日、左右の肩痛で来院、三回の治療で終了。

【初診時の総合所見】

・脈診・・・左右とも沈脈で尺脈弱。脈力が乱れており、右は少し沈めて寸

関を取れ、左は深く沈めて寸・関が取れた。

・舌診・・・舌体紅。中央全体に分厚い白苔、特に左右に片寄って厚い。

・腹診・・・顔、胸中熱感が強く心煩。季肋部脹満で呼吸浅い。心下痞鞕。

臓下垂し、痩せ細った腹筋が筋張ってなめし革様。下腹は虚寒。左下腹部

に便塊があり、下半身は冷え膝下は極端に冷たい。

・背診・・・右側が頸・肩・背中・腰まで凝り突っ張り、左右とも腰全体が黒

く硬い。

・患者の体質は少食で食べむらがあり、瘦せ型で虚弱。便秘と下痢、頻尿がある。

【診断】

上熱下寒。衰えた筋肉に十分な血液がいきわたらない病気になっていること

を伺がわせられ、少陰病状態と判断した。

【治療方針】

 頭部から胸部の熱を散らし、腹部の強い虚寒を和らげて痛みを取り除き、気

の上逆を治める。さらに、腹部及び背部の拘攣をゆるめ、下肢を温め、胃腸の

機能を賦活する。

【考察】

「骨髄異形成症候群」とは、骨髄の造血幹細胞が異常を生じ、十分な血球を作れ

なく、血液中の血球が減少してしまう病である。抗がん剤を使用して異形成の芽

球を除くため、七月から一二月まで月一回一週間入院して治療。持参された昨年

六月一六日から今年二月一九日まで八回の血液検査データーをグラフ化してみた。

鍼灸治療は一〇月二三日から一月一五日まで。経過として、白血球は減少から回

復に転じ、赤血球は回復中、血小板も回復中。特に一二月末に抗がん剤治療を止

めて全数値が上昇に転じた。継続的に鍼灸治療を続けたら白血球の増加が見込ま

れたかもしれない。下痢が止まらない為再入院した。メールにて様子をまめに連

絡してきている今回の患者さんも過去消化器が弱く、少食かつ偏食であった。

五年前に腰痛で来院した時、すでに硬いお腹で治療をしたが、あのまま鍼で賦活

させていたらこの病気には至らなかったかとも思う。今回、患者は焦りから家族

への相談もなく自己判断で無暗な治療を重ねてしまったため、私も振り回されて

しまった。衰弱して冷えが強く栄養状態も悪い患者なので、退院後は脾胃を中心

に身体全体を少しずつ丈夫にできるよう治療していきたい。

 

実技

自分の課題をクリアーする為に、指導者に点検して頂きますが普段の工夫が問わ

れます。学生の方々は国家試験が終わり疲れが溜まっていたにも関わらず、一所

懸命取り組んでおられました。

 

文責  森  勝

 

 

 

| ◇東京月例会 | 12:46 | - | -
2月東京月例会
2月18日 日曜日、月例会が行われました。






会場:千代田線根津駅近く、七倉神社境内の七倉会館です。

○静坐

いやしの道の月例会、静寂な空気漂う中、20分間の静坐から始まります。



○講話
「盗む・変化・統合」原田修観先生




昨年の合宿は、横田観風先生が参加して下さいました。
関西支部の石部先生を治療する技を皆で見せて下さった時のこと、、、
観風先生の治療を拝見できる滅多に無いチャンス!とばかりに、皆で前のめりに目を見開きました。
もちろん皆さん、その時の記憶ははっきり残っています。

ですが原田先生は…
果たしてどれだけの人が、合宿での観風先生の治療の進め方や鍼の技術、一挙手一投足、一つのこらず全て鮮明に記憶しているだろうか?と…投げかけられました。

「真剣に見ているつもり、だけでは技を盗む事は出来ない。
教えてくれる技、盗ませてくれる技、盗んだ技、それぞれ違う…」




若かりし頃の観風先生のご指導についてのお話が飛び出したり、原田先生から質問を投げかけられた山野先生からは、与えてもらう学びを自分のものにするのに不可欠なのは、その後の自身の努力次第…
と、お話が続きました。








模擬実技では、いろんな鍼の方法を拝見しながら、技術のポイントを教わりました。
散鍼は、チョンスーチョンスーチョンチョンスーと、リズミカルに。
「盗んだ技を統合する。
鍼先が自分の身体の延長であるよう、結びつくよう練習を重ねる。
そして、微調整していろんな手の内に変化させる。」




「常に疑問を持つこと。
目的意識をしっかり持つこと。」

さあ、一つでも多くの技を盗めるよう、受け身ではなく能動的に、合宿や各勉強会に挑みましょう。



○臨床発表
両側人工股関節全置換術後の冷えの症例          
牛尾宣子先生(指導教授:山野鵬観先生)

【はじめに】患者さんの診察の際、主訴をふまえ体を診ていくが、診察の技術の未熟さと知識の不足もあり、診察から診断し、治療に結び付けていくことが難しいと感じることが多い。今回の症例から、こうした方が良かったと思える点を振り返り、今後の診察の工夫としたいと思い症例に取り上げた。









【初診日】平成二九年二月二七日 【患者】七一歳女性、既婚。 【主訴】のぼせ、鼠径部から膝にかけてのピリピリした痛み。 【現病歴】平成十年頃より腰痛と膝の痛みがあった。ブロック注射などを受けていたが、痛みは取れず、先天的に股関節が悪いのが原因でしょうと、平成二十年右人工股関節置換の手術を受ける。その一年後に左の股関節も同様の手術を受け、それまでの痛みは改善された。股関節部のROMほぼ問題なし。歩行も普通であった。数年前より歩行時など鼠径部から膝にかけてピリピリした痛みを感じるようになり、現在は、リリカ2回/1日、セレコックス2回/1日内服。(痛みが酷くなるのが心配で、毎日痛み止めを内服)。腰と膝は整形外科的には問題がないと医師より話されている。 【既往歴】四十五歳高血圧、降圧剤内服中。五十歳軽い脳梗塞で点滴治療を受けるが後遺症などなし。その後、言葉のでにくさがあり受診、高脂血症の薬を処方される。胆石の為、経過観察中。六八歳良性発作性頭位めまい症。 【個人歴】旅行好き。普段から家にいるよりも外出し、喫茶店などで過ごすことが多い。 【問診事項】夜間痛はなし。上半身に汗をかきやすく、のぼせあり。顔が熱い。足とお腹に冷えを感じ、腰から下が酷く冷える。 睡眠・眠れないことが心配なので眠剤を服用。便・ビオフェルミンを内服し一日/一回。食欲・有。ぽっちゃり体型。のどは乾かない。 婦人科の疾患はこれまでない。 【軽快因子・増悪因子】痛みの増悪:同じ姿勢で坐っていること。 長時間の歩行。軽快:マッサージを受ける。 【脈状】右寸浮(強すぎず、弱すぎず)両尺が触れにくい。 【舌状】薄い苔、湿潤、歯痕なし。 【腹状】腹満あり。→後にこれが腹張満とご指摘いただいた。 【背候診】首から腰にかけて起立筋の張りが強い。志室辺りに硬結。 【その他】両股関節、膝に熱感なし。手術創から膝にかけて、触れると圧痛あり。下肢は温かい。頭に熱感あり。 【診断】股関節の手術の古血があり、歩きすぎると、毒がゆさぶられ、大腿外側、鼠径部から膝にかけて痛みが出てくる。大腿から下肢へ向かう気血の流れやリンパの流れが悪い。下焦が虚している為、上衝もあり、のぼせが起きている。 【治療方針・治療内容】下焦を補い、気血の巡りを良くし、鼠径部から膝にかけての痛みを取る。上衝しやすいと判断し、基本の型の逆順で治療。初回なので軽めの施術とする。寸三・一番使用。 頭部の熱を散鍼、首、肩のスジには軽めに単刺。背中のスジバリにも単刺。腰の志室あたりの硬結には深く刺入し響かせる。大腿に響く。腹部は、両大巨、関元、中脘に接触鍼で補う。右大腿、鼠径部から膝まで接触鍼。左も同様。両下肢に引き針。手に引き針。終了後のぼせはなくなったが、冷えている。真寒仮熱、誤治?ピリピリした痛みは、変わらず。 【経過】 ・第三診(四月二十日)主訴は肩こり(鎮痛剤の使用で、鼠径部から膝の痛みは、PS5/?)脈は浮き気味だが、腹部と下肢の冷えなどから陰証と判断。腹部を温める治療に変更する。 ・手に引き、腹部は、冷えのある関元に深く刺入し捻りながら温める。中脘、右側腹部、鼠径部の圧痛点を単刺、関元に台座灸。温めるそばから腹部に発汗あり。鼠径部から膝まで接触鍼。胆経ラインの圧痛点に単刺。足に引く。背部は、肩甲間部から腰まで単刺し、硬結を緩め、台座灸。大椎周りの盛り上がりと肩のスジを緩め、気を巡らす。 ・第四診(五月一六日)主訴は、腰と右鼠径部から膝までの痛み。 金沢への旅行で、内服薬だけでは痛みがとれず、ロコアテープを使用し、PS?から8となる。腰と右鼠径部から膝までの痛みを軽減し、腹部を温め、気血の巡りをよくする。 ・右手に引き、腹部は前回と同様。右大腿内側から内果まで接触鍼で気を巡らし、股関節外側の熱を散じ、外果まで単刺。侠渓に引き針。大腿内側に点灸。背部の張りに単刺。腰の硬結に対し、交しょ管でゆるめ、深く刺入し響かせる。その後台座灸。両崑崙に引き針。肩首を緩める。治療後、腰は楽になる。発汗あり、上は熱く、下は寒い。 【考察】初診では、自分が考えている状態と患者の状態が違い診断に迷った。陰証の診断が出来ず、真寒仮熱も分からず、誤治となってしまった。この様なときどうしたら良いのか。初診の腹診では、緊張がある事を考え、それが分かった段階でまず一本手に引き針をして、再度腹診しても良かったと思う。下肢や背部に触れても冷えを感じなかったが、患者の訴えは腰から下が酷く冷える、なので、便秘は無く、婦人科の疾患もない。血毒の熱よりも冷えのぼせと判断できたら良かった。そしてまずは、基本の型で治療に入るのが良かったと思える。 三診でやっと腹部の冷えと虚がわかり、陰証と判断することができた。先に温めることを試みたが、すぐ発汗し冷えてしまい、下肢まで温めることが出来なかった。これは下肢への気の滞りが強度であると思えるが、それは人工関節が入っており、その周りの循環がひどく悪いためだろうか。下肢にしっかり気を通すことが出来たら、温まり方も違い、お腹で発汗しなかったと思える。ただ主訴が肩こりなので、それを主に治療できたら良かったが、他をやりすぎたと、今は考えられる。 四診は、旅行したことで、循環不全がおこり、古血の毒性化が増大したためか、股関節部に邪熱が感じられた。これまで股関節部は冷えている事が多かったが、これは痛み止めを内服していたことによるものだろうか。山野先生が、「いやしの道」十五号に書かれているが、この方の痛みも始まりは腰痛からであった。訴えも腰と膝である。そう考えれば自ずと治療の方法が見えてくる。鼠径部の圧痛、大棗のスジバリを見つけ、それを緩めていれば、下肢への巡りも良くなったのではないかと思う。 症状がいろいろあると、情報が多くなり迷うが、治療の原則、優先順位を考え、治療できたらと思う。また活字では知っているつもりでも、実際の患者さんの状態と一致しないことは問題である。経験を積みながら、しっかり学びたいと思う。

《質疑応答より》
・腰が痛い、と一言で言えども、人によって様々な場所を言ってる事ある。
・主観か客観か、発表資料を記載する時は気をつける。
・本人の言葉だけを信用せず、見たり触ったりで、自分はどう感じるか。
・腰と膝が痛い時は、仙腸関節、鵞足、膝の裏側を必ず診る。
・陰証か陽証か。
・坐骨神経痛には心因性もある。





○実技稽古

入門・初伝・中伝に分かれて、指導して頂きます。
















○お知らせ
・4月から「初伝フォローアップ講座(仮)」が始まります。
日時:月例会の同日午前10時〜12時
対象者:初伝入門講座を修了した方。
テーマ:西洋医学的な事や、整形外科的な検査法等、いやしの道の治療法の中でどうやって使いこなしていくか。
詳細は、3月の月例会時に発表される予定です。


・来月、いやしの道18号が発刊されます。(予定価格は3000円〜3500円)
※横田観風先生の臨床録が、なんと100ページも含まれています!


次回の月例会は、
3月18日 日曜日
14:00開始(受付は13:30〜)
七倉会館にて行なわれます。






(文責:田原)
| ◇東京月例会 | 20:18 | - | -
1月 東京月例会

真冬の透き通った青空のもと 2018年はじめての東京月例会が 1月21日(日)根津 七倉会館に於いて おこなわれました。

 

1.静坐

身・息・心の調和のため 20分ほど 静かにすわりました。

 

2.講話

安田無観先生「私がいつも治療で目指しているところ 鍼の響きについて」
安田先生が日々の臨床で目指していらっしゃる理想の「鍼の響き」について 実演を交えてお話しいただきました。

 
「鍼の響きについては、以前にも『いやしの道機関誌』に執筆したので、是非読んで頂けると有り難い」  

『いやしの道機関誌』に掲載されてる内容  
・響きにはいろいろな強さがある
・響き方にはいろいろな種類がある
・「気が至る」とは  

「最近思っていることは、響きは波ですね、波動、なので波長があったり周波数があります」  

昔のラジオの様 周波数のダイアルを同調させることによって音が聞こえてくる様に 或るひとつのツボに鍼をしていくときも いくつか響く層や周波数がある ということをお話しいただきました。  

「ずどーんとくる響きは、患者の方も術者もわかるけれど、波長が小さいのか短いのか分からないが微細な響きというのは、患者の方にはわからないこともある。
私は、どんな響きも術者が感じ取れることが大事なのではないかなと思っている」  

或るツボに刺すと いろいろな段階の響き・反応がある中でも特に 今現在只今その状況で患者の方が一番欲している響き というものがあり、  

「そこにくると(痛いという意味では無く)ものすごく響きの度合いも強いし効き方も強く ”気持ちいい、あ−、気持ちいい” という響きが、このいくつか響く中であるはずで、それに同調させて響かせると一番効果的ではないかな、と、いまそういう風に思っている」  

日々の臨床で鍼を刺鍼している最中に 患者の方に ”ああその鍼が気持ちいい” と言ってもらいたい そういった野望をもちながら日々臨床に携わっていらっしゃるそうです。  
はじめての患者の方の場合は なかなかそううまくいかず難しいと思っている と仰っていました。  

「鍼の心地よさ、醍醐味を鍼灸師のひとたちもからだで知ってほしい」
と 時間の許すかぎり鍼をしていただきました。

 

 

 

響きとはなにか そのときいちばん心地良い響きの鍼を打つとはどういうことか 目指すところを持ち日々試行錯誤するということ 鍼の醍醐味を味わうことについて といったことを考える機会となりました。

 

 

「あー、緊張した」

 

 

3.臨床検討会

坂井敏恵先生「頭痛発作と神経症既往の体質改善」
主訴として頭痛発作があるモデル患者(同僚の鍼灸師)の方が 治療時は症状が治まっている状態であったため その時の愁訴と体質の改善として治療した症例を発表していただきました。

「痰症」「肝症」(『鍼道発秘講義』)とはどういうからだの状態なのか 体質改善を目的とした治療とは 等 考える機会となりました。

【患者】男性 42歳 身長167 体重56
【初診日】平成29年10月17日
【主訴】頭痛発作(初診日は頭痛なし。)
【初診時その他の症状】鼻づまり、鼻水(透明)、右股関節痛、右腰痛、排尿痛。
【現病歴】20歳前後から、眼の奥にガーンと電撃痛が来る頭痛発作が始まり、1〜2年に一度位の頻度で起こるようになる。発作時は右目から後頭部天柱の辺りまで膀胱経が痛み、身体が熱くなり、汗が出て、上の衣類を脱ぎたくなる。右目から涙が出て、右顔面に力が入って歪む。ひどいときは数時間動けない状態になる。一度発作がでると2週間から1か月ほど出たり消えたりして治まる。
9月上旬から10月上旬くらいの間に、何度か、頭痛発作が起こった。その後発作は治まっているが、軽い頭痛が時々起こる。
幼少期から鼻づまりと、膀胱から尿道にかけての痛みと違和感、排尿痛もあり、冷えると重くなる。泌尿器科では異常なしと診断される。
24歳頃、右腰痛と右股関節痛で腰椎椎間板ヘルニアと診断される。
現在は腰痛と股関節痛はそれほどでもないが、数日前にたくさん歩いて右股関節が痛くなった。
【既往歴】幼少時アトピー性皮膚炎でステロイド剤を塗布していた。ゼイゼイする喘息の気もあった。幼少時から時々不安になることがあったが、15歳受験前の正月から毎日、動悸・不眠・不安感・疲労感・頭痛などが出るようになる。病院で、デパス・アナフラニールを処方されるが、薬を飲むと余計に具合が悪くなるので止める。潔癖症やパニック症のような時もあり、数年後違う病院で強迫神経症と診断される。手荒れを治す為に行った病院で、神経症状の治療に移行し柴胡清肝湯を処方され(後に燈心草、竜眼肉が加味される)、3年程通うがあまり改善されない。28歳頃、入江式鍼灸治療を受けてから身体が良くなってきて(匂いが感じられるようになった等)、その後、冷え取り健康法(靴下の重ね履き、半身浴、飲食の改善、自分本位の考え方をやめる等)をやるようになり、ぐんと身体と神経症状が快方へ向かい、現在神経性は安定している。
【診察所見】脈診/左の方が少し強い、少し硬さあり、尺弱い、やや数。舌診/胖大、舌苔:やや黄色、舌下静脈怒張あり。胸腹部/季肋部の張り(盛り上がり)あり。両腹直筋拘攣。小腹不仁。胸骨脇、季肋部に圧痛あり。右肋間に細絡あり。背腰部/肩甲間部細いスジバリ(圧痛有り)。足部:冷えている。両母趾・示趾間と踵内側にびらんあり(水疱が出来て破けるようなかんじになることがある)。頭部/右天柱辺りにスジバリ(圧痛有り)。

問診他/大便:毎日あり(ゆるめ粘着性がある便)、日に数回の時もある。小便:排尿痛は気になるほどではないがある。睡眠:問題ない(お休みの日など長いときは10時間くらい、短いときもあるが気にしていない)。食事:朝、昼抜くこともある。飲酒:3、4年前くらいから少し増えたが、毎日飲まないように気をつけている(主に常温の日本酒、2合程度)。食事を朝昼抜いた時に酒量が増えてしまう。お酒が続いたり、精神的にイライラしたり怒ったりすると頭痛がでやすい。頭痛が出る前や後に頭痛が出る所と関係する膀胱経や肝経の、足の方に痒みなどが出やすい。半身浴などで身体が温まった時などに軽い頭痛が出る時もある。

【診断】やや胸脇苦満と胸などに瘀血、水毒体質、下焦の虚があり、情動の変化や飲酒などで、鎮静化している毒が熱を持ったり動揺すると上衝して頭痛として現れる。
【治療方針】下焦の虚を補い、上衝を起こしにくくし、胸や腹、後頭部の筋を緩め気血の流れをよくして、瘀血、水毒を減らしていく。
【治療経過】(寸6・3番鍼使用)(頭痛発作が治まっていたため、一度を除き、基本の型で治療)
・第1診(10月17日)
右手心包経・大腸経に引き、下腹に補法。季肋部の圧痛、スジバリ、腹直筋を緩めるように刺鍼。肩甲骨間のスジバリ、左腰部の硬結、左右仙骨脇、右臀部圧痛に刺鍼。右股関節に響きお腹も動く。右天柱辺りのスジバリに刺鍼。左足太衝に引き鍼。治療後胸の辺りに痒みが出た。
・第2診(10月20日)
温かい飲み物や炭酸水を飲むと右咽頭から鼻腔の粘膜に強く感じる。頭痛が出るときにはそういう感じが多いとのこと。鼻づまりはあるが、通っていて、昨日今日は頭痛も出ていない。右下腹に水毒あり。虚していた公孫に灸と、瘀血体質の改善に両足中封に灸を加えた。最後に左後谿に引き鍼。
・第3診(10月27日)
昨日家族の引っ越しがあり疲れている。昨日は右腰に痛みと頭痛が少し出た(治療時には頭痛なし)。鼻はつまっている。脈:右寸浮、右関やや緊、やや数。腹:臍の上下に水毒あり。治療後鼻づまりが通ってきた。
・第4診(11月7日)
3日前から鼻水・鼻づまりが多くなった(寒い所で研修会があった為)。右腰に時々チクッと鋭い痛みが出る。脈:やや沈関尺強い。腹:右下腹と左季肋部にガス。左少腹に水毒。側腹奥に筋張り。
・第5診(11月17日)
1週間前に風邪を引き、関節痛がでたが、すぐによくなったとのこと。鼻水は黄色、数日鼻づまりが強い。軽い咳が少し出る。下腹に灸を加える。
・第6診(11月24日)
どろどろした鼻が出て透明になった。つまり感はあるが鼻で呼吸できる。邪熱は感じなかったが、胸の瘀血を減らしていくのによいかと思って右季肋部の細絡から刺絡を加えたが、出ない。背部の右肝兪辺りを刺絡すると少し出血するが、あまり効果的な感じではなかった。
・第7診(11月28日)
右天柱辺りから刺絡を加える。両築賓に灸。横臥位で頸部の右側の硬結と左側の横突起が出っぱっているところに刺鍼。両築賓の灸は上の方へ響いたとのこと。翌日、身体のだるさと疲れと眠気が出て一日半くらい続いたのと、左耳奥に耳管の開閉音のような、パコパコするような感じが出た。
【考察】頭痛発作は、西洋医学的には群発頭痛といわれるものになるのかと思う。
鍼道発秘講義の痰症・肝症・頭痛・眼目の病を参照にした。
今回頭痛発作時に治療をしていないが、発作が現れる時は、肝症の状態のようになっているのではないか。長く神経症があって、肝気鬱結しやすい体質があり、気の鬱滞がひどくなったところで、怒りの感情等で情動が揺さぶられると、上逆し激しい頭痛発作として現れる。
頭痛発作時には肝症と頭痛と眼目の病のような治療を行い、平常時には主に痰症のような、水毒を取り、肝症の体質となる胸の気の鬱滞をとり、頭痛の出る鼻腔の奥の辺りの流れを良くして、鼻づまりや鼻水が普段なくなってくると頭痛発作も改善してくるのではないか。
第7診後の身体の反応は、築賓の灸や頚部の鍼などで身体の中が動いたが、最後に引き鍼をしたものの、うまく引けていなかったのかと思う。
神経症は起こらなくなっているが漢方処方当時、柴胡清肝湯があまり効かなかったのは、今よりもっと冷えていて、水毒・冷えに対する生薬が含まれていなかったからではないかとも思う。
本人は、坐禅・瞑想をして、心がけをよくし、精神的に落ち着いていると身体の調子もよいとのこと。又、長い距離を歩いたりストレッチなどして身体を変えようとしているので、鍼灸治療も併用しておこなっていくと助けになると思う。

 

 

*指導者の先生方、会場から(一部)*
・寒熱が正確に分からなかったため腹診図に記載しなかったということだが、邪や寒熱が分からない場合は、圧痛の程度が指標になることがある
・頭痛があるひとは首肩こりがある場合が多い
・頭痛発作が起きる季節やきっかけはどうか
・頭痛発作とパニック症等の神経症状に関係があるか
(坂井先生の見立て:頭痛発作は肝経ラインに出ていて季肋部(肝)等の毒が上に上がってでる。パニック症等の神経症状は、胸の辺りのつまりからきている。)
・毒の処に邪が入って毒が騒いでいる状態が肝症、痰症はまだ騒ぎが強くない感じである
・もともと胸の詰まりがある痰症体質の方は、背部の肩甲間部に冷えっぽいスジがある場合が多いので、このスジを少し長めに撚鍼等を行い緩めると、気持ち良い響きを患者の方に感じてもらいやすい
・点滴をしている方の場合、痰症の治療が参考になることがある
・おなかのどこかに一直線のスジがあるかもしれない、それが上部下部に出ている症状と関係している可能性がある
・『鍼道発秘講義』の「痰症」「肝症」はとても大事な項目である
・毒が暴れていない状態、第0段階では、そもそもからだの状態が動きにくい
・体質改善の治療は、立てた仮説を検証するためには、長い期間での経過観察が必要なので、今後も治療の継続が望ましい

 

4.実技稽古

指導者・中伝者・初伝者の組に分かれ 実技の稽古をおこないました。

 

 

来月は 2月18日(日)14:00〜 開催されます。

 

(文責 小池)

| ◇東京月例会 | 23:00 | - | -
12月東京月例会

 

 寒さも厳しさを増してきた師走の第三日曜日、

 東京、根津の七倉会館にて月例会が開催されました。

 

 ●静座

 

 

 

 ●講話

 

 本日は山野鵬観先生による講話です。

 

 

 

 実技中心の講義

 

 

本日の講義は実技中心で行われました。

「いやしの道」では鍼をする姿勢を大切にしますが、「ゆったりと構えるにはどうしたら良いか?」

その構えの問題について一助となるようにと、山野先生がご指導下さりました。

 

まずは模範実技にて。

二人組でモデルが腹這い(パピーポジションという。アザラシやオットセイの子供の意だそう。)になります。

(写真を参照に)

肩甲骨の動きを出す(ほぐす)ために左右の肩を交互に動かす。かなり広範囲に動くことがわかるはず。

 

 次に四つん這いになり、胸を落として肩甲骨を

寄せる。肘の向きを変えてお尻の方を向かせる。腰も肩に寄ってくる。術者は肩の動きにテンションをかけたりする。

さらに応用で術者はモデルの胸椎七番に触れて肩甲骨間部が高くなるように促す。胸椎の軽いズレなら修復することも可能とのこと。

 

この後、鍼の刺鍼の構え(両腕と胸で円を作る、中指を意識)をする。やりにくい人は肩凝りがある。

 

実際に二人組になって鍼を置いてみる。気が至った感覚を覚えていくと良い。

上腕、前腕には余り力は入っておらず、肩甲骨の所で浮いて止まっている感じにする。自由に手首を動かせるように。

 

具体的なエクササイズもあり大変分かりやすい講義だったと思います。あとは各自、鍛錬あるのみです。

 

 

 

●臨床発表

 

 

「坐位・前屈での刺鍼が奏功した足の痛み・痺れについて」

中川由紀先生による発表です。

患者は以前より体調管理とうつ症状予防のために通われていた40歳女性。

一週間前に映画に行き坐り心地の良くない椅子にて鑑賞し、二日前より急に左足に痛みと痺れが出現。歩行時に左足に

荷重できないほど。また臥位の横向き、くの字の姿勢で増悪。痛みは足の何処とは言いにくく凡そ膝から足関節外側および

後面とのこと。

診察所見は眠剤を使用することもあるが現在はよく眠れている。

<脈状>やや緊、左尺沈が強い。遅数は平。

<舌状>青味強く先端やや紅、歯痕あり湿潤。全体に白い苔。

<月経>順調。生理痛なし。

<腹状>ガスでパンパンに張る。季肋部は湿って軽い押圧でも嫌がる。上腹部、臍両側に冷え。両天枢周囲に硬結。右回盲部に邪熱と硬結。気海付近に少し虚状あり。

 

 検査所見は、訴えのある個所には圧痛なし。SLR80度にて痛みあり。パトリックテスト、床より40センチで止まる。右は問題なし。左側屈、右回旋にて左側に痛みあり。L2L3間、L5S1間の腰椎棘間に圧痛。左腰部に緊張と邪熱。左腸骨稜に沿ったところと関元兪、小腸兪に硬結と圧痛あり。

診断は悪い姿勢で長時間座ったことにより腰部、仙腸関節部が凝って硬くなり、腹部の水毒により気血の巡りが悪くなったことから坐骨神経の走行上に生じた。

治療方針は先急後緩にて、左側の痛みと痺れの治療を行う。腰部、仙腸関節部の後に腹中の状態を整えることにより気血を巡らせ水毒を軽減させる。

治療内容は脚気衝心予防のため心包経へ引き針後、背中、腰部、仙腸関節部の散鍼、切皮程度の刺鍼、左関元兪、小腸兪の

単刺。崑崙に引き鍼。季肋部、右回盲部を散じ両天枢、気海に灸。胆経・侠谿に引き針。SLR、パトリックテストの

改善はあるが、左側に痛み残る。座位にて深い前傾姿勢となってもらうと三焦兪、腎兪に硬結があり、硬いスジに当てるように刺鍼と雀啄。この後、テスト正常、痛みが消失し、普通に歩ける。

二診、初診以降痛み痺れはなく快調だったが、頚肩部の不快感が強くなった。これら慢性症状の治療を行ったが、念のため座位での左患部の治療も行ったとのこと。以後、左足の症状は再発せず。

 

考察 海野先生の真似をして坐位にてポイントを探すことは、今回のように坐骨神経痛のデルマトームと離れた治療部位を見つけるのに有用であった。治療直後に症状が改善していることから、腹状に対する治療は不要だったか?治療後に頚肩部の不快感が増大してしまい、予防のために頚肩部を緩め手によく引くなどが必要だった。

 

先生方のコメント

  • 引き鍼を三回やっているがなぜか?→腰の治療した後は崑崙と言うように一つづつ処理した。
  • 三焦兪の刺鍼で中川先生は何をしようとしたのか?→足の方に気血を巡らすイメージ。
  • カイロの先生が診れば一目瞭然だが仙腸関節障害と反射痛(三焦兪辺り)が出ている。とても上手に治療している。
  • 考察にて初診の腹部の水毒の治療は必要なかったのでは?と言っているが必要。
  • 腰痛は、浅い部位が障害されている時は腰部、深い部位が障害されている時は足などに出る。坐位にて深い前傾姿勢を取らせることで深い悪い部位を表層に出しやすくする。触診でポイントを探しやすくなり、深鍼で下まで響かせる。仙腸関節椎間関節 腸骨稜のトリガーポイントなどで治しやすいが、治りにくい場合はそれより上に出ていることがある。三焦兪の辺りは筋膜が癒着しているかもしれない。
  • 中殿筋、環跳なども目の付け所。
  • 腹の大棗のスジに刺鍼して膝を立てて腰をひねることで水毒へのアプローチをする。
  • 脚気衝心とあるが、これは足に邪毒がある場合であり、今回の症例は当てはまらない。

 

 

●全体稽古

 

 入会者が増えて恐ろしく手狭になってきました。暖房いらずの室内の様子。

 

●おまけ

 

例会終了後、今年も盛大に忘年会が開かれました!

芸の披露あり、治療あり、プレゼント交換あり、なんでもありの楽しいひと時となりました。

載せられない写真が多数(;^_^A(笑)

 

 

 本日、講義担当の山野先生が故郷にお帰りになるとのことで、

 記念品の贈呈となりました。そのうちネット販売されるかも(笑)

 PTでもある山野先生は、私たちとは、また違った着眼点でいやしの道協会を盛り上げて下さりました。

 長らくご指導いただき、本当に感謝ばかりです。

 

 さてさて、皆さま、どんな一年でしたでしょうか?

 来年も有意義な一年となりますよう精進してまいりましょう。

 では、よいお年を!

 

 (文責・伊藤)

| ◇東京月例会 | 00:05 | - | -
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