いやしの道協会ブログ

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4月 東京月例会

初夏をおもわせる陽気となった 4月21日(日)東京月例会が 根津 七倉会館に於いて おこなわれました。

今月は 横田観風せんせいにご講義ご指導いただくため 変則的な時間割で進みます。
年度はじめの四月 学校を卒業された方 新たな学年になった方 新入生 他 多くの参加者で 部屋がいっぱいになりました。

 

1.静坐

身・息・心の調和のため 5分ほど 静かにすわりました。

 

2.講話
横田観風先生「道について」

「道」についてお話しいただく前に 皆から質問があったということで 観風せんせいが年末年始に作成された漢詩の詩についての解説から始まりました。


七十五年
鍼禅茶書
自他無癒
只養糞袋

 

そして いよいよ「道」についてのお話です。

いやしの道では、「学術道三位一体」、学問・技術・道、この三つで一体になっている、という考え方があります。
学問や技術を修めることに関しては、ひとの命を預かる治療家として当たり前に行っていくものですが、現代の学校教育ではなかなか学び触れる機会がない、「道」に関して、解説していただきました。

道とは、簡単に言えば、どういう人生行路を送っていくかということに関わってあるもの、ということです。
私たちが所属しているのは、いやしの道協会、ですので、「癒やし」というものを主題に置いて人生を行くことを志としますが、ただそれだけでいいのか、ということが問題になってくるということです。

 

道には、いろいろな段階があるそうです。
 未知:未だ知らない(笑)
 路:こみち
 道:自分と大きなものがちょっと混ざってきた段階
 大道(たいどう):宇宙いっぱいの道。人間の脳の限界を超えてあるもの

 

東洋的な道である鍼の「道」は、中国三大宗教のひとつ、道教の教えから来ているそうです。
「道の道とすべきは常の道にあらず。名の名とすべきは常の名にあらず。・・・」(『老子道徳教』より)
老子、老荘思想の「道(タオ)」は、人間のはたらきや力を超えた宇宙のはたらき、人間の認識を超えた世界のことを意味します。昔の人は、そういうものと一体となる為に、静坐をして天地自然の観察を行ったり等、様々な努力をしたということです。私たちは、人を癒やしながら、人間の認識を超えた世界にどうかかわっていくのでしょうか?

 

道の段階の頂上にある大道にたどり着くには、求道(ぐどう)、どうしたら頂上に行かれるか(大道にたどりつけるか)?と探し求めることが大事であり、そのためには「行(ぎょう)」(例:ヨーガ、坐禅、太極拳、武術、等、続けて行っていくもの)が必要となるということです。
行をずっと続けていると、世界観が変わっていくそうで、例えば、観風せんせいの場合は、30才ころから坐禅を始め、あるとき、まずはからだが変わり、下腹が出っ張って上の方がさっぱりする様になり、息が丹田まで入っていく様になり、そうすると頭のなかの雑念が無くなっていった、そして自分の境界線がなくなり、自分と大きな世界が一体になったような感じになった、そうです。坐禅を続ける内にその感覚は段々と深まっていき、からだや精神がぶれずに芯が一本通るようになった時、魔ではない、大いなるものと一体になったという感覚を得ることができたそうです。

人間の脳の限界を超えていないものと超えたものとの違いはものすごく大きい、と仰っていました。45年間やってきて、宇宙的な感じの鍼に、たどり着いたそうです。

 

からだにもこころにも芯を通すようにしていくこと、迷わない自分をどうやってつくるか(心柱をどうやって立てるか)?ということで、「息」呼吸の大切さについても教えていただきました。
いやしの道協会の教えのひとつにある「身息心の調和」、まずからだを整え、息を整えていると、心も整ってくる。
これが現実に出来るかどうか、そのためには「息」呼吸がいちばん大事になってくるそうです。
吐く息は長く、吸う息は吸うに任せる、という上手な呼吸を続けること、そうすると、ひらめきもでてきたり、体験する世界が変わってくる、大道に至るまでの鍼に必要な気合いも身についてくる、呼吸を工夫すれば鍼も上手になる、ということです。

 

論語や老荘思想など、人生をどういう風に歩んでいけば良いかということを勉強してください、技術だけあってもだめで、なぜあのひとのところに患者さんが来るのだろう?患者さんが自ずから来てくれる、そんな治療家になって欲しい、と仰っていました。

 

常に進化し、死ぬときが終点である

 

今回の講話の詳細は、機関誌『いやしの道』次号に掲載予定ですので、みなさま、そちらをご覧ください。

 

3.臨床検討会
福嶋青観先生「老いの受け入れと夫婦の関係について」

眠れない、怠くて起き上がれない、頭が重い、という主訴で来院された70代後半の女性の症例を 発表していただきました。

【はじめに】検査の数値には出てこない、だるさや痛みなど、年齢が進むと「歳だから。」と、医師から一言で片づけられ、それでも「諦めきれない。」と鍼灸院に駆け込む方もいる。本人の身体のイメージが、若くて体力気力が満ちていた頃のままであるとそのギャップは大きい。さまざまな衰えを、受け入れつつも、生活の質を落とさないための工夫や身体のケアが重要である。

【患者概要】77才、女性。体つき・体重:中肉中背。専業主婦。夫と二人暮らし。男児1名・女児1名の出産経験あり。

【主訴】眠れない。だるくて起き上がれない。頭が重い。

【現病歴】正月に風邪を引いて風邪薬で咳・鼻水は止まったが、眠れない。(1〜2時間位で目が冴えてしまい全く眠れない。)内科では、「うつではなく、自律神経の乱れです。歳なので仕方ない。」と言われ、睡眠薬を処方。翌週再び訴えたら、睡眠薬が三種類と精神安定剤を処方された。しかし、薬を飲んでも眠れない。起きているのが辛くてベッドに横になってばかり。通常は、血圧の上が110くらいだが、辛い時、計ると160位になっている。

【既往歴】うつ病。65才の時、夫が退職し、24時間毎日いるうち、発症。1年前、薬から離脱するも「不眠」だけは続く(3〜4時間)。

【初診所見】玄関先で、深いため息とどんよりした雰囲気。靴を脱ぐのに、手間どう。目の下にクマ。まるまった背中。話しをするのも、少し息切れ気味。キメこまやかな色白の肌。
脈診:緊(特に左)、細、右寸弱やや沈、両関浮、両尺沈。
舌診:胖大、歯根あり。
腹診:心下痞硬。上腹部から右側腹にかけてガス多し。右へそ外に硬結。へそ下の力無し及び冷え。足先の冷え(手足の冷え自覚有り。)頭部のむくみ(頭頂部及び、耳周り)。
背診:第八胸椎の飛び出し。肩甲間部〜肝兪辺りまでの膀胱経の膨隆。腰椎前弯強め。腰の冷え。後頭頚のグミ様のむくみ。

【診断】(最初の診断)元々、水毒の存在有り(第0段階)、慢性的な睡眠不足及びストレスで常に虚している状態があった。そこへ風邪が内攻し、水毒を揺さぶり毒が増大化。邪が上衝し、胸部・頭部に達した(第5段階)。

【治療方針】上に昇っている邪気を瀉し、腹部の虚を補う。

【治療及び経過】
・第1診(平成31年1月23日)*週2回の治療。
寸3の1番使用。郄門、外関(胸の詰まり感が取れ、みぞおちが緩む。)、右へそ脇のスジ張りを緩める、下腹の虚が温まるようにしばし、鍼を留める(緩んで温かくなる。)太谿に補、豊隆を瀉。神闕を棒灸で温める。うつ伏せになる時、足の指がつる。百会・天柱に強めの打鍼。第8胸椎の骨直下の鍼で邪が多く放出される。腎兪はしっかり刺入して留める。命門と失眠に棒灸。
・第2診(1月26日)
前回施術後、お小水・オナラがたっぷり出た。五時間眠れた。顔色も良く笑顔。脈の緊が大分和らいでいる。夫の愚痴をたっぷり言う。治療はほぼ同様だが、刺激は軽め。
・第6診(2月15日)*ここから週1回の治療。
「睡眠薬・安定剤共、必要ないので次回内科医に相談する予定。」
「今まで全く夫に意見することが出来なかったが勇気を出して初めて言った。」「夫は頭が良い。」など、誉め言葉も出る。家事労働の軽減工夫をし、日常生活は問題なく出来ている。
脈診:細。尺やや沈。
腹診:心下やや硬い。腹部・手足に冷え無し。
背診:胸椎の出っ張り、腰椎の前弯(腰のそり)が減っている。
〜お出かけが二日続いて疲れたなど、波は多少あるものの、生活に支障無く、経過。毎日ウォーキング。
・第14診(3月25日)*ここから又、週2回に戻す。
朝、悲痛な声で電話。一昨日、娘と1泊旅行に出かけたが、行きの車で疲れ果て、温泉でのぼせて風呂場で倒れた。無理してご飯を食べ、横になったが全く眠れず。這う這うの体で帰宅。頭がもやもやしてめまい(これまでふわっとするめまいはあったが、頭がぐるぐるするような強いめまい)もある。
脈診:緊。弦。細。寸・関浮強。尺弱。
腹診:初診様だが、より頭部に熱邪がこもっている。
背診:初診様だが、首肩がよりガチガチ。
治療は、百会・顖会に雀啄で瀉。後は大体これまでと同様。治療すると調子が良くなり、滞っていた家事で無理をしたり、一進一退。
・第18診(4月8日)
気温差が激しく、汗をかいたり、寒かったりで風邪気味。耳下リンパが痛い。鼻水が少し出る。)睡眠は取れているが、だるくて横になることが多い。「私が具合悪いと夫の機嫌が悪く、色々、怒鳴られたりする為、こっそり、ベッドで休んでいる。」
脈診:右緊。左寸弱、両関浮、両尺沈。
腹診:心下痞硬。全体的にややガス多し。右へそ脇にスポット的に冷え。右足裏のみ冷え。頭部のむくみ(頭頂部及び、耳周り)。耳下リンパの腫脹(自覚有り)。鼻周りにむくみ・熱感あり。
背診:第8胸椎前後の骨の飛び出し。肩甲間部〜肝兪辺りまでの膀胱経の膨隆。右首スジの硬結。
治療は、耳下リンパの散鍼。攅竹・迎香に鍼。他、大体同様。

【考察】
夫は、仕事一筋だった人で、退職後は、外出・外食ほぼ無し。用事をよく言いつけられ、常に気を張る毎日で疲弊している(掃除屋を頼むと言うと、「俺がやる。」と言って、実際やらない。又、小水を漏らした事を言わないので部屋の中が小水臭くなり気分が悪い。とにかく何もしないくせに文句は多い、など不満は多い。)
これまでずっと家事全般手を抜かずにきたが、年齢とともに、体力に見合わなくなってきている。
最初は抵抗感があったようだが、家事労働を軽くするよう工夫してもらい、すぐゴロゴロ出来るよう、リビングにマットも敷いてもらった。
前半の治療でかなり改善した頃は、夫をほめる言葉も出たが、娘との旅行後、再び具合が悪くなると、とたんに夫の機嫌が悪くなり、イライラするようになった。妻を心配する余り、夫もストレス過多になっているのだと思うが、それを妻にぶつけてしまうので、妻のストレスも倍増する。
患者のストレスの要因として、娘への心配も大きい。一回り以上年上の男性と大反対の末結婚したが、その夫が6年前から寝たきりで自宅介護している。母は「娘の息抜き」として、娘は「母が父から解放される為」として、2ヶ月に1度、温泉旅行に出かけている。3月の旅行では、互いを気遣う余り無理をして倒れてしまい、むしろ娘に心配をかけてしまったことを後悔していた。
老いにより、少しずつ出来にくくなることもあると受入れつつも、体調が安定したら、筋力をつけていく方向へ持っていくことを患者と話している。本人もソシアルダンスに興味があると少し意欲も出てきている。第2診以降、調子の良い日は、ウオーキングをおこなっている。
又、夫との関係で、本人が「夫に言えない」ことを言いやすい言葉に置きかえるアイディアを治療の合間に二人で考えている。
治療に関しては、胸を突き上げるお腹のガスを下げて胃腸を動かしたり、後頭頚部や背中の張りを緩めたりして、異常興奮した交感神経を沈め、副交感神経をあげることで睡眠も改善し、自覚症状はほぼ取れてくるが、最終的には、水毒の排出を進めていくこととなる。
風邪引き後に毒が増大した初診、温泉で湯あたりして上逆した第14診、再び風邪引き直後の第18診の身体の変化が面白い。
尚、水毒、ガスに関し、「いやしの道第10号」および「11号」の一風万病あれこれ(観風先生)を参考にされたい。

 

4.総稽古・実技稽古

今月は 各自の実技課題をもとに 横田観風せんせいが直接指導してくださる特別編。

観風せんせいから「熱気の感じられる稽古を期待しています。」との事前メッセージをいただきつつ、まずは総稽古に臨みました。

 
学びに集った全員の前で、志願者が各々の実技課題を実際に行い、みなさまから意見をいただいたり指導していただきます。

 

 

 

 

 

 

 

 

熱気ある大勢の前で注目を一身に浴びながら、観風せんせいを目前に課題を実際に行い指導を受けてくださった方々のお蔭で、仲間の課題、鍼をしている姿、まわりの方々からの助言、等等、さまざまなやりとりを通して、その場の全員が多くのことを学ぶ貴重な機会となりました。

 

その後、指導者と中伝者・初伝者の組に分かれ、実技の稽古をおこないました。

 

4月は観風せんせいのお誕生日月です。おめでとうございます。

 

 

来月は 5月19日(日)14:00〜 開催されます。

 

(文責 小池)

 

| ◇東京月例会 | 23:00 | - | -
3月 東京月例会

 

 

3月17日(日)七倉会館にて東京月例会が行われました。
まずは恒例の静座から。


本日の講話は安田無観先生です。いやしの道では、学・術・道(どう)が大事とされています。安田先生自身は道が足りないと思われているそうで、今回は道(どう)にちなんで道(みち)についてのお話をしてくださいました。題して「ボウルダーへの道」。いやしの道のワークショップを行うためにアメリカまで行き、時差ボケを少しでも治してからワークショップをしたいということで、初日はアメリカサンフランシスコに入り、観光をしながらボウルダーへ向かったということでした。途中の観光地の写真を見せていただきながら話をきいたのですが、さすがアメリカ!広大な上に絶景!見えなかった方は安田先生に直接見せていただいてください。

さて、だいぶアメリカ横断の話は割愛しましたが、 ワークショップは3日間に渡り現地の鍼灸師たちにいやしの道しるべを講義し、基本の型、鍼の持ち方から稽古用紙の書き方まで徹底して教えたそうです。稽古用紙を普段の練習から使うのが上達の近道なんですね。3日目は安田先生が一人ひとりに治療を行ったそうです。教えたアメリカの鍼灸師の一人から、いやしの道のやり方で患者さんを治療したら、効果がよくでたという感想がきたようですよ。初めは簡単そうですが、やっていくほど難しい。筆者も実感しています。安田先生からは四部録を読む。繰り返し読む。何度も読む。ということでした。

頑張ります。

 

 

臨床検討会

シャルコー・マリー・トゥース病(指定難病⒑)
        市川友理(指導教授 大浦慈観先生)
【初診】平成二九年七月七日
【患者】女性・五七歳。身長一七〇僉B僚渡燦洵圈
【主訴】手足の痺れ。手足が思うように動かない。全身痛。
【現病歴】
一五年前に階段から落ちて右腰を打っている。これを機会に、腰痛、頚椎の痛みが気になり、整形、カイロ、整体と点々と歩いたが良くならず、益々自由に動けなくなり、歩きにくくなっている。介護をしてくれる友人に家事援助を頼んで過ごしている。
食欲はあるが、手が不自由でお箸を使えなく、雑な嚙み方をしている。過去、整形外科の診断は「脊柱管狭窄症」「頚椎症」。車の運転をするが、むち打ちの経験はない。目、鼻、口の感覚も違和感がある。
初診日、治療院の裏の駐車場から、友人に抱えられ転げ込むように入ってきた。体が異様に大きく、顔は赤黒く、目が大きく、息が上がっていた。予約時に「腰痛」と連絡をいただいたが、何か違う感じがした。糖尿病(血糖値一〇〇、食事制限でコントロール中)の他に病気はないと言うが、これほど不自由な状態で精密検査をしていないのなら、するべきだと勧めた。
【既往歴】
小学生のころよりよく転んだ。原因は承咾覆里と思っていた。腰痛は中学生頃からあり、原因は記憶がない。三〇歳頃、炬燵を持ち上げようとぎっくり腰になり、一か月位で良くなったが、腰痛はずっと気になっていた。
【生活歴】二三歳で親に急き立てられ、何にも分からないまま結婚をした。子供二人を育てながら、姑、小姑に奴隷のように扱われ、ご主人の助けもなく、強いストレスを感じながら毎日を過ごしてきた。子供の大学が終了と共に、ご主人とは別居をしている。現在は実家に戻ったものの、親も高齢となり、兄は結婚をしておらず、一方、別居中のご主人は引きこもり状態で、患者さんがご主人の会社の役員をしているため、両方の家を行ったり来たりしている。  
【初診時の総合所見】
・脈診…左右共に浮、数。
・舌診…舌色は紅。全体に黄苔がおおい、舌裏は色悪く、舌下静脈は怒張。
・腹診…頭、顔、頸の強い熱感。胸中の熱と心頰。胸脇苦満。胃に硬結。右腹直筋の拘攣。右胆経の拘攣。左鼠径部の硬結。両下肢は細く強い冷え。右手は鷲手。右足底は大きなアーチ。
・背診…上部一杯に尋状性乾癬が重なり合う。頸の拘攣。右肩関節が盛り上がり肩甲間部の拘攣。右脊柱起立筋の拘攣。腰部臀部の硬結。右膝裏の筋張り。右踝周囲の強張りと浮腫。
【治療方針】患者さんは「全身の痛み」を訴えたが、右の頸から右踝まで右の節々に痛みがあるので、お灸を有効に使い治療をする。舌苔の状態から、消化器系の異常もあると判断し整える。  
先ずは全身の精密検査をして貰う。
【治療】
・一回目/陰経と陽経の手に引き鍼。頭と顔に沢山の散鍼。さらに合谷に引き鍼。頸から胸も散鍼。「楽になった」という。右腹直筋に細指術と更には爻ショ管術と雀啄術で緩め、季肋部に多く散鍼、期門に細指術に雀啄術。中脘に細指術に屋漏術。鍼をしたところには透熱灸(半米粒大二壮ずつ)。左下の側臥位で頸、肩、腰、臀部、下肢の拘攣を緩めた。右手の神門より上に半米粒大の透熱灸。左右の内踝周辺を棒灸で暖めた。起きて後頚部に雀啄術。左手の中渚に引き鍼。
・二回目/一週間後、近くの病院の総合検査結果を持ってきた。血液のヘマトクリット値が高めだけで、医師の判断は「健康体」のサインがあった。説明不足だったと反省。浦和・大宮方面の整形外科のある病院へ行き、自分の歩き方や不自由さを説明して、リュウマチや腫瘍マーカーの数値、膠原病その他を判断してもらい、レントゲンで本当に「脊柱管狭窄症」なのか、リハビリで治るものなのか、全身的に調べましょうとアドバイス。治療は前回同様。さらに左右の、手の十指間穴に刺し、足の八関穴に透熱灸。下半身を温めて欲しいが、もつれて歩けないので靴下は使えない。その後一週間、腰の痛みがほとんどなく楽になっている。付き添いはなく、自分の運転で来る。


(三回目以降省略)


・翌年十月九日、三八回目/「シャルコー・マリー・トウース病」という結果がでた。遺伝子異常による末梢神経疾患の総称である。特徴は、大腿部を大きく挙げて足尖は垂れて足底が大きなアーチの為不安定で、大きな鶏がゆっくり歩くイメージの「鶏歩」。
病名が判明したことで、患者さんの心がシャンとした。子供さんの結婚が十二月に決まり、正装をして出たいということで、十一月二二日、駐車場まで一緒に歩いてみたが、両手で長い杖を突き揺らぐことなく、一歩一歩ゆっくり歩いた。辛い時はいつでも来るが、近くでの体操に通い、娘さんが妊娠したので面倒を見る覚悟で準備しているという。患者さんを紹介した人に尋ねたところ、患者さんのお兄さんも同じ「鶏歩」だったという。
【考察】
シャルコー・マリー・トゥース病は、普通、左右対称に症状が出るというのに、この患者さんの場合はストレスのため、右に強く出たのだとおもう。
紹介状を書いて病院に依頼したが、その理由の一つはリハビリが必要だと思い、当院ではやりきれない部分を感じたからだ。また、患者さんはお姑さんに文句を言われ、時間を自由にできなく、ちょっとのチャンスを利用しながらこれまで治療を続けて来て、しかも本当の病態を見極めて行くこともできず、料金にしても、治療にしてもひどい目にあっている。長期に渡る苦しみから解放されてほしいと思い、本当の病名を知るのを怖がってもいたが、それを確認してから治療したいと思った。
病院からの検査結果は自分の勉強にもなった。患者さんにも説明してあげて理解してもらえた。しかし病院に丸投げの気持ちはなく、むしろ結果は鍼で治すしかないだろうことも想像しながら、「何病」とこだわることなく、そのままの病体を診て触診して治療をして行く。
私は一五分や、三〇分の治療でできる患者さんはあまりいない。殆んど、長期間あちこち治療院を周り治してもらえず、しかも遠方より、家族の協力を得て来ている方が多い。大体一回目に劇的に良くなって帰ってもらう。初めはできるだけ軽めにするのが理想だが、上記の理由で、瞑眩の説明もするが、はっきりした変化を患者さんに感じてもらっている。
私自身が病気で辛い思いをしてきた。ここが痛いときは他の部位にも影響し、どこにどうなるかが分かる。自分の病気の経験も今は有難い先生のように思う。長時間相談に乗る時間はないが、気になることはちょっとの間にアドバイスする。私は誰にも親切ではない。でもつなぎ目にお茶を一杯一緒にいただき、夜仕事帰りの遅い患者さんには、スープや茶わん蒸しを一緒にいただきながら、雑談もする。
生徒さんを見ていて早く覚えて欲しいのは、どこに鍼をするかという病態の診方である。私は横田先生に直接教えていただく機会は誰よりも少ないが、何時もお腹を探るとき、先生に手ほどきしていただいた時のことを思い出している。正しく探り、丁寧に見落とししないように診ることである。

病名関係なく患者の身体の状態を見極め治療をするのがいやしの道のやり方ですね。患者さんに病院へ行き精密検査を受けるよう促すのも鍼灸師としての大事な責任ですが、やはり見極めが難しくどのような説明をすれば納得してもらえるのかと考えさせられました。とても貴重な症例報告でした。

 

実技

3月は入門講座がお休みのため、また参加者も多く、部屋いっぱいに広がって練習しました。日頃の疑問や課題を解決しステップアップを目指します。

 

帰りの上野恩賜公園では早咲きの桜が開花していました。まもなくソメイヨシノが一斉に咲き始めますね🌸

文責:溝口(春)

| ◇東京月例会 | 20:00 | - | -
2月月例会

今日も良いお天気です

根津の七倉会館で月例会が行われました。

 

・静坐

坐禅、正坐で呼吸、姿勢、心を整えます。

 

・症例検討会 藤田峰観先生

耳鳴りの治療                                                                            

【患者】 女性  六七歳 

【初診】平成三〇年一二月一八日

【主訴】耳鳴り

【現病歴】今年の八月二八日、乗用車で青信号の交差点を右に曲がろうと進入したところ、直進してきた信号無視の乗用車に右中央部を衝突された。事故の衝撃で運転席と助手席のエアバッグが開いた。顔に当たったかは不明。自車は大破し、廃車となった。特に身体に外傷はなく、頸部にも異常は感じられなかったが、大事故だったため念のため救急車で病院搬送となった。搬送中の救急車の中で左耳が聞こえていない事に気付いた。

翌日になっても左耳が聞こえなかったので、近くの耳鼻科を受診。検査で異常が見られなかったので、精神安定剤、ビタミン剤、胃薬を処方され服薬で様子を見ることになったが、二回くらいしか服用しなかった。一カ月くらいして聴力は戻ったが、激しい耳鳴りが起きるようになった。耳鳴りは常時ガンガンやギ―ギーしていてまるで工事しているような音で、特に子供の高い声が響いて聞き取れない。(学童保育の仕事をしており、支障をきたしている。)また、水洗トイレの音が耳障という。

初めから通院している耳鼻科の診断では耳に異常は見られないので、診療機械のそろっている某総合病院を紹介され、受診(発症から約一カ月半後)。やはり検査に異常は見られないので、心療内科を紹介されるも納得がいかず、耳鼻科専門の大学病院を紹介され、受診(発症から約二カ月後)するも同じく、検査に異常はないとのことで、音響療法を進められたが、遠いので通院困難なため断る。鍼灸治療を希望し、来院となった。なお、事故の対応は、保険会社が親身になって対応していて、問題はないとのことである。事故直後食欲はなかったが一週間くらいで戻った。睡眠に影響はでなかった。ただし、交差点では今も緊張して運転しているとのことである。なお、夫と二人暮らしである。

【既往歴】虫垂炎(一〇代)、寒冷蕁麻疹(十数年前で左下腹部に痕あり)、高血圧症(上百六十)服薬なし。

【現症】ガンガン、ギーギーと大きな音はしているというが私との会話は落ち着いて普通に話せる。めまいはないという。睡眠もよく眠れているという。耳や頭・頸部に痛みなどはないという。胸に弱い邪熱があり、心窩部に固まりがあり、左横腹に強いスジ張りがある。左頸部、肩から肩甲間部に強い張りがある。腰や手足に痛みはないという。学童保育の仕事で子供とのコミュニケーションが取れないことのへのいらだちを感じた。仕事を積極的に責任をもって行っているようであり、事故や現状を理路整然と説明した。体質的には陽証に感じた

 心下痞(訂正)→心下痞硬

 

 【診断】

  子供達とのコミュニケーションがとれないこと、事故への恐怖を引きずっていることから、事故の物理的衝撃と、精神面での影響いらだちなど胸の邪気や心窩部の痞え、頸部、肩の張りをおこし、耳の器官にリンパ液等の水分が影響し耳鳴りを起こしているものと判断した。

【治療方針】

 胸の邪気をさばき、横腹のスジをゆるめ、肩、頸部の張りをゆるめリンパの流れをよくする。耳の周囲、頸部等の瘀血も処理をする。また、精神の影響を配慮し、よく話を聞き同調し気分をリラックスできるように対応する。

【治療経過】

第一診、十二月一八日 左心包経、三焦経に刺鍼、胸に散鍼、右横腹、左横腹刺鍼。耳周囲の刺鍼。頸部肩、背部の刺鍼。項に刺絡。

第二診、十二月二一日 強い耳鳴りは変わらず。頸部、耳周囲、肩の刺鍼で楽になり、頭痛、頸部の周囲が張っていたことにあらためて気付いたという。耳門、聴宮、聴会(深く)刺鍼。側臥位で寝ていて左腰が痛いことに気付いたという。

第三診、十二月二五日 強い耳鳴りのガンガン、キーンというのは無くなったが、しかしセミの声のような耳鳴りが静かになると聞こえるという。子供たちの高い声が聞き取れるようになった。水洗トイレの水の音が気にならなくなった。腰の状態も良い。左耳の横、竅陰穴付近に痛みを感じるという。百会、同部を刺絡。

第四診、一二月二八日 頭痛はなくなった。耳鳴りはジーッ、キーンという感じ。

第五診、一月八日 キーンという高い耳鳴りは無くなったが、ジーッと低い音がでている。疲れると項に痛むことがある。

第九診、二月五日 少し気が沈んで元気がない。耳鳴りの治療も少し諦めの感じなので、あらためて治療について説明し、少しずつ良くなってきているので励ます。

第十診、二月一二日 明るい顔で治療室に入ってきた。治療に前向きになっており、灸点の確認と、高血圧の灸点を教える。耳鳴りは初診時に比べ六割。頭痛は時々でるので二割、頸部等の張りは三割程度に減少したとのこと。

 

【考察】交通事故が原因の難聴と耳鳴りで、めまいがない。まず考えられるのは、鼓膜の破損を考えた。後日調べたら、外リンパ瘻も考えられるが耳鼻科でそのようなことは言われていないので、心理面と衝撃による水液、気のめぐりの影響からとして鍼灸治療をしていくこととした。また、事故後四カ月経過しているが左側の頸部と肩の張りにおどろき、これを緩めれば何とかなるのではないかという見込みから治療を開始した。また、治療は経穴にとらわれず反応点に重きをおいて治療するよう心掛けた。

特に印象に残ったのは聴会穴で、二診目にこんなに深く入れて大丈夫だろうか?というほど吸い込まれるように二センチ以上入ったと思われる。手ごたえを感じたが、この穴だけでなく全体として耳の周りが良くなったと思っている。また、竅陰穴付近に痛みを訴えており、細絡は見られなかったが、凹んでいていやな感じだったので、百会とともに刺絡をしたら、かなりの量の瘀血が出て痛みがなくなった。

現在胸の邪気は三割程度に減少した。項の張りも部分的にはまだまだ強く残っており、これらに対応しながら治療を進めている。

初診から二カ月弱で少し治療が停滞し、患者さんも交通事故の保険で治療を続けてよいものか迷いが出てきた。患者さんと話していて、耳鼻科で進められた心療内科、及び大学病院で勧められた音響療法をきちんと理解していなかったようで、自律神経の異常や考えられる耳鳴りの原因を説明した。患者さん自身から、事故の相手のことをうずうず考えず、自分でも努力しながら前向きに治療に取り組みたいと話してくださった。 

耳鳴りは『経絡流注講義』では三焦経の是動病、小腸経の所生病にある。また、病症にはないが胆経も耳を通っている。さらに『鍼道発秘講義』に耳の病として出ている。また、『万病一風論の提唱』の中に「万病一風論における心身相関」の項目があり、この症例に大変参考になった。

 

 

第九診後に丁寧に説明したことで、患者さんが治療の意味を理解し納得してご自身が前向きに治療に取り組むよう、気持ちを切りかえられたというお話がとても印象的でした。

朽名先生からは「聴会穴は耳の疾患に有効な穴ですが、無理に刺すと内出血をおこすことがあるので、初学者は気を付けましょう!」とアドバイスもいただきました。

 

・実技タイム

 ペアになって、稽古開始です。

 

 

 

 

 

 

 

 




・連絡事項

来月月例会時に季刊誌ができる予定です。金額は3,500円くらいになる予定です。25部くらい用意する予定です。

すぐに売り切れてしまうと思いますので、皆様お早めにお求めください

 

 

4月から新期初伝フォローアップ講座が始まります。

 

 (文責・溝口)

 

| ◇東京月例会 | 23:59 | - | -
1月 東京月例会

皆様、あけましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いします。

 

2019年度、いやしの道協会最初の月例会です。

今年も根津、七倉会館でお世話になります。

 

1、静座


坐禅、正坐で呼吸・姿勢・心を整えます。

 

 

2、講話 前之園 空観先生

 

 

 

「伝えられなかったことを伝えに来ました」

 

まるでン十年越しの初恋の告白でも始まりそうですが、勿論違います(笑)。

 

今年の合宿の『形を作る 〜いつも同じでいられるために〜 』の続きになります。

 

まず、前之園先生から坐禅の形をとるように指示がされます。さらにそこから患者さんに鍼をするつもりで手を30兪阿暴个考佑砲箸里海函

 

その時点で皆さんの姿勢はどうなっているでしょうか?。腕の円相や、姿勢が崩れてはいないでしょうか?。

 

前之園先生からは、

 

「いやしの道では、『坐禅しているつもりで鍼をしなさい。』と教わる。」

 

とのこと。その際に、

 

・姿勢が『崩れる』のは初学者

・姿勢を『崩せる』のは熟練の先生

 

ということでした。

 

崩れるパターンにも幾つかあり、

 

・『手を伸ばす』…30僂竜離を稼ぐため手を前に出し腕の円相が崩れる

・『腰を倒す』…肚が入っている人は良いが、背中が丸くなっている人もいる。

 

などがあるそうです。

 

結局のところ、坐禅しているつもりで鍼をするためには『肚で打つ』ということになるということですが、そもそも『肚で打つ』って何?ということに前之園先生も苦労されたようです。そして、

 

「動きを教えるのは、前提を自分と皆さんで共有していなくてはいけない。重心が動くというのは?を共有したい。」

 

ということでした。

 

そもそも、前之園先生は体育畑のご出身。いやしの道では、

 

「一度全てを忘れなさい。」

 

と教わるため、初伝・中伝ではそれ(体育畑出身)を出さずにやってきたが、指導者になって時間が経ち、自分のバックボーンである運動を通して指導した方が伝え易いということです。

 

また、前之園先生が言うには、

 

「自分には信仰心が無い。皆さんが思っているより遙かに無い。心がどうとか言われても…、これはいやしの道無理だわ〜。」

 

と思われたそうですが、

 

「ワザが極まりて心に到る」

 

ということばがあるため、技を極めるために一日を一意専心に過ごすことは禅をやっている人達にも通じることもあるのでは?という思いから「技、技。」と言うそうです。

 

そして技術習得に必要な課程として示された図がこちら。

 

     →客観イメージ(外的イメージ)

 

運動     ↓(上達に従い

イメージ   ↓ 移行してゆく)    

          

     →筋感覚イメージ(内的イメージ)

 

技術の習得は外的イメージの模倣から始めるが、技術レベルが上がっていくと運動イメージが徐々に内的イメージへ移行していく。

 

(※ただし、どこどこの筋肉を動かしている…というのは、外的イメージになり、熟練度が少ない。)

 

無意識の運動とは、小脳で記憶すること。

(運動指令のモデルを作ること

 ……例:ペンを取る、歯磨き、など)

 

これらを観風先生は『筋肉群の調和』とおっしゃるそうです。

 

次に、前之園先生が動きを伝えるために行うことは、

 

1、数多く真似させる。

2、限定された条件下で行う。

3、出力を大きくする。

4、似た動きを使う。

 

ということですが、これらは気付きにしかならないため、その後の工夫が必要ということです。

 

更に、似て非なるものの排除ということも説明されましたが…、

 

1、鍼を『刺す』と鍼を『置く』。

2、『近づける』と『近づく』。

3、目を『つぶる』。目を『そらす』。(熟練者と初学者)

 

……難しい💧。3に関しては前之園先生も、

 

「格好いいんだけどね〜。」

 

と。

 

これに関しては身に覚えがあるのでギクリとしました。熟練の先生方と、その真似をしているだけの初学者とでは雲泥の差があるようです。次の月例会で指導者の先生方にもう一度よく確認しておかないと……💦。

 

ちなみに、来月(2月)のフォローアップ講座は『初伝あれこれ』(いやしの道9号)を用いて、基本の型を順々に前之園先生がご自分の解釈を解説していってくださいます!。初伝の人は是非参加しましょう!!。

 

3、臨床検討会 牛尾 宣子先生

 

 

今回からは、症例発表の際に患者さんの腹診図も示していくとのこと。

よりしっかりと患者さんの生命の状態を把握することが求められてゆきます。

 

 

 

『卵巣がん術後の治療』

 

【考察】初診では脈と舌診から陰証と思われたが、冷えは酷くなく活動も出来ていたので陰証傾向と考え腹部の状態の改善を目指した。胸の熱を取ることで胸のつまり感はとれたが背中の違和感は改善されなかった。十月に東洋医学科から少陽病虚証の薬が処方されたことで膝から下の冷えが改善され、背中の違和感を主に訴えることが多くなり、頭痛が起こり始めた。九診の風邪と考えた熱は、漢方薬の内服によるものと後から分かり勉強不足を痛感した。患者は、柴胡桂枝乾姜湯証で陽証の部分を漢方薬が、陰証の部分を鍼灸が担っていたと考えると、お腹の状態がもっと改善できていればしっかりと熱が出て背中の違和感がとれたのかもしれない。現在も気の動揺で様々な症状がみられるが、邪毒の在り様をきちんとイメージし、どのような順序で、どの様な部位に、どの様な手技を施せばよいか考えながら治療できるようになりたいと思う。患者は、これまでの愁訴が鍼灸でとれたことに驚かれたが、身体が楽になったことで、患者のQOLの向上につながったことは良かった。

 

(※発表された内容は、個人の特定に繋がる情報が含まれるため、ブログでは大部分を割愛させていただきました。ご了承ください。)

 

4、実技タイム

 

 

 

今年最初の実技稽古です。

 

 

 

みなさん、気合が入っています!。 

 

 

…と、奥の方では何やら楽しそうな声が…。

 

 

 

朽名会長はスペシャルゲストのN君と『いやしの道幼稚園』状態でした(笑)。

 

三輪副会長も、

 

「子供が気軽に来られる雰囲気の会でありたい。」

 

とのこと。そんな和気あいあいとした会であり続けたら素敵ですね👍。

 

次回の月例会は2月17日(日)の14時開始になります。

来月もよろしくお願いします。

 

(文責:松本)

 

 

| ◇東京月例会 | 18:33 | - | -
12月東京月例会

曇天の寒い日ですが、会館内は熱気あふれる学びの場です。

根津 七倉会館 於て

 

1 静坐


坐禅、姿勢を整え、呼吸を整え、心を整えます。

 

2 講話

 

 

ー私の「境涯」ということー 

 

いやしの道協会顧問 大浦慈観先生

 

 

 朽名先生からこの講話のお話があったとき、技術的なことにするか、日本の鍼灸の歴史的なことを話そうかと色々考えましたが、このいやしの道で練習をしてこの先一人前になっていこうとしている人に一番大事なこと大事な問題は何かを考えた時、自分の恥さらしもしなきゃなと思いこうしたテーマにしました。皆さん、横田先生から色々とことあるごとに鍼灸師としてやっていくその心構えとか境涯など色々な形で発信されているのでみなさん薫陶を受けていると思いますが、決して1足飛に横田先生のような境涯には絶対なれません。ここで自分の歴史を振り返って私が今どの地点まできているのか、自分の気持ちの面でお話しした方が中間過程として、私の言葉でお伝えできたら少しは参考になるかなと思います。自分の歴史をかいつまんでおはなしします。なぜ鍼灸師になろうかと思ったから始めます。

🔷私の生い立ちと青春

・父と死と母の闘病 ー 父49歳にて死す(高2の時)。母乳癌手術と骨髄炎手術。

・青春の苦闘と家との絶縁 ー 理想と挫折。

・放浪生活 ー 福井での自己を見つめ直す体験、永平寺坐禅。

・何のために生きるか? ー 母と祖母のもとへ帰郷。

🔷鍼灸を手に入れるための旅

・サラリーマン生活の終焉 ー 組織の中での生活に行き詰まる。

・東南アジアへの放浪 ー 言葉や文化が違っても人間の考えていることは共通。日本人が忙しい毎日の中で忘れそうになっている、家族や友人など身近な人間関係を大切に思う余裕。効率や金銭的価値観とは対照的な生活。

・中国への留学 ー 文化大革命の傷跡、日本より厳しい競争社会の現実、豊かになりたい意欲の充満した社会。

・鍼灸は技の世界 ー 湯液は内から治し、鍼灸は外から治す、車の両輪。技は師を選んで自らの手で体得するもの。

🔷鍼灸の道へ踏み込んだ頃

・鍼灸学校時代 ー 早く一人前になって自立したかった。中国鍼灸と日本の鍼灸との違いに戸惑う。得気と鍼響との違い。鍼の効果とは何か?

・技術研鑽 ー 師匠の学び方に倣う。同じように刺鍼しても効果が違う。自己の工夫が大事。患者に受け入れてもらえる刺鍼方法。患者との間合い。治そうという思いの強さと技術の未熟さとの苦闘。

🔷教える立場となって

・自己脱皮 ー 謙虚さと裏腹の自信のなさの克服。前に出る勇気。

・教えることは学ぶこと ー 確信できるまで調べる、実験する。疑問をそのままにしない。

・世に問う ー 恥をかくことを恐れず。文字に残る怖さと、慎重な態度、影響を想像し創造すること。反響はボディーブローのように2〜3年後に出てくる。

・師匠の偉大さに気付く ー 先を読んで見守ってくれていた温かさ。

🔷境涯の大事さへの気付き

・患者の状態に応じた技術力の向上 ー 引き出しを多く持つ。体と心の状態に応じた対応力。

・執着を捨てる ー 見栄を張らない。卑屈にもならない。自分らしく自然体でゆく。他人のやり方と比較しない。

・己を空しくすると ー 患者の今必要としていることがみえてくる。自分のすべきことと、できないことの限界が見える。患者自身がすべきことへのアドバイス。

・信頼と安心を基本とした繋がりへ ー 自分は意識せずとも、天は見ている、人も見ている。結果としてなぜか必要とされる。

・今度は他人を活かせる番へ ー 人の良さを伸ばす、惜しみなく与えられる自分への自己変革。

🔷技術的な面での違い

・慈しみの心を忘れず ー 患者が何を辛く感じているかが分かる。どこが辛くて、どのように辛くて、何がとなっているか、想像できる。

・患者の身体が半透明な空間にみえる ー 分断された諸臓器の組合せでなく、広がりのある一つの皮に包まれた空間。

・患者と自己との境目が稀薄になる ー 針を置くという行為により、自己の気が相手の身体に浸透し、相手の身体も気を反響させ応じてくる。楽になってゆく瞬間や変化が分かる。

・「観」の目を養う ー 初対面の患者、多種の病態へも臨機応変に対応でき、楽な状態に、前向きな気持ちにさせられる。治療開始時と一ヶ月後、半年後との違いや経過が、長いスパンで観える。

 

3 症例検討 

 

「左足先の痺れとお腹の張り感を訴える患者」

 

坂井敏惠 先生(指導教授 朽名宗観先生)

 

 


【はじめに】三年前から足の痺れを発症した患者。痺れの他に首の寝違え等、その時々の愁訴があることが多く、それらの愁訴とともに痺れを中心に治療を行った。段々と痺れは減ってきたが、もう少しというところで留まっている。今後の治療をご指導頂きたく発表する。
【患者】女性、四十七歳、身長一七十儖漫既婚。
【初診日】平成三十年七月三日
【主訴】〆犬梁裏が痺れる。△腹が張ってつらい。
【随伴症状】首肩背凝り。足の張り。
【現病歴】(神二十七年二月、両鼠径部に痛みが出た。痛みは三週間〜一ヵ月程で治まったが、左足裏の先の方に石が一枚入っているような感覚が出る。それから左臀部から足に痺れが発症した。坐骨神経痛と言われたとのことで、他で鍼灸治療を受け、一カ月程で臀部から大腿部の痺れはなくなり、足先に痺れが残っている。
大学で中国へ留学し食生活が変わったころから不調を感じるようになる。今の仕事に転職して食事の時間が不規則になり、普段からお腹が張りやすい。普段お酒を飲んでいないが(元々はお酒が強いとのこと)、昨日は冷たいお酒を飲んだ。胃が動いていない感じがする。
【既往歴】十歳頃、虫垂炎手術。三十六歳、子宮筋腫を内視鏡手術。
【診察所見】〈脈診〉弱・遅。〈舌診〉やや白っぽく丸い。潤。薄っすら白い苔があるが少し剝がれて荒れた感じ。やや舌下静脈色が濃い。
〈腹診・背診〉上腹、下腹部ともに冷えている。軽く圧すといやな感じで、深く圧せない。あまり膨れているという感じではないが、ガスがある。下腹は力がない。肩甲間部、背部、腰部とも軽く圧して圧痛が多い。
〈問診他〉増悪寛解因子はなく、常に痺れている。便秘も下痢もしやすく、月経前は便秘気味になる。月経は三十日周期。月経痛があり、毎回市販薬を服用。排卵痛もある。子宮筋腫の切除をする前はもっと月経痛がひどく、漢方薬を飲んだこともあったが、あまり良くならなかった。仕事は営業職で、重い鞄を持って、長距離の移動が多く、冷房の効いた電車に長い時間乗ることや、長時間車を運転することも多い。睡眠時間は短い時は三〜四時間のこともある。風呂は普段はシャワーのみで、疲れて湯船につかれない。風呂や外気温で熱くなると首から汗をかきやすく、朝は鼻水が出やすい。食欲はあまりないが身体が持たないので食べている(肥ってないが体格がいい)。仕事で、食べたくないときに食べたり、冷たい飲み物を出されて飲むことも多い。初診時に手足は冷えていなかったが、二診以降その時により、膝が冷えていたり、足首や、手足が冷えているときとあった。普段は冷え性という自覚はあまりない様子。徒手検査は行わなかった。
 
【診断】お腹の冷えがあり胃腸の働きが悪い体質。飲食で冷えてさらに機能が悪くなっている。仕事が不規則で、移動時間が長く身体へ負担がかかっている。腰から足への血流が悪く、坐骨神経痛として痺れが出ている。また、瘀血もあると思われる。
【治療方針】お腹の冷えを温め、気血の停滞を動かし胃腸機能を活性化させる。腰から足への気血の還りをよくして坐骨神経痛としての痺れを改善させる。
【治療・経過】(寸三、二番使用)両孔最穴辺りが硬く反応があり切皮程度の鍼。左腕に鍼をするとお腹がぐるっと動く。気海、中脘に鍼と灸。気海の鍼でまたお腹が動き、少し楽になる。肩甲間部から腰部の圧痛の強い場所に鍼と灸。左大腿、下腿部を手掌圧迫。左足首を動かしてもらい右手に引き鍼。腰の圧痛の強い所にパイオネックス。左足裏の母趾側の痺れは少なくなり、小趾側が強くなる。お腹は楽になる。
 第二診(七月十日)〜第二十六診(十二月二十六日)略。
【考察】治療中に痺れが顕著になりその後薄れてきたりするので、血流がよくなると一時的に強くなるのではないか。観風先生の治験録で、痺れの治療で刺絡をしているのを読んで、邪を抜くイメージで刺絡をしたら顕著に痺れが取れることがあったが、痛くないようにとためらうとうまく切れず、その場であまり変わらないが、次の日に楽になることもあった。足裏には鍼はさせないと思っていたが、切皮程度でも刺したら効果があった。観風先生にお伺いした所、甲側から斜めに、あたらないように、足底の方まで刺すとよいとのことで試みた所、響きと同時に痺れが指先に強くなりその後、引き鍼などで薄れていった。
痺れは坐骨神経痛とお腹の冷え、瘀血による血行不良の影響かと思うが、治療後三日位は調子が良くて段々まだ戻ってくる。痺れ発症前の両鼠径部痛は仙腸関節障害などがあっての症状なのかとも思う。
お腹の張りは生活習慣が変わらないと難しいのかと思うが、腹巻をしたり白湯を持ち歩いて飲んだり、風呂につかるようになったりして最近は毎日お酒を少し飲めているとのことではある。
治療後はだるくなったりしてその後楽になると言われるが、陰証傾向で、疲労が回復する以上に働いているので、鍼数を少なくしたり、強く響かせすぎないようにして身体への負担を減らさなければと思う。

 

4 実技稽古

 

 各自がこの一ヶ月間取り組んだ課題を指導者の先生にみてもらい、実技の向上をはかります。

 

5 忘年会

 

 各テーブルに指導者の先生方が数名いらして、入門、初伝、中伝のグループがそのテーブルを回っていきます。

普段の月例会ではタイムスケジュールがあり余談などあまり出来ませんが、ここぞとばかり先生方に色々なことをお聞きすることができまた、先生方の多彩な一面も見せて頂きとても楽しい美味しい時間でした。

 

 

 

(文責 酒井)

 

 

 

 

| ◇東京月例会 | 12:16 | - | -
11月 月例会

あいにくの曇りですが、根津の七倉会館にて月例会が行われました。

 

1.静坐

坐禅、姿勢を整え、呼吸を整え、心を整えます。

 

 

2.講話

 石井 道観 先生

「万病一風論的治療の整形外科的疾患の応用」

 

 

症例を通して、どの様に整形外科的疾患に万病一風論的治療を応用するかの話がありました。

 

症例

「患者、50歳男性

主訴:左肩甲骨内側縁の鈍痛、左上肢の鈍痛

現病歴:2〜3日前に上をみながらクーラーの掃除を3時間した後から、主訴の症状が現れひどくなってきた。今のところ日常生活に大きな支障はないが、痛みが出ている部分には20年前からコリがあり今回と同じような事を繰り返していた。

所見:平脈、舌微薄苔

 腹診:下焦がやや柔らかい程度で特記すべきことはない。

 二便は正常、食欲あり、睡眠は毎日7時間ほど熟睡できている。

 ジャクソンテスト陽性、スパーリングテスト陽性

鍼灸院受診前に整形外科にて頚椎症性神経根症の診断を受けた。

既往歴:中学生のころに器械体操をしていてその練習中に高鉄棒から落下して頸椎捻挫をしたことがある。」

 

「このような患者が来院したときに何をイメージするか。

何をさらに聞くべきか。」

 

質疑応答があり以下のことをさらに聞き出しました。

 

「ジャクソンテスト、スパーリングテストでは頸から上肢にかけて痛みがでる。

今はじっといていても痛い。

痛みで夜、目が覚めることはない。

筋力低下なし。

皮膚感覚に低下はないが、左の母指と示指に違和感がある。

上を向くと痛みは強くなるがそれ以外に楽な姿勢はない。

自覚で熱感はない。

右利き。

仕事は接客業の会社員。」

 

このような患者は鍼灸院によくきますが、患者のイメージをつかめるかが大切です。イメージがつかめたら治療方針が定まって、その方針に従って治療を行うことができます。

 

参加者に患者のイメージ図を描いてもらい質疑応答が続きます。

 

患者のイメージ図というのは毒や邪が描いてあります。そこが原因となるので、邪毒がわかれば治療方針が立ちます。

 

万病一風論的治療では目に見えない身体に悪影響を及ぼす働きを邪といい、

目に見える実態で身体に悪影響を及ぼす働きを毒といいます。

 

この患者は頚椎症性神経根症という西洋医学的診断を受けています。第6頸椎か第7頸椎あたりで何かしらの影響を受けている可能性があります。

普段は神経が影響をうけるものがあったとしても、第0段階では身体の方が症状を出るのを抑えているので、症状は出ません。いわゆる鎮静化した毒の状態でいられます。しかし、身体に負担をかけることをしたので鎮静化した毒を刺激してしまって毒が騒ぎ出してしまった。その毒からでた邪が神経を刺激してしまって今回のような症状が出てしまったと考えられます。

 

整形外科的疾患でも万病一風論的にみると邪毒があるという考えを持つことが大事です。普段は鎮静化した毒があって、それが刺激されて毒が騒ぎ出してそこに炎症がおきて邪が発生して症状がでます。そのように考えれば邪毒に対する治療を行うことができます。整形外科的な鍼灸でも一見やることは一緒ですが、万病一風論的な考え方をすると、このように身体をイメージすることができます。腰椎のヘルニアでも、坐骨神経痛でも同じです。整形外科的疾患も万病一風論的に治療ができます。

 

純粋な整形外科的疾患ならこれでいいですが、純粋にこういう状態の患者は少なく、実際に診断してみると胸に心煩や心下痞硬があることもあります。もともと頸部に古傷があって今回のように上を向いて作業して悪化したのではなくて、過度なストレスが加わって今回のような症状が出た場合は純粋な整形外科的疾患としてみるのではなく、心煩や心下痞硬から今回の症状でているというイメージを持たないと治療は失敗します。

 

腹診にも所見があり、心下痞硬があり、胸にザワツキがあっても、今回の症例のように上を向いてから上肢が痛いという症状がでた転機を考えれば、どちらを優先して処置しればよいかという判断はついてきます。

 

むかし頸椎捻挫をしてその後遺症で瘀血が残っています。その瘀血を毒ととらえることができます。また、椎間孔も狭くなっていることも考えられます。目に見える実態というのを毒と広い意味で考えるのであれば、椎間孔が狭くなっているのも毒ととらえることもできます。

 

きっちりした答えはありません。100%正解の治療はありません。

正解かどうは治療をやってみてその患者がよくなったら正解、よくならなかったら不正解です。その時、どのようにしたらよかったのだろうと、その答えを考えられるようにするには自分の中で患者のイメージを持っていないとできません。患者の状態がこうだからこうしようしようとします。もしそれでダメだったら、患者の状態のとらえ方が間違っていたのか、こうすべきだったところを間違った方法でおこなったのかをつかんでいないと次のステップに行けません。

イメージをしっかりと持つことが大事です。

 

症状がでている原因となるイメージを描ければ治療方針が立ちます。治療方針が立てば治療ができます。治療というのはシンプルにやれればやれるだけ効果があります。

 

 

3.症例検討会

 中川 由紀 先生

「帯状疱疹、帯状疱疹後痺れ&痒み体験記」                    

 

 

【はじめに】鍼灸師であるならば、帯状疱疹の患者様や、帯状疱疹後神経痛の患者様に接することは多々あることだと思われる。そんな時何かの役に立つこともあるかもしれないので、私自身が経験した帯状疱疹について、病の経過や治療内容を報告する。

【患者】女性、四十四歳。鍼灸師。

【主訴】帯状疱疹(左顔面部)。帯状疱疹後の痺れ、痒み

【主訴以外の症状】左側頸部(リンパ節)が腫れて痛い。

【現病歴】

 8月中旬 飲み会が多かった。

 8月末  背中、首に筋肉痛的な痛みが有った。

 9月1日 のどが痛い。

 9月2日 歩き回って汗をかき、冷房で冷える。夜飲み会。

 9月4日以降は【経過・治療】参照

【既往歴】入院・手術なし。水疱瘡は4、5歳に罹患。

【増悪・軽快因子】

痛み:何をしていてもずっと痛い。ロキソニンを飲むと二0分後〜三時間程度は和らぐ。入浴時も少し和らぐ。

痺れ:刺絡すると改善。ある時期からは刺絡すると悪化し灸すると改善。入浴時改善。

痒み:布団に入るとかゆみ増大。歩いて五分位経つと増大。一度掻くと増大。入浴時改善。

【診察所見】(9月6日時点)

〈脈状〉やや弦。寸関尺は記憶なし。浮沈は中。左右差なし。

〈舌状〉見ていない。

〈腹状〉腹部:上脘、中脘固い。下焦冷え、軟弱。

 ※痛みが強い時はどうしても所見を取る気力が出ない。


【診断】帯状疱疹。体力の虚がベースにあり、三叉神経第一枝、表皮に炎症が起こった。越婢加朮湯証。

【治療方針・治療内容】西洋薬でウイルスの増殖を抑え、先急後緩で悪血を出す。休養を取る。痛みが強い時は消炎鎮痛剤で抑える。

【経過・治療】

9月4日 頭部の一点(「五処」辺り)がピリピリすることに気づく。継続して同じ所がピリピリするというのは初めて。

9月5日 ピリピリが更に増して少し痛い。

  (略)

10月5日 痺れ、痒みなし。

10月9日 目の奥が痛いような気がする時が二、三回あった。天柱、風池辺りに響くまで雀啄し、攅竹、糸竹空にお灸したら軽快。

 

【考察】帯状疱疹発症について考えてみると、9月1日頃、のどが痛く、風邪をひきそうな予感があった。その時邪に入られ、その前後飲食の不摂生があったため水毒増大し、虚証となり、免疫力が低下し、元々あった水痘ウイルスの毒性が増大したと考える。帯状疱疹の場合、一刻も早くウイルスの増殖を抑える薬を服用した方が予後が良いことは知っていたが、最初は痛みがそれ程無かった為、「せっかくの機会だし、鍼灸治療を行って様子を観察したい」と、皮膚科受診のタイミングが遅れてしまった。しかし、「合宿(9月16日)までには腫れを何とかしたい」との思いから積極的に刺絡を行ったことが、後の神経痛予防につながったと考える。また、痺れ、痒みを体験したことで、その辛さを身をもって実感できたことは良い経験だった。そして、痺れの治療に関して、悪血を出すことが効果的な場合と、修復を助けるために正気の虚を補うことが効果的な場合があるということがわかった。

 

 

4.実技

今月は初伝と中伝が組んで稽古しました。

  • 5.連絡事項

    来月は月例会の後、忘年会を行います。

    参加をご希望の方でお申し込みがまだの方はお早めに幹事の小池さんまでお願いいたします。

 

   文責:野田

| ◇東京月例会 | 21:52 | - | -
10月 東京月例会

少し前まですっきりしない天気が続いていましたが、本日は秋らしい晴天に恵まれました。先月は合宿だったため、二ヶ月ぶりに月例会が行われました。

 

1.静坐   坐禅、正座で呼吸、姿勢、心を整えます。



 


 

2.講話  三輪 圓観先生


 

 

 

患者さんとどのように関わるか。

 

それは、施術者の考え方によっても違いますし、患者さんの症状によっても異なります。これが正解不正解というものはありません。


今回、先生ご自身が経験している症例を元に、グループディスカッション形式で話し合いながら、各グループが発表する形で、講話が進んでいきました。




輪になってお互いの意見を出し合っていきます。

 

 

 

もし自分だったらどうするか。

 

 

 

サポートする時にどんな情報を知りたいか。

 

 

 

その情報を知った中でどう関わるか。

 

 

 

 

時には患者さんのご家族に重点を置くことも必要、必ずしも深く関わることが良いわけではない等、様々な観点から意見があり各自新たな気づきがあったと思います。

その中から何を選択するかは、施術者と患者さんの関係の中から選ばれるものですが、その中で、我々が現状で何ができるかを明確にすることも重要だと感じました。




 

3.症例検討会  森 勝先生







元気に外出できる様になった肩凝りの治療
               
【はじめに】
運動が嫌いで歩く事が苦手であった患者が、主訴の肩凝りが改善し元気に外出できる様になった症例。
【患者】五十三才 女性 身長 百六十五儖漫‐し痩せ型。
【個人歴】貿易会社に勤務していた。結婚(いつかは不明)後二児をもうけ、現在は主婦業の傍ら書道を教えている。紹介され来院した。
【初診日】平成三十年五月十五日
【主訴】特に最近悪化した訳では無いが、慢性的に特に右側の頚や肩が重く頚が動かし辛い。(頚の可動域は診察していない)
【現病歴】十代の頃から頚や肩が重く感じていた。頚が動かし辛い。
【随伴症状】喉に突っかかる感じが有り声がかすれて出し辛い。(診察の結果異状は無く病名は無い。発症時期不明)・側彎症(胸椎六番から九番までが右側に捻じれている)・胃下垂・下肢静脈瘤・足の冷え。
【既往歴】三月頃に食後や歩行時に動悸が出た。(心電図に少し乱れが有ったが病名は無かった、初診時動悸の訴えは無し。三月以前及び三月以降初診までの動悸の有無は問診せず)・中学三年に虫垂炎を手術。
【家族歴】父に不整脈が有った。
【診察所見】脈診/全体に柔かく細弱。右≻左。不整脈無し。舌診/大きさ色は普通・薄白苔と歯痕・静脈怒張無し。腹診/心下痞硬・小腹満・臍周辺冷たい・季肋部細絡有り・側腹部硬い・腹部の広範囲にガス。胸脇苦満無し。その他/頸椎前彎減少、細いスジが督脈の傍らに有る。胸椎一番から六番位までの傍側に細絡が有る。胸椎六番から九番位まで右側に捻じれ。問診/食欲普通・小便近い・大便普通・睡眠普通・閉経・足部冷たい・梅核気・精神症状無し。体質改善の為に(体質改善の内容・目的は問診せず)医師からサフラン、柴胡加竜骨牡蛎湯を処方してもらっている(現在の患者の状態に合っていないと考えた)。毎日水を二ℓ飲んでいる。(体に良いからとアドバイスされた為)。
【腹診図】

【診断】脈が細く弱い、舌に歯痕が有る、腹部の広範囲にガスが有る臍周辺の冷たさ等から、水毒により身体全体の気血の巡りが悪くなって肩こりが生じていると判断。陰症で虚証であると考えた。
【治療方針】初診は肩こりの局所を中心に項・肩のスジバリを弛める様に治療(局所に熱を持たせない様に少し早めに抜鍼。腹部には施術せず)。二診から四診までは咳の治療(腹部を補って温め表位の熱を取る)、五診以降は体質改善の治療(腹部を補い温め表位のスジバリを弛め体全体が温まる様にする)。寸六―三番ステンレス鍼使用。
【経過】
 第一診(平成三十年五月十五日)右手の肺経に引き、項・肩のスジバリを弛める様に刺鍼。大椎近辺の細絡に刺絡を加えた。左足部に津波鍼。
 第二診(五月二十二日)十六日は動悸(この時の動悸と以後起こる動悸は、三月に起こった動悸と関係が有ると考えた)がしてお腹が張り、おならがよく出た。二十日から咳が出て風邪と診断された。今日は少し喉がイガイガしているが肩こりは無い。五日間肩こりを感じ無かったがこんな事は十数年ぶりである。下腹部の張りが少し減った(気血の巡りが改善されおならが出た為と考えた)と本人が言う。私の触診では腹部の状態は初診時と余り変化無い。喉や項背は前回無かった熱が有る。脈は前回と同じだが右関上が一番強く少し浮。右心包経に引き、臍周辺は補い温め、心下は少し深く刺し補う。刺鍼後腹鳴。喉・項背は熱を瀉す。動悸予防の為左心包経に引き、左足部に津波鍼。
 第三診(五月二十八日)咳が少し出て喉がイガイガしている、風邪は改善している。肩こりが殆ど無く体調がとても良い。肌が白くなり眼が少し開く様になった。(気血の巡りが改善された為と考えた、眼の症状は訴えてい無かった)指圧に行かなくて済む様になった。体調が良くなり昨日三時間位歩いた。今朝少し動悸。治療は二診と同様。臍周辺に灸を加えた。心下は前回より柔らかい。                                 
第四診(六月五日)咳はほんの少し。肩こりがどんどん辛くなる事が無くなった、こんな事は今まで無かった。お菓子を控えてから体が軽い。海藻を食べ始め体が良くなる感じがする(体を冷やさない為食事指導)。運動が嫌いで歩く事が苦手だったが元気に歩ける様になった。前回の治療に頚椎の督脈の傍側に有る細いスジバリの刺鍼を加えた。
第五診(六月十一日)咳は治った。今まで外出する事が辛かった(外出が辛い事は初診時聞き取れ無かった)が外出できる様になり、階段を上り辛く感じていたが楽に上れる様になった。ライブを三時間半観てよく歩いたが平気だった。肩こりは今日少し感じるが大分楽である。
 第九診(七月十七日)昨日少し動悸が出た。実家に帰省し母の世話をしたが、以前の様に母と話をしていてもイライラし無くなった(普段の生活で病的にイライラする事は無い)。動いても疲れ難くなった。足の冷えは改善した。
 第十三診(八月十四日)動悸がした日が一日だけ有った。肩こりがどんどん辛くなり、下降線を辿ってゆく事が無い。喉の突っかかる感じが改善している。
 第十四診(八月二十一日)以前より汗をかく様になった(他人と比べて汗をかき難いと本人が言う)、小便が近いのは治った。
【考察】
 肩こりは改善したが、症状の有る局所と全身の関係、診断は陰症で虚症としたがその状態から何故肩こりが起こるのか等を余り考えなかったので今後は一歩前に進んだ考え方が出来る様にしたい。
目立った瞑眩は起き無かったが、以前よりも汗をかく様になったと言う事は汗の形で毒を排出する事が出来る様になったと推察した。
運動が嫌いで歩く事が苦手な患者が元気に外出し、長い時間・距離を歩く事が出来る様になった事は治療によって気血の巡りが改善された為と考えた。母と話してもイライラしなくなったと言う事だが、これも巡りが良くなり精神状態が改善されたと考えた。症例資料で読んだ事は有ったが自身の症例では余り無かったので良い経験となった。



 

4.実技タイム




各自、指導者の先生と課題を確認します。




今回もとても活気のあるものになりました。

 

 


来月は18日14:00から開催されます。

よろしくお願い致します。

 

(文責・尾崎)

| ◇東京月例会 | 07:09 | - | -
8月 東京月例会
今年は本当に暑い夏になっていますが、
関東はここ数日、秋のようなお天気。
少し過ごしやすく感じます。
さてさて、お盆休みも終わりの本日、
恒例、東京月例会が開催されました。


正座タイム



 



蝉時雨とエアコンの音をただただ追いかけ坐する。




講和 石部愚観先生



 



本日はわざわざ大阪から石部先生がいらしてくださりました。
そして、おもむろに白板へ…。波乱の予感。


まず広島の豪雨災害、災プロへの協力への感謝を述べられました。

石部先生は治療に関して「引き出しは多い方がよい」とのスタンスで、これまで
機関紙にて整体法、スパイラルテープ、刺絡療法、小児鍼、置鍼法などを書かれてきた
そうです。(10号、11号参照)寸6、3番の一本鍼に拘らず、
臨床においては、一寸02番から三寸10番までの鍼を使いこなすとのこと。
鍼以外のアプローチとして「患者さんと散歩をする」「一緒にお昼ご飯を食べる」
「手を握って患者さんの話を聞く」「患者さんを抱きしめて背中をとんとん叩く」
などを行っているとのことです。
上記の紹介と共に、患者さんに合わせるとは何か?を体験して欲しいそう。

患者さんにリラックスして話をしてもらうには?公園で話を聞く
治療院では話さなかった両親や別れたご主人の事などを話してきて
患者さんとの距離がぐっと近づいた。
また、一緒に時間を過ごすことを大切にする患者とはご飯を食べる。
胃弱の患者さんとは、一緒にご飯を食べに行き普通に食べれていること
を指摘して喜んでもらったり。
外出した方がよい鬱病の患者さんとは水族館へ行き、色々な個性の魚を例えに、
現状を受け入れて、機会があれば変われることもあるとつぶやいたり・・。
手を握ってひたすら話だけ聞いていただけの時があったり、抱きしめて背中を
とんとん叩いて治療(タッピング療法というそうだ。虐待や親に捨てられたりした
経験のある人に有効)したり。※セクハラに間違えられないように注意。
治療法に違和感を覚えたら伝えて下さいと言ってあるそう。
石部先生は今話してきたような事をすることを皆には勧めないそうで、カウンセラーでも
臨床とプライベートは分けるべきとあったりするそうなのですが、
先生は24時間365日、何かあれば連絡してきてくださいと、患者さんに伝えているそう。
そう言われたことが患者さんの安心につながるからだそう。
どちらが正しいとかではなく、各々が患者さんとの距離を感じながら
どのくらいプライベートに踏み込むかを決め、それに対してはブレないように、、
とおっしゃっていました。
ともあれ患者さんとの心の距離が分からなかったら何も出来ない。
患者さんを丸ごと受け取るとは何か考えてみよう!とのことで、ここからは
実技タイムとなりました。
初中伝と指導者に分けて二人一組に。

いつもの治療ポジションで相手の腹に手を置くのみ。
指導者は鍼を持たずして鍼をする。



次は鍼を持った感じで。初中伝者は違いに気づけてますか?



石部先生の得意技「背中トントン」をみんなで練習。
少し照れ笑いがある中で、自然にハグしている先生方が。。(笑)
下は石部先生のお手本(👏)





なかなか、誰しも実践出来る事ではありませんが、非常に面白いアプローチ!
初学者の方々はなんだろう?と思ったかもしれませんが、これが私たちが「いやしの道」と
いう名前の集団である所以です。
石部先生、貴重な講義をありがとうございました。



臨床検討会 堀 麻里 先生




「転倒後の長引く腰痛が仙腸関節刺鍼で改善」
患者は数年前から定期的に治療(腰痛のメンテナンス)している患者(77才 女性 やせ型)だそう。
昨年12月末に交差点で人にぶつかって横転、二日後に歩けない程の腰痛を発症。
レントゲンでは異常なしとのこと。
<主訴>右腰痛、右坐骨部痛、右恥骨部痛 (2017年12月25日初診)
<随伴症状・他疾患>骨粗しょう症、左下肢静脈瘤
<既往症>腰椎圧迫骨折(L2辺り 2010〜)うつ症状(2008〜2010)
※イライラ多く右季肋部はいつも熱い
<診察所見>座位以外の姿勢がつらく腹診と治療は座位にて行う。
脈状・弦浮やや数 右が強い 舌状・暗紅 微黄苔 腫れぼったい 右舌下静脈怒張
他・普段は快便だがやや便秘。痛みにより眠りは浅い。
<診断>右腰臀部打撲、衝撃による右恥骨部炎症と推測。痛みが出るまで二日かかったのは
筋肉痛のように年齢や体質により症状が出るまでに時間のかかるタイプと診た。
<治療方針>先急後緩で主訴部分に絞って治療。
<治療内容>熱感と邪を感じる右腰部、右坐骨部、右恥骨部に対して瀉法の散鍼と単刺で
邪と熱を取り、右太衝に引き鍼。
<経過>
・第一診 痛みの変化なし。脈状は、やや柔らかく。
・第二診〜四診(12/26、12/27、12/29)右恥骨部が一番痛む。恥骨部を中心に第一診と
同様に治療。施術直後の痛みの変化なし。四診目、熱感と邪が少し減る。ほぼ歩けない状態
から杖をつけば家事ができる。「寝たきりになったら…」と不安な様子。
・第五、六診(1/4、1/11)座位以外の姿勢で治療ができるようになる。足を着いた時の
ビーンと痛むのは減少、家での杖歩行が可能に。一番痛む右鼠蹊部をかばうせいか左股関節
周辺も痛む。右鼠蹊部中心に、右腰部坐骨部、左股関節周辺を単刺。左足へ引き鍼。
「杖なしで歩けなくなったら怖い」と弱気なので「最初に比べたらだいぶ早く歩けて
いますよ」と励ます。
・第七診(1/19)杖をついて近所まで外出可能。杖なしで数歩歩けるようになった。踏み込
んだ時、右恥骨部から鼠径部に痛みが走るが、腰部坐骨部の痛みは軽減。
・第八診(1/29)杖なしで当院まで歩けた(徒歩5分程)。踏み込み時の痛みはある。
前後屈、側屈痛の検査法(―)。右横臥位、仰臥位、長時間の伏臥位で腰が痛い。気温が低いせいか顔色が青白く脈状も弱く、便ややゆるめ。手足、腹部の冷えがひどく、腹部点灸、
手足に台座灸を加える。「以前のように早く歩けず安静にしているのがもどかしい」とのこと。
・第九診(2/5)踏み込み時の鼠径部痛が減少。昨日30分ほど歩き右腰をかばって体に力が
入り過ぎてどっと疲れた。手足、腹部の冷えに変化なく、ここ数日便がゆるい。陽池に
台座灸、気海、復溜に灸頭鍼。
・第十診(2/15)痛みの程度は前回と変わらずだが、電車に乗り、休んでいた趣味のパッチ
ワークに出かけられた。
・第十一、十二診 著変なし。
・第十三診(3/15)踏み込み時の痛みはなくなったが、右腰部、坐骨部に痛み再発。
右大腿部にもビリビリした痛みが走る。レントゲン検査で異常なし、坐骨神経痛と診断
される。立位で腰の運動痛はなく下肢感覚異常もない。右腰部に邪熱が最も強い。
パッチワーク作りを一日4時間以上、一か月間、座りっぱなしで作業したことが、
坐骨神経痛を誘発したとみた。右腰部、右坐骨部、右臀部、右大腿部に単刺。左足に
引き鍼。
・第十四診(3/23)パッチワークの時間を減らした。踏み込み時の痛み、ビリビリ感も減る。右腰の細絡に刺絡。右臀部、右大腿部に単刺。左足に引き鍼。
・第十五(4/3)踏み込み時の痛みがさらに減る。ニュートンテストを行ったところ、
陽性のため右仙腸関節裂隙に単刺。「すごく響く。この瞬間から腰痛やビリビリした
痛みがなくなった気がする」と患者。
これ以降主訴が劇的に改善。六月上旬にハワイに行ったが飛行機内でも腰を気にする
ことなく楽しめた。
<考察>横転時の腰痛と、第十三診以降の腰痛は性質が違うように感じる。前者は横転時の衝撃による外傷が原因で、後者は元々弱かった腰に外傷が加わり患者の日々の過ごし方
(根詰めて作業)により坐骨神経痛と仙腸関節障害を引き起こしたものと思われる。
第一診から第十四診は緩やかな改善しかなく、それが自分の診断や治療のせいなのか、
外傷の治癒していく過程や年齢により時間を要するものなのかが分からなかった。しかし
十五診時の劇的な変化を見ると、適切な診断と治療ができると年齢に関わらず効くもの
だとわかり、診立ての大切さを実感した症例である。仙腸関節障害がどの時点で起こっていたのか今となってはわからないが、もっと早く見つけていたら、より早い時点で改善して
いたかと思う。

堀麻里先生は今回初めての発表ということで、内容をまとめたり質問に答えたりと、大変であっただろうと思います。ただ沢山の先生方からご助言いただき、とても参考になったのではと思います。


実技タイム

申し訳ございません。指導に夢中?で、(あたふたしていて)写真を撮り忘れました(-_-;)
しかし、暑い中、集まった志あるもの達ばかりですから、白熱した実技風景であることは間違いありません。






上、最後の総礼時の写真。大所帯になってきました。

来月は合宿ですので七倉会館での例会はありません。
お間違えのないように。

(文責・伊藤)
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| ◇東京月例会 | 00:54 | - | -
7月 東京月例会

1.静坐
坐禅、正座で呼吸、姿勢、心を整えます。

 

2.講話  海野 流観先生
「鍼道発秘における表裏・深浅」

 

いやしの道の治療では、四部録(『万病一風論の提唱』『鍼道発秘』『傷寒論真髄』『経絡流注講義』)を基本として病を見ていきます。
海野先生は湘南研で講義を始めて18年になるそうですが、皆と勉強していくうちに、四部録それぞれが関連して、同じことを違う側面から表現しているところがあるとわかってきたそうです。
又、それは、各本の各章一つずつも同様で、『鍼道発秘』も42の治療法が書いてあるが、共通した考えがあるのだそうです。
以前、観風先生に「それぞれの文章の裏に書いてある、共通したところを読み取らなければ意味がない」と言われた時にはその意味がわからなかったが、経験を積んでいくうちに少しずつ全体像がわかってきたので、今日はそれについてお話したい。とのことで本日の講義が始まりました。

 

・『鍼道発秘』の眼目は「万病一邪」である。
では、邪の場所、動き、性質、如何に取り去るかについて、わかっていない人は治療はできないのか?
自分は「邪」がまだわかってないから良い治療ができないのでは…という不安を抱えた状態では、患者さんも不安になるし、治療効果も落ちてしまうことになります。
ある程度の治療はポイント、概要、大まかな法則が分かっていればできるので、どの段階にいる人も(ある程度)安心して治療をして欲しい。「鍼灸治療とは寒熱虚実のコントロールである」

 

・寒熱虚実のコントロールの柱となる刺法

1章【放心】(虚実に対する刺法)
放心の身体の状態は、下焦が虚して、気が上に上ってしまって、胸と表位に邪が実してしまい、その邪が頭の方に行き、突然精神状態がおかしくなってしまう、というもの。
治療は、胸と表位の邪を瀉し、下焦の虚を補う、ということ。1章には補瀉の一番シンプルな治療法が書かれている。


4章【大熱】(熱に対する刺法)
即刺則抜で早く多く刺す。術を施すエリアは後ろ。


5章【大寒】(寒に対する刺法)
深く久しく留める。肩背のこわばる所のスジバリに当てる。その後手足にビリビリくるほど強く引く。

 


海野先生は、四部録の他に『鍼灸真髄』(沢田流)や『名家灸選』(江戸後期の灸法の専門書)を読み、それらとも共通するところ、法則のようなものがあるのではないか…と考えてきたそうです。
そして、親試実験を繰り返していくうちに、だんだん、見えてきたそうです!
それは、「体のエリアによって、また、深さによって、作用が逆になる」ということ。

 

背中の場合は、深くやると温まり、浅くやると熱をとる。手足は、強く、深めにやると温まり、浅く引くと熱をとる。
・背中を深く、おなかを浅く、手足を深く→あたためる、機能を高める
・背中を浅く、おなかを深く、手足を浅く→熱・痛みをとる

 

☆とどめる、あたためる、機能を高めるという治療が必要な症状
下痢、嘔吐、不妊症

 

☆熱や痛みをとり去る、排出するという治療が必要な症状
便秘、難産

 

・自律神経作用
自律神経の調整という観点からも、エリアによって作用が逆になるということを実感している。

例えば井穴への引き針→人差し指と薬指で作用が逆
薬指の井穴に引き針→目がトロンと閉じてしまう
人差し指の井穴に引き針→目がパッチリ開く
同じような操作をしても、作用が逆となる。

 

・お灸の作用
鍼は、その刺激に「深浅」があり、お灸は知熱灸、多壮灸、打膿灸があり、それが鍼の「深浅」にあたると思われるが、
普通のお灸の刺激は表面の刺激であるので、『名家灸選』はお灸をするエリアで作用を組み立てているのでは?と仮説を立ててみて、各症状の治療法を確認していったそうです。

 

そうは言っても、より洗練された誤差の少ない治療をするには、やはり、気を感じ、邪気を頼りにする必要があります。
今回の講義で伝えたことは「洗練された治療への架け橋」と思ってください。とのことです。

 

海野先生の工夫されてきた過程を惜しみなくお話くださった、大変濃い講義でした。ありがとうございました!

 

 

3・症例検討会 伊藤 翠観先生


「月経(瘀血)と皮膚疾患の観察」

 

【はじめに】この症例は瘀血の排出を目標に続発無月経(二〇一七年一月〜)の治療をしたところ、主訴の皮膚紅斑が減退した例である。
「洗顔後、ひかない顔面発赤」という訴えに困惑するも、以前から諸先輩方から「瘀血と皮膚疾患」の発表がされており、わからないながらも治療のヒントをいただけて取り組めた症例である。
【初診日】二〇一七年七月十四日
【患者】女性 四〇歳 瘦せ型(一六〇cm 四二kg)
【主訴】洗顔後の皮膚紅斑。洗顔後、三時間ほど赤みが消えない。皮膚の乾燥。(症状は顔面のみ)
【現病歴】二〇一五年九月 肌乾燥強まる。背中、腹に湿疹。’一六年六月 肌さらに悪化。眉毛根本から赤み(顔に脂漏性皮膚炎)同年十二月 少し改善。’一七年二月 乾燥は改善。洗顔後の赤みはそのまま。同年六月 赤みは悪化。洗顔やシャワー後に顔面に赤みが生じ三時間ほど消えない。発赤がみられた部位は主に胃経、フェイスラインである。 
【随伴症状】・冷え性・肩凝り・ドライアイ・睡眠、途中覚醒あり(小用あり)・便通二、三日に一度・下肢浮腫 
月経不順(二〇一三年九月(体重三七kg)から。同年十一月〜から一年間ほど鍼灸施術(他院)を受け月経が再開するが、その後まばらに。二〇一七年一月の月経を最後に止まる。
【既往歴】特になし【増悪因子】乾燥 日焼け 石鹸
【その他】朝が弱く怠い。食事は玄米菜食。辛いもの、冷たいものが苦手。子供の頃からトンカツなど食べると胃が不調に。検診にて貧血傾向が指摘されている。知的好奇心が強い。不安神経症的な気質。
【個人歴】ご主人がアメリカ人であり、海外での居住歴(十年以上)が長い。また引越しも多く(十回以上)、海外、国内数か所を転々としている。二〇一四年七月に母親が死去。子供はいない。

【初診所見】側頚部は張り、硬い腹で内はガスで膨満している。後頭部と右季肋部と胸骨に沿って邪熱あり、膻中周辺に圧痛。心下悸。左下腹少腹急結。
脊柱起立筋は痩せてこわばる。手足はひどく冷えている感じではない。顔面艶がなく、くすみ、額は表皮が硬い。顔面に枕などが当ると容易に発赤してしまう。腹診にて異様に痛がる。
脈診/浮細弱 右がやや強め 舌診/紅 苔、薄く無に近い 舌下静脈怒張あり(腹診図参照)
【診断】元来、虚弱体質であり、長年にわたる海外での生活や頻繁な転居はストレスも多かったと思われる。生理不順が日常化していたさ中、今回の主訴につながる皮膚症状が出現。腹状からも瘀血の問題があることが考えられた。また顔面の発赤が胃経にそっていることから脾胃の関与が考えられた.物理的刺激(入浴、洗顔、化粧品の使用など)が契機となり胸中の邪熱が虚した経絡をつたい顔面に出現するのではないかと考えられた。
【治療方針】胸中や季肋部の邪熱をさばき、腹部の気を巡らせ水滞や瘀血の排出(月経を正常化する)をうながす。(「婦人の鍼」「肝症」の治療をイメージ)。

【治療及び経過】鍼 基本一番 寸三使用 全二十八回治療(継続中)。十月まで週一回。以降二、三週に一回ペースで治療。
初診(二〇一七年七月一四日)患者は臆病で触診にて痛がるので今回のみ〇一番鍼にてごく軽めに施術。(心包経、合谷によく引く。季肋部の邪熱を瀉す。気海、中脘、右スジバリ、左大巨他に刺鍼、腹をゆるめる。血海、三陰交に刺鍼。頸肩背中の邪熱を瀉して硬結をゆるめ、痞根、章門などを補す。(太衝辺りで津波鍼?))
第二診(七月二一日)腹のガスがよく出た。寝つきよく途中覚醒なし。前回より腹、背中が柔らかく触診も痛がらない。血海、三陰交に加え次髎などの仙骨上の反応点にも刺鍼。
第三診(七月二八日)頭痛の後、七月二三日、半年ぶりに生理がきて大量出血。熟睡できるが早朝覚醒もあった。入浴後、目が充血、長風呂であちこちに赤み出るが数時間後消褪。
第四診(八月四日)洗顔後の赤み低下。日中痒みが出る。朝方トイレに行かず熟睡できた。毎日便通あり。自宅施灸開始(膈、肝、脾兪、次髎、三陰交、足三里、大巨、中脘)。
(刺激後の赤みはすぐ消える傾向に。八月一二日以降痒みが増悪。口周り、顎の赤み残る。一四日〜胸痛(PMS症状)、帯下多くなる。)
第七診(八月二五日)便秘気味。腰が重い。早朝覚醒あり。嗜眠。眉毛、ほうれい線、顎、フェイスラインに赤みと痒み。木のうろのようなカサブタがある。脈・沈
(八月二八日に月経開始。九月中旬まで赤みと痒みが増悪。冷たいタオルをあて紛らわす。ドライアイ右が辛い。血液の混ざる帯下。過食傾向。※自覚できる変化/汗がかける/熟睡できる/体重増加。)
第十一診(九月二二日)入浴後の赤みが低下。ほうれい線のカサブタがとれて正常な皮膚が出現。胸に違和感(PMS症状)。
(十月二日に月経開始。経血量多め。血塊混ざる。怠さ痛みなし。)
第十四診(十月八日)〜第十五診(十月二十日)便秘。肩関節水平挙上時に痛みあり。風邪ぽいが熱はない。ふわっとする眩暈がした。運動時に痛めたのか左頸部、右肩甲間部に痛みあり。
(第十八診まで前述の運動器疾患が残る。一一月六日月経開始)
第十八診(十一月十七日)肌全体的に艶。顔色良好。手足冷える。
(十二月二二日に月経開始。血塊混ざる。痛みあり。)
※冷え傾向出始めたため冬季は「大寒」の治療を加える。
第二十一診(‘一八年一月一二日)肌荒れないが額こめかみに痒みあり。睡眠の質悪く多夢。鳩尾が痛くて覚醒。食後、腹部の不快感あり。「日本は寒い」と話す。脈・浮、やや緊 舌診・白舌、舌先紅
(尿意で途中覚醒あり。目の痛みあり。肩関節痛あり。治療開始時より五kg体重増加。二月三日に月経開始)
第二十三診(三月二日)頭痛あり風邪のようだった。目の下に青いくまが出現。手指末端が紫色。化粧品を試すせいか、顔の赤みが再発、数時間から一日中消えないこともあり。二月十四日より仕事を開始。生活リズムが崩れ、職場環境にも、かなりストレスを感じている。
(四月七日に月経開始。出血量少め。四月下旬まで、目下に青いくま、手足の冷え、多夢、途中覚醒、便通二、三日に一度など低調な状態。)
第二十七診(五月十八日)目の下のくま、少し改善。顔面、パウダーが粉うきしている(ビニール肌というのだそう※後述)。かわらずスキンケアの際、眉毛や目の下に赤み出現。すぐ消えることも3日残ることもある。仕事のストレスも変化なし。
(六月十二日に月経開始。婦人科未受診。)

【考察】
月経が再開すると皮膚の乾燥と発赤は出にくく、随伴症状の睡眠、便通、下肢浮腫も改善がみられた。
治療開始一カ月を過ぎるとを顔面に痒みが出始め、さらに一カ月を過ぎると顔面から粉をふくかのように皮膚が剥がれ落ち始めた。
月経も回を重ねるとPMS症状が顕著になり、冬季に入ると体調不良、運動器疾患も見られ、皮膚の回復が停滞。
僅かだが未だに赤みは出現する。皮膚の回復がみられ月経が整い始めたため治療間隔をあけたが、冬季の寒冷刺激が加わった上に予期せぬ仕事の開始でストレスが増え、月経周期が大幅に遅延(約三五日から直近約七十日)して主訴が治りきらない状況を作ったと思われる。
先々、身体がどう変転するか、もっと想像して対処するべきだった。発赤に加え、さらに皮膚が薄い(ビニール肌)状態となっており、脾胃虚弱(による栄養摂取障害?鉄など)や菜食傾向(タンパク質不足)などの影響も考えられた。
患者は神経質、依存的、頑固な気質であり、精神的ストレスが体に対する影響は大きいが、自覚的でないと思われる。今まで呼吸法、内観、思考を切る事など助言してきたが、余り当人には響いていないよう。
この「みえざる一鍼」が出来なければ、本当の完治には至らない気がしている。

 

《参考資料》
○機関紙 いやしの道(第八号)女性の皮膚疾患 安田無観先生
○鍼道発秘講義
「婦人の鍼」
孕める時は、合谷、三陰交を忌むべし。石門を多く刺せば、孕むこと無し。余は、男におなじ。
「肝症」
すべて気の滞りより生ず。或は熱し、或は寒し、手足痺れ、筋引きつり、其の甚だしきに至っては、気迫って、物言う事能わぬなり。項、肩、背の内を多く刺して、気を漏らし、後、痞根、章門を深く刺し、手足に強く引くべし。皆、員利鍼を以てすべし。中脘、粱門、気海、毫鍼にて気を治むべし。   
「大寒」
是れは其の鍼を深くして、久しく留むべし。肩背中の強張る所を、多く刺して、その気をめぐらし、後、手足を員利鍼にて、強く刺すべし。立ち所に暖まるなり。

○漢方用語大辞典
○漢方養生談 皮膚掻痒症157p
○病気がみえる「婦人科・乳腺外科」より
・無月経・標準体重の八五%以下で起きて来る。
・続発無月経の原因としては、視床下部性が大半である。

※ビニール肌↓医学的名称ではないそうだが「角層が薄くなって肌理のない、ビニールのようにつるつるになったごく薄い肌」とのこと。肌バリアが崩壊し、肌トラブルを起こしやすい。通常は過剰なスキンケアでなる。肌のターンオーバーの乱れ、新陳代謝が早すぎて角質細胞が育ちきらず未熟な状態。

 

治療の方法や技術だけではなく、患者さんと治療者の信頼関係や距離感など、大事なことを考える機会となり、大変勉強になりました。
 

4・実技稽古
今月は初伝と中伝が組んで稽古しました。

 

5・連絡事項
・合宿の申込期限は7月29日です。是非お早目にお申込みください!

・当協会の副会長である三輪先生が代表を務める「災害 鍼灸マッサージ プロジェクト」が平成30年7月豪雨の支援活動を広島県で始められました。
詳しくはホームページ(https://sinkyu-sos.jimdo.com/)をご覧ください。


(文責:中川)

| ◇東京月例会 | 12:29 | - | -
6月 東京月例会

1.静坐
坐禅、正座で呼吸、姿勢、心を整えます。

 

2.講話  池内 毘観先生
「鍉鍼による私の気の感得方法」

 

 

池内先生は、以前は現代医学的な鍼灸を実践されていたそうですが、目に見える臓器や組織を対象にした鍼灸では色々な検査ができ、手術もできるお医者さんにはかなわないのではないか…と思うところがあり、目に見えない「気」を感得し、扱えるようになりたいという思いを強く持つようになって、いやしの道協会にいらっしゃったそうです。

皆さんも実技の時間などで、「邪気がわかるようになりたい」とか「響きがわかるようになりたい」とか「気」に関するところに興味が集まっているように思うと池内先生はおっしゃいます。
そして、いやしの道協会では、「気」を感得できるようになるよう、実技のチェックシートにも色々な項目があります。
・気がいたることを感得できるか
・鍼先から気が体の隅々まで広がるか
・鍼先から気が外へ広がるか
・鍼先から気が無限に広がるか
など

 

観風先生の著書『万病一風論の提唱』には「気」についてどう書いてあるかと言うと、「気」とは「目に見えない働き」とあります。
真気:臓器、血管、神経、組織などの諸器官を正常に機能させるはたらき
邪気:臓器、血管、神経、組織などの諸器官を異常に機能させるはたらき

そして、池内先生は、いやしの道の機関誌(17号)にも書いておられる通り、東日本大震災の後にボランティアで一日に二十人ほどの治療を「鍉鍼のみ」で治療した経験が、気の存在を確固たるものとして肚落ちさせるきっかけとなったそうです。

体内に刺入することなく、ツボをギュウギュウ押すわけでもない、侵害刺激ではない「鍉鍼」での治療で効果が出ていることについて自分自身で確認するために、一人二役(治療者と患者)を演じ、鍉鍼でセルフケアをしてみることにしてみたのだそうです。

そのためにまず、鍉鍼の出来上がりイメージをスケッチした図を持って、御徒町の金物屋さんに赴き、金の鍉鍼、銀の鍉鍼を格安で準備されたとか。

 

 

セルフケアの具体例
下腹部の関元あたりのペコペコに虚したところに金の鍉鍼を当てておく
(治療者として)冷え→温まってくる
(患者として)頭の熱が取れ涼しくなってくる、翌日の疲れが全然違う

 

鍉鍼でのセルフケアの実演

 

画家のピカソを例にされ、毫鍼を扱えてこその鍉鍼だ。というお話が印象深かったです。
又、逆に、普段毫鍼を扱う際も、物理刺激としてでなく、気を扱っているという意識を強く持つ必要があるのだなと思いました。

 

 

3・症例検討会 木村 克彦先生
「高齢不妊治療」

 

【はじめに】平成29年2月より肩こり腰痛で治療していた患者さんの不妊治療症例です。未だ妊娠にはいたっていません。
初めての不妊治療であることや患者さんが高齢で時間がかかるとさらに妊娠が難しくなることから、今後の治療に関して皆様のご意見、ご助言を頂きたく発表いたします。

 

【患者】44歳 身長161cm 体重 49kg 色白細身 事務職
【初診】平成29年11月12日
【主訴】不妊
【現病歴】
平成26年5月 結婚。
平成27年5月 婦人科通院始める(排卵誘発剤使用)。タイミング法は行わず、人工授精を二か月行う。その後体外受精を六回行う。採卵するが空胞が多く、移植にはいたらず。移植一回のみ。
平成28年12月 漢方専門医院受診。その後、月一回定期的に通院。臍下硬さが顕著とのことで当帰四逆湯・折衝湯・八味地黄湯服薬を始める。
平成29年2月 婦人科変更(排卵誘発剤使用)。体外受精を六回行う。卵胞は採取できるが分割が悪く移植までいたらないことが多かった。移植は二回。
平成30年1月 婦人科変更。血液検査の結果、甲状腺機能が数値は正常範囲内だが、高めのため服薬をはじめる。
平成30年4月 当帰芍薬散に変方。舌下動脈怒張は減り、生理痛は楽になっている。*漢方薬服用前と比較して

【既往歴】子宮筋腫
【随伴症状】肩こり、腰重
【その他】月経周期 不順、長めのことが多い。

【診察所見】脈:沈弱 右〉左 
舌:薄白苔 歯痕ややあり 舌先紅  
腹診:胸 熱あり 左季肋部・季肋下硬い 左右下焦奥冷え 下焦虚冷え 腰殿仙骨 硬い(右〉左) 
足先冷
小便 一日に五、六回(黄色) 
大便 一日に一、二回(軟便)

【診断】下焦の寒による女子胞の機能低下。

【治療方針】よい卵子が採取できるようように卵巣機能を高めることや着床しやすいように子宮機能を高めることを目的に下焦の冷えを取り気血のめぐりをよくする。
【治療】下腹部 三、四か所補法。冷えなどの反応が強い部位に深めに刺鍼時間を長めにする。
左下焦の気血のめぐりを促進するために、左季肋部と季肋下を緩める。バネ式提鍼使用。 
下焦への気血のめぐりを促進目的に両仙骨腰部を緩める。 三陰交・補。 合谷・寫。

【治療経過】寸六一番使用 バネ式提針使用
初診 11月12日 
第二診 11月23日 下焦中央硬さあり。 *右下焦邪あり。 左下焦冷えなし。 仕事ストレス増える。 11月18日採卵。
第三診 12月16日 *下焦右圧痛あり。 *左腹直筋硬さあり。 左腹直筋刺鍼部位追加。前日採卵。
第四五六診 左下焦冷えなし。
第七診 1月26日 *右下焦圧痛あり。 *左下焦冷えなし。 1月17日採卵。
第八診 2月3日  月経五日目。 下焦中央と左の冷え。 下焦右圧痛あり。 *病院を変える。
第九診 2月10日 排卵直前。 *下焦中央及び右奥硬と圧痛。
第一〇診 2月17日 排卵なし。 下焦中央冷えあり。 *下焦左右圧痛あり。 右奥硬さあり。*右腹奥スジを緩めるような手技追加(スジにあてるか反応のある深さで微雀琢)。 
第一一診 3月10日 排卵なし。 *下焦中央虚あり。*下焦左右に邪あり。 *年度末の為、仕事によるストレスが増える。帰宅時間が遅くなる。
第一二診 3月17日 月経二日目 下焦中央冷えがいつもより少ない。*月経周期を意識(『機関誌第十五号』五四一ページ越籐先生症例参考に*古血排出意識(杉山真伝流「推指菅術」使用)
第一三診 4月8日 下焦中央右冷え *下焦右奥圧痛あり。 3月31日排卵後4月2日子宮内膜の厚さが足りなかった為移植はせず。

【考察】今回は長年の生活様式(ストレスの多い仕事・長時間の椅子での座位など)や体質によって下焦が虚して、卵巣や子宮の機能低下しているものと推測される。虚しているために、寒や邪、ストレスの影響をうけやすいという悪循環に陥っていると考えた。また、右側は周りが全体的(腰殿部・大腰筋)に硬いことや左側は季肋部・腹直筋が硬いことも気血がめぐらない原因となる。採卵後全身の筋緊張が高まることから女子胞にも影響を与えていると思われる。
今回女子胞の毒は漢方薬により排出されていると考え、今までは考慮していなかった。しかし、子宮筋腫がありいつも冷えている部位と関連しているようである。
治療は始めは下腹部を中心に施術。効果が感じられなかったため、他部位(左季肋部・季肋下や腹直筋や腰仙骨部)や月経周期を意識して行った。はじめより下腹部の温まりを実感できるようになった。しかし、工夫が足りず妊娠に至っていない。その原因とし下焦の虚、血毒や月経不順への考慮が足りなかったものと考える。さらに、局所的な冷えにとらわれ全体がみえていなかった。また、部品としての臓器にとらわれ気の流れを意識できていなかった。
全身的に上焦や四肢を使い、下焦の状態を改善すること、下焦の虚や月経不順の原因になりうる要素に対する生活指導や自宅施灸などを行う必要がある。
 

4・実技稽古
今月は中伝同士、初伝同士での稽古です。

 

 

 

5・連絡事項


・合宿の告知がありました。
(http://blog.iyashinomichikyokai.com/)
是非、是非、ご参加ください!

 

(文責:中川)

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