いやしの道協会ブログ

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10月 東京月例会

1.静坐

坐禅、姿勢を整え、呼吸を整え、心を整えます。

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2.講話

 石井 道観 先生

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万病一風的治療の中には邪や毒というものが出てくる。邪のわからない人は結構いるが、邪がわからいと万病一風論的な治療ができないかというとそうではない。最初は邪がわからない。わからないヒトは頭を使う。「学・術・道 三位一体」といやしの道協会ではいう。

「道」はそのひとの境涯を深めていくこと。各自で努力してもらう。

「学」と「術」も各自で努力してもらうが、「術」の部分で邪がわかるヒトとわからないヒトとでは少し差が出てくる。でも。それを補うのは「学」である。

四部録が富士山図の底辺の重要なところになるが、いやしの道協会ではほかにも学ばなければならないことがある。そういうものを一生懸命学んで、四部録をベースにして、

傷寒論にもでてくるように患者の状態をイメージする。邪毒が手で触ってよくわからなくても、脈診・腹診・問診をすれば患者の邪毒がどの辺あってどういう悪さをしているかいうのがイメージできるようになる。そのイメージを作れるようになってほしい。

 

万病一風論では全くの健康状態は「無」。そこから変異すると「風」が起きる。「風」とは「寒」、「熱」の状態で見ることができる。その「寒」と「熱」の下に「邪」と「毒」がある。ということは「寒」と「熱」を見ていけば理解できるはず。患者の身体を基本の型にのっとって診察していけば患者の寒と熱のあり様はわかる。

「虚」と「実」もさわれば硬いのか柔らかいのかわかる。硬いのか柔らかいのは、温かいのか冷たいのかそれを触って確認して、それを頭の中で四部録に照らし合わせて患者の状態をイメージしていけるようになる。イメージさえできればあとは、冷えているものは温まるように、熱いものは冷めるように、虚しているところは充実するように、実しているところはその実を弱めるように鍼をしていけばいい。

 

次に問題になるのは実際に鍼を刺すときに、邪がわからいとできないのかということ。

邪がわからなくても、最初は物理的な感覚でできる。鍼を刺していって硬いものに当たったらそれが柔らかくなるように、虚していてズブズブのところは雀琢、撚鍼を繰り返しながらそこが充実してくるようにやっていけば、物理的な刺激で手の内をきちんとしていけば患者の身体は変わっていく。

実際の患者の治療をしているときにいちいち患者に響きましたかと聞くのは難しいので、このような月例会の場で、実技を指導者に教えてもらう時に、患者役のヒトに自分の物理的な感覚がどのように響いているかというのは聞けば教えてくれる。実際に自分の手の内がどうなっているのか、正しいのか、正しくないのかを自分で磨きながらやっていけば手の内もだんだん入ってくる。それを繰り返しながら、診察するときや鍼をするときでも、単なる物理的な寒熱や強い弱いや硬い柔らかいを感じ取っているだけではなく、その時にそれ以外で何か感じるのかを、心を砕いて意識してやっていくとだんだんと邪というのを感じられるようになってくる。

ただ、足が速いひとと遅い人がいるように、邪に敏感な人もいれば、鈍感な人もいる。100mを15秒でしか走れない人が、9秒台で走れる人に追いつけるかというとそれはない。鈍感な人は敏感な人に比べればいつまでたっても鈍感。でも感じられるかということが大事なので、邪が少しでもそのヒト本人のとらえ方で感じられるようになれば臨床が変わってくると思うので、そこはあきらめずにやってほしい。

この中で、寒と熱、虚と実と分けたが、これは間違ってほしくないのは絶対的な寒や絶対的な熱ではなく、そのヒトの身体を触っていったとき、こことここを比べるとこっちの方が冷たい、こっちのほうが熱いという相対的なものなので、比べてみてどうかということで判断していってほしい。

 

最初は物理的な感覚を指標にやっていた。たぶん10年くらいは邪毒がわからなかったと思う。正直に言うと、触った時の邪に関してはいまでもほぼわからない。ただ、胸の邪とか心煩とかはわかる。お腹に関していうと、今でも少し心もとない。

ただ、そんな中で初めて、「あ、これがそうなのかな」ってわかり始めたのは手で触っている時じゃなくて鍼を刺している時。これもヒトによって違うと思うけど、本当は押手で感じるのがいい。押手で患者の気の状態がどうなっているのかっていうのを、変化がわかるのが一番いい。私は一生懸命やっていくうちに刺し手の方で感じた。先輩に確認してもらいながら、観風先生に確認してもらいながら、段々と常に感じられるようになった。今はこっち(押手)でも少しわかるようになってきた。でもそれは不思議と私の場合は、鍼をするとわかる。鍼をしないときはほぼわからない。

それでどうするかというと、さっきの患者のイメージ。この患者の毒がきっとこの辺にあるだろう、それによって邪がこの辺にも来ているだろう。それで患者の症状がきっと出ているのだろうという判断をして、鍼をする。実際に鍼をしてみて、邪を感じれば「ああ、あっているな」。そしてその邪が少なくなり、症状が緩和されればそれで間違いなかった。逆に言うと、刺して手ごたえがなければ、このイメージ自体が間違っていた。だからもう一回やり直さないといけない。それを繰り返しやっていけが精度は上がっていく。

 

私が観風先生のところに入って一番いいなと思えたのは、邪毒に関していっているところではなくて、西洋医学も東洋医学もどちらも万病一風論で説明できるというところに一番惹かれた。これだったら西洋医学のことも説明がつく。自分のなかで消化して一緒にやっていけると思った。

あとはやるしかない。よく言っていたのは、「背水の陣でやるしかない。この後はない。」という覚悟を持てるかどうか。その覚悟を持つというのはツラい。ツラいけれどもそれがあったから、ここまでこられた。そんな覚悟なんかなくて続けていって手の内を覚えていけるのが、ホントは一番ハッピーだと思う。けど、なかなかできない。

それぞれの人生、各々の人生の中で持つ覚悟というのはきっとあると思うので、その覚悟をどれだけ持てるかということだと思いう。

 

 

3.症例検討会

木村克彦 先生

「不整脈に対する鍼灸治療の試み」

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【はじめに】今年五月の定期健康診断で経過観察が続いていた不整脈が、要検査になったことで鍼灸による治療を開始した患者の経過を報告し考察をする。元々あった腰痛や肩関節に対する治療を並行して行った。

 

【患者像】六十代。主訴は不整脈。若い頃から右脚ブロックがあり、健康診断で引っかかることがあったが経過観察で済んでいた。今年の検診では脈が飛ぶ回数が増えた為、要検査となった。日常生活に支障はない。肩関節の疲れと痛み、腰痛の随伴症状がある。

【切診】脈:右>左、太く強めやや数。一分間に数回、脈が飛ぶ。間隔は不規則。 

【望診】舌:舌先紅、微黄苔。

【腹診】胸部の熱が強い、季肋部・心下部・腹直筋硬い、下焦の虚。

【候背診】肩甲間部に熱感がある。

【診断】季肋部のつまりにより胸に気血が滞り、下焦の虚からの上衝と相まって胸部の熱が強まり心臓の誤作動になった。

【治療方針】胸背部の熱をとる。腹状の改善をさせる。

【治療】寸六三番使用。心包経引き鍼。下焦の虚を補う。腹直筋・両季肋部の硬さに雀啄と撚鍼。胸・肩甲間部の熱を瀉すため散鍼。心包経引き鍼。

※上記の治療を基本としてその後に、適宜肩関節痛、腰痛の治療を加えた。

【まとめ】患者の症状の変化は、脈の飛び方やリズムの変化、患者の自動血圧計測定時のエラーを指標に観察した。

〇腹診時に硬さでみていたことが、今回の治療の迷走に繋がった。虚実寒熱毒邪で観れていれば、初期の段階でシンプルに整理できたと思われる。上腹部と胸部の関連を季肋部の痞えによる胸部の気血の滞りと捉えていたが、胸部の熱が波及して季肋部・心下部に影響していると途中から捉え治し施術した。しかし、胸部の熱以外の腹状は一定のパターンがないように見えるため、胸部の熱とその他の腹症との関連性は不明である。第五診の腹状から推測すると二連休後に胸部以外の腹状では顕著なものがみられないことから、仕事中の姿勢も影響していると考えられる。

〇今後、胸部の熱量とその他の腹症との関連性や腹部の寒の存在、肩関節と腰痛との関連性を観察していきたい。

 

 

4.実技稽古

今月は新しく入会された方も多く参加されました。

(文責:野田)

| ◇東京月例会 | 22:22 | - | -
8月 東京月例会

暑さの続く東京ですが、月例会が今月も七倉会館で行われました。


1. 静坐


2. 山野鵬観先生による講話

理学療法士である山野先生から体幹への効果的で安全なストレッチをご指導頂きました。

内転筋、骨盤底筋、腹横筋などに無理なく負荷をかけ高齢の方にもその方に合わせた効果を出す方法を教えて頂きました。

上虚下実のために必要なトレーニングにもなり、毎日の積み重ねとして取り入れたい内容となっていました。


3. 症例検討会

伊藤翠観先生による潰瘍性大腸炎の治療の症例を発表頂きました。


自己免疫疾患の方への治療は【胸中の邪】【腹中の虚寒】【女性の場合瘀血】に注目していくとのことでした。

今回の事例では胸中の邪があまり感じられないということでしたが発症時期が12年前であり当時はあっても今はないことが考えられるということでした。同じ病気でも病期により邪の表れ方が異なることが勉強になりました。

ストレスの有無の問診ひとつにしても詳細な情報収集の大切さがある反面どこまで切り込むかの難しさを感じました。

そして患者さん自身の病識の自覚と養生指導も大切で大事な治療であることを学びました。


4.実技稽古



来月はいよいよ合宿となります。

皆様体調に気をつけて元気でお会いしましょう。


月例会では横田観風先生の『鍼と禅』が購入出来ました。

大切に拝読します。


(文責 福永)


| ◇東京月例会 | 20:33 | - | -
6月 東京月例会

6月16日、梅雨とは言えカラリとさわやかな暑さの中、根津の七倉会館にて東京月例会が行われました。

1.静坐

 身息心の調和。息を整えて静かに坐ります。

 

2.講話  堀雅観先生
 「短時間で最大効果をだすための工夫(二)〜学術道、それぞれの重要性〜」について

 

今回の堀先生の講話は、三年前に同じテーマでお話下さったもの(詳細は機関誌17号を参照)の続編です。
前回のお話から三年を経て、「最近はこういうことを考え、行じている」というところをお話下さいました。

・短時間治療の意義
  治療は「最大効果を出す」ことが目標となるが、経験的に、長時間やればやるほど効果が出たということはなく、余計なことをしないことの方が大事だと感じていた。
  今現在、平均20分で治療を行っていて、その為の工夫を皆さんにシェアしようという意図で今回の講話を行って下さいました。

・治療方針の工夫
  初伝→中伝→指導者とそれぞれの段階で、四部録、機関誌を読み込んでいくにつれ、理解が深まっていき、観風先生がよくおっしゃる「悪いところを治療すればいいんだ」とはこういうことかと腑に落ちたそうです。

・手の内の工夫
  診断、治療全てのベースとなる「気」を感得することがやはり重要である。治療をするのは生きたツボだけ。

・心の工夫
  「これで良いのか?」と迷いながらの治療では、良い治療は実現できない。
  治療者が安心の状態にあるとそれだけで患者は癒される。不安も安心もその波動は伝わる。

 

 

・インドでの治療経験
2019/1/31〜2/11にインドに行かれた際の治療経験をお話くださいました。
詳しくは堀先生のFacebookのインド旅行記をご参照ください。
(https://www.facebook.com/hori.masafumi.5)


いやしの道の教えを学んで「なるほど!その通りだ!」と思っても、いざ実際やってみようと思うとできない…ということについて、堀先生がどの様に考え、一つ一つ探求されてきたかということの一端をお聞きすることができて、こうやって自分自身で学び掴んでいくものなのだと大変勉強になりました。

 

 

3.臨床検討会  池内毘観先生
 「顔面神経麻痺の一症例」

 

 

顔面神経麻痺の患者さんを発症初期から集中的に治療する機会に恵まれた。
この患者さんは、毒と感じるところが沢山あり、どこに手を付けてよいか迷う方であった。
今までは悪そうなところをなんとなく全部治療してしまうということがあったが、最近は段階的に計画的に治療するということを課題にしていて、今必要な最小限の治療をすることを心掛けている。

【患者】六五歳 男性  身長一五九僉‖僚渡燦洵圈
【初診日】二〇一九年四月三日
【主訴】右目瞬きができない。口からものがこぼれる。右口角周辺のしびれ
【その他の症状】肩こり 右目の乾き 頭皮の張り感 
【現病歴】二〇一九年三月一七日。朝、歯磨きをする時に、口から水がしたたり落ち、さらに翌日の朝、鏡を見ると、顔の右側が歪んでいる事に気がつく。三月二〇日病院を受診。そのまま入院。顔面神経麻痺と診断され(中枢性及びハント症候群の可能性は否定)二週間入院。入院中は、ステロイドによる治療を三クール行うが変化なし(四〇点検査法:初診時四点退院時六点)。退院した翌日の四月三日。鍼灸治療を希望して当院を受診。二〇一八年一一月、職場解雇の話があり、二〇一九年一月解雇が決定し心身ともにストレスを抱えている。二〇一九年一月右上の歯を二本下の歯を一本抜歯し、その後、化膿が治まらないため、歯茎の処置を三ヶ月間継続中であったが、顔面神経麻痺が発症したため、一度歯の治療を中断。その他、顔面神経麻痺が起る二週間前、右の耳の中でゴリゴリするような音があったとのこと。

【既往歴】レックリングハウゼン病(今まで腫瘍を四〇〇個以上切除) 二〇〇九年胆石の手術(後、二〇一八年の盲腸手術時に器具の置き忘れが発覚。)
二〇一八年一二月盲腸の手術。 

【服用薬】ビタミン剤 血流をよくする薬(薬の名前は不明)

【緩解因子】よく寝れた後は顔がスッキリする

【増悪因子】精神的ストレス(持病、容姿のためか被害者意識がやや強い。)

【診察所見】脈診 寸は浮取 関上は中取 尺中は沈取でそれぞれ最も強く触れる。全体的に脈は右が強く触れ右寸口が最も強い。舌診 質:紅舌 瘀血(舌体赤みの中に、暗さが有り、舌下静脈やや怒張)歯根あり。舌苔:白苔
腹診:胸部表面はさほど熱を感じないが、しばらく手を置いていると徐々に熱感を感じることから、深部に熱があると判断。腹部は、全体的にポッチャリとしており、最終には冷えを感じる。心下には冷えと少し膨らみを感じ、盲腸の手術跡周辺は固くその少し上にモワモワとした邪を感じる。臍の両側深くに抵抗がある。
睡眠:平均六時間。不思議な夢をよく見る。(盲腸の手術をしてからは大分減った)時々熟睡感なし。 
二便:大便:一日一回バナナ状(入院していた二週間は便秘気味であった) 小便:夜間尿一回

 

 

【診断と治療方針】
 職場解雇のストレスや長期的な歯の治療といった出来事が邪を迎え入れる環境を作り、邪が内攻、顔面神経に到達し主訴を引き起こしたと考えた(第三段階)。その他、胸部の沈静化していた毒に同じく、ストレスや、歯の治療を機に邪が届き「内から外へ」新たな邪が発せられている可能性も念頭に置きながら、まずは表位の邪毒に対して治療を行う。

【治療経過】
《初診・二〇一九年四月三日》右手の合谷に少し時間をかけて引く、右顔面部周辺に散針。項と肩胛間部の筋に単刺。以後四診まで同じ治療を続ける。
《第二診四月五日》第一診後、「『目の開きが少し良くなったね』と妻に言われた!」との報告をうける。治療直後肩が少し重い気がしたが翌日には逆に軽くなっていたのを実感。
《第三診四月八日》第二診帰宅後、帰宅すると右目から涙がポロポロと流れた。以前より、よく眠れる。よく眠れた次の日は顔がスッキリしていて調子がよい。
《第五診四月一三日》まぶたが閉じやすくなり、目が以前のように乾かなくなった。飲食、うがい時に口からものがこぼれる事もほとんどなくなる。盲腸の手術痕周辺がここ二日、引き攣れる。対症療法的に今までの治療に手術痕周辺の温灸を加える。
《第八診四月二〇日》第五診目に盲腸の手術痕を温灸であたためる治療をおこなったところ、その後引き攣れるようなことは無くなる。予防的に八診まで腹部の温灸を継続。主訴はその間大きな変化なし。
《第九診四月二二日》八診目以降あまり調子が良くない。口角も以前のように重さを感じる。(ハローワークに行くなど、離職後の手続きが大変だった。)脈を診ると、右の寸口の左右差が整っている。
第八診まで表位の邪を意識した中心としていたが、これより胸部の邪に目を向ける。

【所見】脈診寸口左右差整い、浮取より、中取沈取でしっかり触れる。関上は中取・沈取 尺中は沈取でそれぞれ良く触れる。左右差はあまりなし。腹診:この頃から臍の下に帯状に発疹があらわれるが、主訴との因果関係の有無は見いだせず。

【治療方針】 胸腹部で観察できた毒の内、胸の邪熱をさばく事を中心に行う。胸椎の三番〜七番の骨際に生きたツボを見つけやや深めに刺し邪熱を引っかけるように引っ張る。後に右手の陽経に邪の逃げ道を作るイメージで気を引く。腹部の発疹に浅く単刺、右の痞根に深く刺して、左足に津波鍼。

《第一一診四月二七日》前日の二六日に病院で四〇点検査を受けたところ、二六点。(退院時六点。)胸部の熱感やや減少。腹部の発疹も薄くなる。今までおデコの皮膚はサランラップ
で覆ったように、ツッパリていたが、この頃より、皺がうっ
すらと作れるようになる。
《第十四診五月七日》臍下の発疹は消失。熱感は有り。
《第一七診五月一八日》まだ、顔の表情に左右差はあるが、おでこにしっかりと皺かできるようになり、再就職活動も再開するようになる。

【考察】今回の症例では、治療初期では外から内攻した表位の邪を中心に治療を進め、途中胸部の邪毒に対する治療に切り替える事で引き続き症状の変化を観察することができた。このことから、本症例の主訴は、外邪の内攻による第三段階と内部から発せられた、邪毒の二つが同時に関与していた事が示唆された。

 

 

4.実技稽古
初伝同士、中伝同士の組となって、実技の稽古を行いました。

 

5.連絡事項

合宿のお知らせ
・2019年9月15日(日)13時 〜 9月16日(月)15時
・茨城県つくば市「ホテル ニュー梅屋」
・今年の目玉
 ☆横田観風先生による指導があります。
 ☆以下の講義があります。
  ・大浦慈観先生「江戸期鍼灸からみた<いやしの道>」
  ・海野流観先生「鍼道発秘の刺法」
  ・村田底観先生「妊産婦との万病一風論を模索して」
 ☆実技の時間もたっぷりあります。

※詳しくはブログ<合宿のご案内>をご参照ください。

 

(文責:中川)
 

| ◇東京月例会 | 22:49 | - | -
5月 東京月例会

5月19日、さわやかな心地の良い日となりました。

根津の七倉会館にて東京月例会が行われました。

 

1.静坐

 身息心の調和。息を整えて静かに坐ります。

 

2.講話  朽名宗観先生

 「愛」の経験としてのイニシエーションについて

 

昨年の講話ではアメリカインディアンのビジョンクエストについてのお話がありました。

アメリカインディアンのスー族では、16歳くらいになると山の中へ入っていって、宗教の行の原型的な経験をしてそこで何らかのビジョンを得て、それがその人を支えていくような、一生大事にするようなメッセージをもらう機会になるという。

特に強烈なビジョンを得た人が医者になり、普通の人は一回ビジョンクエストを行えばよいが、医者となったメディシンマンと呼ばれる人は、常に新たなエネルギーを得なければいけないので、一生ビジョンクエストを続けなければならないというお話しでした。

今回の講話はそこから続くお話しです。

 

・病としてのイニシエーション

イニシエーションは通過儀礼と翻訳されるが、創造的なビジョンを得るとか、価値あるものを得るプロセス。

そのひとつに病があり、病もビジョンクエストになる。

心理学者のユングはフロイトと考えの違いから決別した後に、人も離れていって、孤独になり、幻覚を見るなどの統合失調症に近いような精神的に不安定な状態に陥ります。

自分が病気になって、そこから脱出していく過程で、夢をとおして無意識とかかわっていくことで色々な経験をして、危機的状況から脱けだし、そのことがのちのユング心理学のベースになっていきます。

朽名先生ご自身は、ユングほどの経験ではないけれど、あることをきっかけにパニック障害的な状態になったことがあり、うつの患者さんの気持ちがわかるそうです。どーっと気持ちが落ちてこのままだとうつになってしまうと感じた時のお話しをしてくださいました。

そのときに、じっと坐っていられるかどうかわからないが坐ってみようと30分の線香を立てて坐ってみたそうです。そうしたら30分坐ることができて、少し落ち着いてきたので、60分の線香を立てて坐ってみると、暫くしてある言葉がふっと浮かんできて、その言葉を吐く息に合わせて繰り返しずーっと心の中で唱えていると、ある時点で180度気持ちが転換して、バクバクしていた心臓がおさまり、暗雲が晴れて、60分坐ることができ、前の状態に戻ることなくその後も過ごせたそうです。

どっと落ち込んでいったことで夢中になって坐禅に取り組んだときにもらったその言葉は、今でも大事な言葉となっているそうです。

釈迦が悟りを開いた瞑想法が入出息念定で、静かに呼吸を見つめるというものです。

入出息念定を追体験していくのが坐禅です。

パニックになったから坐禅をと思ってやってもスッとうまくいくものではなく、普段からそういう練習をしていくのが大事になります。

鍼灸師には、はらと鍼をつなぐことが必要だといっていますが、何がつないでいるかというと呼吸でつないでいます。

先月の観風先生の講話で息の大切さをお話されていましたが、やはり実感としてわかるまでやらないといけないと思いました。

 

・小説:宮沢賢治「セロ弾きのゴーシュ」より。

仲間の楽手の中で一番演奏が下手で、いつでも楽長にいじめられていたゴーシュが、夜中に夢中でセロを弾いている時に、動物たちがやってきて、動物たちとの関わりから無意識の世界を開いて見事な演奏をするまでに変わっていく。楽長からの愛の経験としてのイニシエーションを体験する。

・小説:稲垣足穂「懐かしの七月」より。

稲生武太夫が大人になる前の十六歳で体験した怪奇現象の話。気丈なゆえに30日間に渡って怪奇現象を体験することになる。もののけの親玉の山ン本五郎左衛門からの愛の経験としてのイニシエーション。

・芦原英俊のビジョンクエスト。「木曽氏家禄」の記述より。

芦原英俊が江嶋弁天(弁才天、技芸の神さま)へ詣で岩窟で夜を明かし行を行った際に、天女より扇(奥義)を賜り呑みこむという夢を見る。その年に幽玄法眼より鍼術の免許皆伝の証を授かったことなど、、

様々な例から解説していただききました。

 

 

3.臨床検討会  養母忠観先生

 「よくめまいに陥る患者の治療」

九州支部の養母先生にお越しいただき発表して頂きました。

【はじめに】 よくめまいに陥る患者の治療。治療を進めるうちにさらなる増悪因子に気付き、そちらについてケアをするようにしてから効果が上がったので報告する。

【初診日】 平成三〇年一〇月二二日

【患者】 六七歳 女性 一五五僉仝淹有圈ー臧

【主訴】 回転性めまい。

【現病歴】 二〇代のころからめまいを患うことが多かった。九月に入って、忙しい日が続き、肩、背中が凝ったので、一〇月一五日ある整骨院で、治療を受けたところ、背骨をゆらす手技を受けた。家に帰ってから、めまいがして、吐き気がした。ぐるぐる天井が回っていた。何とか家事をこなし終え、寝込んでしまった。耳鳴り、難聴はなかった。一六日、調子が悪くて一日中寝ていた。まだ少し天井は回っていた。一七日、何となくふわふわしていた。自動車を運転して、買い物に行ったが、大変だった。一八日、少しずつ回復してきたが、やっぱり運転は大変だった。だんだん治まってきたが、まだ調子が悪い。

【個人歴】 父親が肉牛の牧場、精肉の販売店を経営していた。小さいころからその手伝いをしていた。結婚して、実家を出てからも折に触れ、手伝いに呼ばれた。母親が亡くなってから、父親、兄から手伝いに呼ばれることがより多くなり、父親が糖尿病、緑内障を患ってからは、自宅から父親の家まで通いで、病院の送り迎えをしていた。父親がデイサービスに行くようになり、その支度をした。その頃ひどいめまいがして、近所のクリニックでトラベルミンの注射を受けていた。平成二九年四月に父親が亡くなってからも来客対応、家の片付けなど忙しく動いていた。平成三〇年四月に一周忌があり、それが済んでようやく一息ついた。「こんなにのんびり過ごすのは、人生で初めて。」とのこと。

【既往歴】 扁桃摘出(中学生)、糖尿病(Hba1c七.〇)

【憎悪因子】 低気圧、寒暖差、疲労、寝不足によりめまいが発生とのこと。

【診察所見】 〈問診事項〉 便通三日に一回くらい。出ない日が続くとイライラする。出ても硬くて、小さい傾向にある。食欲は、めまいでなければ、普通にある。食事内容は味付けが濃く、肉が多い。水分、よく摂る。飲酒、喫煙はなし。入浴時間は短い。布団には二一時〜二二時に入る。その状態でテレビを見て、いつの間にか寝ている。考え事をして、眠れないことも多い。眠っても夜中に目が覚めて、そのまま眠れないこともある。起きるのは五時三〇分ごろ。足が冷えて、冬は靴下を履いて寝る。冷え性。声ははっきりした声。急かされているように喋る。物事を頼まれることが多く、「自分がやらねば。」と、それを引き受け、やってしまう性格。

〈脈状〉 両寸浮、右関中、左関、両尺沈。細 数(いつも心拍数が多く、九〇〜一〇〇、すぐ一二〇になる)。血圧は降圧剤を飲んで一三〇/八〇くらい。 

〈舌状〉 舌体:やや淡で少し厚い 舌苔:白苔が表面を覆っているが、中央やや前方苔が無く、紅い 

〈腹状など〉 顔におできがいくつかある。胸に熱、腹部にガスがある。下腹部に水毒を感じる。 

〈頚肩背腰など〉 頭部、頚、肩、上背部に熱がある。頚、肩、肩甲骨内縁に凝り。脊際胸椎第二番から一二番までスジ。足が冷たい。

〈服用薬〉 メリスロン、セファドール(めまい)、グラクティブ、ボグリボース、メトグルコ(血糖値)、レザルタス(降圧剤)

【診断】 \里ら食事に肉が多く、それが排出されれば問題ないが、家事等することが多く常に疲労、ストレスを感じているため、排出されず、食毒として存在し、さらに水毒もあり、ガスが発生し、蓄積されていた。△泙寝隼や頼まれごとが多く、それらをきっちりやる性格で、「自分ばかり」とイライラすることが多く、便秘がちという点でもイライラしており、頭部、頚、肩、上背部、胸に熱が溜まっていた。さらにいままでずっと気を張っていたせいか、肩や上背部が凝っており、気血のめぐりがわるい。

身体を揺さぶられたことにより、.スや熱が動き、頭を衝いてめまいが発生したものと考える。5し譴里瓩阿蠅里錣襪気盻長したものと考える。

【治療方針】お通じをよくし、/毒と水毒を取り除くことによりガスを減らし、熱を散じ、5し譴里瓩阿蠅鯲匹する。

【治療内容】 一寸三分二番鍼使用。基本の型であたる。前腕の心包経、三焦経に引く。胸の熱を散鍼で取る。敏感なため腹部全体に散鍼で刺激し、下腹部の水毒のある箇所に刺鍼する。下肢の脾経、胃経に引く。脊際のスジバリに刺鍼し、熱を取り、そして緩め、上背部、肩、頚、頭部に散鍼で熱を取る。膏肓、魄戸、肩井、天柱に軽く刺鍼。手に引く。

【経過】第二診(一一月五日) 前回、終わった後夕方、右肩が重くなった。次の日の午前中までそうだった。(ガスや熱が右肩を衝いたか。)この一週間めまいで寝込むことはなかった。本日、お通じが三日ぶりにあった。

第三診(一一月一九日) 一一月八日めまいがした。朝食後めまいがして、寝た。目を開けると天井が回っていた。吐き気も少しあった。九日、次男が帰省した。一二日まで滞在。帰省中の世話をなんとかやりきった。一五日くらいから頚の付け根、背中の凝りが重くなった。一八日、二一時布団に入ったが、いろいろ考えてしまい、眠ることができず、四時くらいに寝たが、五時に起きた。次男は家庭の問題を抱えていて、その件でやってきた。本日、お通じ二日ぶりにあった。最近、二日に一回ペース。

第四診(一一月二六日) 先週、何度か夜中二時、三時に目が覚めて、眠れないことがあった。いろいろと考えてしまう。めまいは、あまりない。あまり外出せず。買物に行くと肩が重くなる。

第五診(一二月三日) 一一月二八日、二九日めまいがして、一日中寝ていた。吐き気はなかった。二八日、主人の忘れものを届けるにあたり、自動車が使えず、歩きで行ったところ、遅いとなじられ、自宅に戻った後、めまいがして、当日、翌日寝ていた。普段歩かない距離を速足で歩いたため左膝の裏が痛むと言うので、いつもの治療に加えて、左膝裏の反応点(委陽のあたり)にも鍼を刺し、足の膀胱経に引く。

 増悪因子は低気圧、寒暖差、疲労、寝不足だけではなく、他者(主に家族)への怒りがあった。一一月二八日は、怒りにより熱が発生し、もとから存在した熱と併せて、熱が動いて頭を衝いて、めまいが発生したか。少し話しを向けると、父親、兄、夫、子供とその家族、近所の人への愚痴が際限なく出てくる。以降、極力話すようにしてもらう。

第六診(一二月一〇日) 左膝裏の痛み、前回よりは減ってきた。いまは左ふくらはぎが痛む。階段の上り下りがきつい。めまいは減っている。

第七診(一二月一七日) いまも左ふくらはぎが痛む。一一日行楽に出かけ、歩いた。八千歩。その日は、めまいはなく、ぐっすり寝た。めまいは減っている。お通じ二日に一回ペース。

第一〇診(一月一四日) めまいは減った。お通じは二日に一回ペースで問題はない。左ふくらはぎもいまは、痛くない。

以後、全身の調整で治療を続けている。寒暖差や天気の変化、疲労、寝不足、他者への怒りでめまいが起こることはあるがしばらくすれば治まる程度のものであり、寝込むことはない。

【考察】 食毒、水毒により発生したガスが蓄積されている。性格的なものにより、イライラすることが多く、また、便秘体質という点でもイライラしており、熱が溜まっている。さらに、いままで気が張っていたせいか、肩、上背部が凝っており、気血のめぐりが悪い。初診時は、これらを取り除けば解消されると考えていた。三診、五診を経て、「怒り」も増悪因子と気付き、極力愚痴を聞いて吐き出してもらうようにしてから、より成果が出るようになったと思う。初診時では症状に気を取られ、家族の昔話しをしている時の「怒り」までは、気付かなかった。治療していくうちにいろいろ話しをしてくれて、気付いた。初診時に気付いていたら、少しずつ話しをしてもらい、身体的なアプローチと合わせて、成果がより早く出たのかもしれない。

 

〈質疑応答や先生方のコメントから

怒りはどのように身体症状として現れていたのか。治療を経過していく上での身体の変化によっても考察することができる。

・おできができているのは噴火口のようなもので首から上に熱がある現われといえる。おできがなくなっていれば、熱がとれているということの一つの目安にもなる。

・めまいがある人は、頚の横、胆経、三焦経がつっぱっていてめまいになりやすい。筋の付着部の完骨に熱や圧痛がでていると、治療ポイントになる。

・めまいがある患者には、持って生まれた水毒体質を減らすこと。めまいに悪い習慣を減らす(横になってテレビを見るなど)こと。今出ている症状に対して一番悪いところを探して治療することが必要。

・頚椎症など、頸の筋肉がこちこちだと、深部感覚と知覚から入ってくる情報とにずれが生じて、それによってめまいがおこることがある。

・めまいには水毒を考え、リンパ液の異常や耳石がついてのめまいには、耳の辺りの翳風、聴会などへのアプローチするなど、身体の異常として出ているところを探す。

等々、色々な目の付け所があり勉強になります。

 

 

4.実技稽古

初伝同士、中伝同士の組みになり稽古しました。

 

 

5.連絡事項

海保さんが初伝終了試験に合格し、中伝へ進むことになりました。

おめでとうございます!!

 

来月は、6月16日(日)、14時からです。

梅雨の時期となりますが、みなさま体調を崩されずにまたお会いしましょう。

 

(文責:坂井)

 

 

 

| ◇東京月例会 | 02:23 | - | -
4月 東京月例会

初夏をおもわせる陽気となった 4月21日(日)東京月例会が 根津 七倉会館に於いて おこなわれました。

今月は 横田観風せんせいにご講義ご指導いただくため 変則的な時間割で進みます。
年度はじめの四月 学校を卒業された方 新たな学年になった方 新入生 他 多くの参加者で 部屋がいっぱいになりました。

 

1.静坐

身・息・心の調和のため 5分ほど 静かにすわりました。

 

2.講話
横田観風先生「道について」

「道」についてお話しいただく前に 皆から質問があったということで 観風せんせいが年末年始に作成された漢詩の詩についての解説から始まりました。


七十五年
鍼禅茶書
自他無癒
只養糞袋

 

そして いよいよ「道」についてのお話です。

いやしの道では、「学術道三位一体」、学問・技術・道、この三つで一体になっている、という考え方があります。
学問や技術を修めることに関しては、ひとの命を預かる治療家として当たり前に行っていくものですが、現代の学校教育ではなかなか学び触れる機会がない、「道」に関して、解説していただきました。

道とは、簡単に言えば、どういう人生行路を送っていくかということに関わってあるもの、ということです。
私たちが所属しているのは、いやしの道協会、ですので、「癒やし」というものを主題に置いて人生を行くことを志としますが、ただそれだけでいいのか、ということが問題になってくるということです。

 

道には、いろいろな段階があるそうです。
 未知:未だ知らない(笑)
 路:こみち
 道:自分と大きなものがちょっと混ざってきた段階
 大道(たいどう):宇宙いっぱいの道。人間の脳の限界を超えてあるもの

 

東洋的な道である鍼の「道」は、中国三大宗教のひとつ、道教の教えから来ているそうです。
「道の道とすべきは常の道にあらず。名の名とすべきは常の名にあらず。・・・」(『老子道徳教』より)
老子、老荘思想の「道(タオ)」は、人間のはたらきや力を超えた宇宙のはたらき、人間の認識を超えた世界のことを意味します。昔の人は、そういうものと一体となる為に、静坐をして天地自然の観察を行ったり等、様々な努力をしたということです。私たちは、人を癒やしながら、人間の認識を超えた世界にどうかかわっていくのでしょうか?

 

道の段階の頂上にある大道にたどり着くには、求道(ぐどう)、どうしたら頂上に行かれるか(大道にたどりつけるか)?と探し求めることが大事であり、そのためには「行(ぎょう)」(例:ヨーガ、坐禅、太極拳、武術、等、続けて行っていくもの)が必要となるということです。
行をずっと続けていると、世界観が変わっていくそうで、例えば、観風せんせいの場合は、30才ころから坐禅を始め、あるとき、まずはからだが変わり、下腹が出っ張って上の方がさっぱりする様になり、息が丹田まで入っていく様になり、そうすると頭のなかの雑念が無くなっていった、そして自分の境界線がなくなり、自分と大きな世界が一体になったような感じになった、そうです。坐禅を続ける内にその感覚は段々と深まっていき、からだや精神がぶれずに芯が一本通るようになった時、魔ではない、大いなるものと一体になったという感覚を得ることができたそうです。

人間の脳の限界を超えていないものと超えたものとの違いはものすごく大きい、と仰っていました。45年間やってきて、宇宙的な感じの鍼に、たどり着いたそうです。

 

からだにもこころにも芯を通すようにしていくこと、迷わない自分をどうやってつくるか(心柱をどうやって立てるか)?ということで、「息」呼吸の大切さについても教えていただきました。
いやしの道協会の教えのひとつにある「身息心の調和」、まずからだを整え、息を整えていると、心も整ってくる。
これが現実に出来るかどうか、そのためには「息」呼吸がいちばん大事になってくるそうです。
吐く息は長く、吸う息は吸うに任せる、という上手な呼吸を続けること、そうすると、ひらめきもでてきたり、体験する世界が変わってくる、大道に至るまでの鍼に必要な気合いも身についてくる、呼吸を工夫すれば鍼も上手になる、ということです。

 

論語や老荘思想など、人生をどういう風に歩んでいけば良いかということを勉強してください、技術だけあってもだめで、なぜあのひとのところに患者さんが来るのだろう?患者さんが自ずから来てくれる、そんな治療家になって欲しい、と仰っていました。

 

常に進化し、死ぬときが終点である

 

今回の講話の詳細は、機関誌『いやしの道』次号に掲載予定ですので、みなさま、そちらをご覧ください。

 

3.臨床検討会
福嶋青観先生「老いの受け入れと夫婦の関係について」

眠れない、怠くて起き上がれない、頭が重い、という主訴で来院された70代後半の女性の症例を 発表していただきました。

【はじめに】検査の数値には出てこない、だるさや痛みなど、年齢が進むと「歳だから。」と、医師から一言で片づけられ、それでも「諦めきれない。」と鍼灸院に駆け込む方もいる。本人の身体のイメージが、若くて体力気力が満ちていた頃のままであるとそのギャップは大きい。さまざまな衰えを、受け入れつつも、生活の質を落とさないための工夫や身体のケアが重要である。

【患者概要】77才、女性。体つき・体重:中肉中背。専業主婦。夫と二人暮らし。男児1名・女児1名の出産経験あり。

【主訴】眠れない。だるくて起き上がれない。頭が重い。

【現病歴】正月に風邪を引いて風邪薬で咳・鼻水は止まったが、眠れない。(1〜2時間位で目が冴えてしまい全く眠れない。)内科では、「うつではなく、自律神経の乱れです。歳なので仕方ない。」と言われ、睡眠薬を処方。翌週再び訴えたら、睡眠薬が三種類と精神安定剤を処方された。しかし、薬を飲んでも眠れない。起きているのが辛くてベッドに横になってばかり。通常は、血圧の上が110くらいだが、辛い時、計ると160位になっている。

【既往歴】うつ病。65才の時、夫が退職し、24時間毎日いるうち、発症。1年前、薬から離脱するも「不眠」だけは続く(3〜4時間)。

【初診所見】玄関先で、深いため息とどんよりした雰囲気。靴を脱ぐのに、手間どう。目の下にクマ。まるまった背中。話しをするのも、少し息切れ気味。キメこまやかな色白の肌。
脈診:緊(特に左)、細、右寸弱やや沈、両関浮、両尺沈。
舌診:胖大、歯根あり。
腹診:心下痞硬。上腹部から右側腹にかけてガス多し。右へそ外に硬結。へそ下の力無し及び冷え。足先の冷え(手足の冷え自覚有り。)頭部のむくみ(頭頂部及び、耳周り)。
背診:第八胸椎の飛び出し。肩甲間部〜肝兪辺りまでの膀胱経の膨隆。腰椎前弯強め。腰の冷え。後頭頚のグミ様のむくみ。

【診断】(最初の診断)元々、水毒の存在有り(第0段階)、慢性的な睡眠不足及びストレスで常に虚している状態があった。そこへ風邪が内攻し、水毒を揺さぶり毒が増大化。邪が上衝し、胸部・頭部に達した(第5段階)。

【治療方針】上に昇っている邪気を瀉し、腹部の虚を補う。

【治療及び経過】
・第1診(平成31年1月23日)*週2回の治療。
寸3の1番使用。郄門、外関(胸の詰まり感が取れ、みぞおちが緩む。)、右へそ脇のスジ張りを緩める、下腹の虚が温まるようにしばし、鍼を留める(緩んで温かくなる。)太谿に補、豊隆を瀉。神闕を棒灸で温める。うつ伏せになる時、足の指がつる。百会・天柱に強めの打鍼。第8胸椎の骨直下の鍼で邪が多く放出される。腎兪はしっかり刺入して留める。命門と失眠に棒灸。
・第2診(1月26日)
前回施術後、お小水・オナラがたっぷり出た。五時間眠れた。顔色も良く笑顔。脈の緊が大分和らいでいる。夫の愚痴をたっぷり言う。治療はほぼ同様だが、刺激は軽め。
・第6診(2月15日)*ここから週1回の治療。
「睡眠薬・安定剤共、必要ないので次回内科医に相談する予定。」
「今まで全く夫に意見することが出来なかったが勇気を出して初めて言った。」「夫は頭が良い。」など、誉め言葉も出る。家事労働の軽減工夫をし、日常生活は問題なく出来ている。
脈診:細。尺やや沈。
腹診:心下やや硬い。腹部・手足に冷え無し。
背診:胸椎の出っ張り、腰椎の前弯(腰のそり)が減っている。
〜お出かけが二日続いて疲れたなど、波は多少あるものの、生活に支障無く、経過。毎日ウォーキング。
・第14診(3月25日)*ここから又、週2回に戻す。
朝、悲痛な声で電話。一昨日、娘と1泊旅行に出かけたが、行きの車で疲れ果て、温泉でのぼせて風呂場で倒れた。無理してご飯を食べ、横になったが全く眠れず。這う這うの体で帰宅。頭がもやもやしてめまい(これまでふわっとするめまいはあったが、頭がぐるぐるするような強いめまい)もある。
脈診:緊。弦。細。寸・関浮強。尺弱。
腹診:初診様だが、より頭部に熱邪がこもっている。
背診:初診様だが、首肩がよりガチガチ。
治療は、百会・顖会に雀啄で瀉。後は大体これまでと同様。治療すると調子が良くなり、滞っていた家事で無理をしたり、一進一退。
・第18診(4月8日)
気温差が激しく、汗をかいたり、寒かったりで風邪気味。耳下リンパが痛い。鼻水が少し出る。)睡眠は取れているが、だるくて横になることが多い。「私が具合悪いと夫の機嫌が悪く、色々、怒鳴られたりする為、こっそり、ベッドで休んでいる。」
脈診:右緊。左寸弱、両関浮、両尺沈。
腹診:心下痞硬。全体的にややガス多し。右へそ脇にスポット的に冷え。右足裏のみ冷え。頭部のむくみ(頭頂部及び、耳周り)。耳下リンパの腫脹(自覚有り)。鼻周りにむくみ・熱感あり。
背診:第8胸椎前後の骨の飛び出し。肩甲間部〜肝兪辺りまでの膀胱経の膨隆。右首スジの硬結。
治療は、耳下リンパの散鍼。攅竹・迎香に鍼。他、大体同様。

【考察】
夫は、仕事一筋だった人で、退職後は、外出・外食ほぼ無し。用事をよく言いつけられ、常に気を張る毎日で疲弊している(掃除屋を頼むと言うと、「俺がやる。」と言って、実際やらない。又、小水を漏らした事を言わないので部屋の中が小水臭くなり気分が悪い。とにかく何もしないくせに文句は多い、など不満は多い。)
これまでずっと家事全般手を抜かずにきたが、年齢とともに、体力に見合わなくなってきている。
最初は抵抗感があったようだが、家事労働を軽くするよう工夫してもらい、すぐゴロゴロ出来るよう、リビングにマットも敷いてもらった。
前半の治療でかなり改善した頃は、夫をほめる言葉も出たが、娘との旅行後、再び具合が悪くなると、とたんに夫の機嫌が悪くなり、イライラするようになった。妻を心配する余り、夫もストレス過多になっているのだと思うが、それを妻にぶつけてしまうので、妻のストレスも倍増する。
患者のストレスの要因として、娘への心配も大きい。一回り以上年上の男性と大反対の末結婚したが、その夫が6年前から寝たきりで自宅介護している。母は「娘の息抜き」として、娘は「母が父から解放される為」として、2ヶ月に1度、温泉旅行に出かけている。3月の旅行では、互いを気遣う余り無理をして倒れてしまい、むしろ娘に心配をかけてしまったことを後悔していた。
老いにより、少しずつ出来にくくなることもあると受入れつつも、体調が安定したら、筋力をつけていく方向へ持っていくことを患者と話している。本人もソシアルダンスに興味があると少し意欲も出てきている。第2診以降、調子の良い日は、ウオーキングをおこなっている。
又、夫との関係で、本人が「夫に言えない」ことを言いやすい言葉に置きかえるアイディアを治療の合間に二人で考えている。
治療に関しては、胸を突き上げるお腹のガスを下げて胃腸を動かしたり、後頭頚部や背中の張りを緩めたりして、異常興奮した交感神経を沈め、副交感神経をあげることで睡眠も改善し、自覚症状はほぼ取れてくるが、最終的には、水毒の排出を進めていくこととなる。
風邪引き後に毒が増大した初診、温泉で湯あたりして上逆した第14診、再び風邪引き直後の第18診の身体の変化が面白い。
尚、水毒、ガスに関し、「いやしの道第10号」および「11号」の一風万病あれこれ(観風先生)を参考にされたい。

 

4.総稽古・実技稽古

今月は 各自の実技課題をもとに 横田観風せんせいが直接指導してくださる特別編。

観風せんせいから「熱気の感じられる稽古を期待しています。」との事前メッセージをいただきつつ、まずは総稽古に臨みました。

 
学びに集った全員の前で、志願者が各々の実技課題を実際に行い、みなさまから意見をいただいたり指導していただきます。

 

 

 

 

 

 

 

 

熱気ある大勢の前で注目を一身に浴びながら、観風せんせいを目前に課題を実際に行い指導を受けてくださった方々のお蔭で、仲間の課題、鍼をしている姿、まわりの方々からの助言、等等、さまざまなやりとりを通して、その場の全員が多くのことを学ぶ貴重な機会となりました。

 

その後、指導者と中伝者・初伝者の組に分かれ、実技の稽古をおこないました。

 

4月は観風せんせいのお誕生日月です。おめでとうございます。

 

 

来月は 5月19日(日)14:00〜 開催されます。

 

(文責 小池)

 

| ◇東京月例会 | 23:00 | - | -
3月 東京月例会

 

 

3月17日(日)七倉会館にて東京月例会が行われました。
まずは恒例の静座から。


本日の講話は安田無観先生です。いやしの道では、学・術・道(どう)が大事とされています。安田先生自身は道が足りないと思われているそうで、今回は道(どう)にちなんで道(みち)についてのお話をしてくださいました。題して「ボウルダーへの道」。いやしの道のワークショップを行うためにアメリカまで行き、時差ボケを少しでも治してからワークショップをしたいということで、初日はアメリカサンフランシスコに入り、観光をしながらボウルダーへ向かったということでした。途中の観光地の写真を見せていただきながら話をきいたのですが、さすがアメリカ!広大な上に絶景!見えなかった方は安田先生に直接見せていただいてください。

さて、だいぶアメリカ横断の話は割愛しましたが、 ワークショップは3日間に渡り現地の鍼灸師たちにいやしの道しるべを講義し、基本の型、鍼の持ち方から稽古用紙の書き方まで徹底して教えたそうです。稽古用紙を普段の練習から使うのが上達の近道なんですね。3日目は安田先生が一人ひとりに治療を行ったそうです。教えたアメリカの鍼灸師の一人から、いやしの道のやり方で患者さんを治療したら、効果がよくでたという感想がきたようですよ。初めは簡単そうですが、やっていくほど難しい。筆者も実感しています。安田先生からは四部録を読む。繰り返し読む。何度も読む。ということでした。

頑張ります。

 

 

臨床検討会

シャルコー・マリー・トゥース病(指定難病⒑)
        市川友理(指導教授 大浦慈観先生)
【初診】平成二九年七月七日
【患者】女性・五七歳。身長一七〇僉B僚渡燦洵圈
【主訴】手足の痺れ。手足が思うように動かない。全身痛。
【現病歴】
一五年前に階段から落ちて右腰を打っている。これを機会に、腰痛、頚椎の痛みが気になり、整形、カイロ、整体と点々と歩いたが良くならず、益々自由に動けなくなり、歩きにくくなっている。介護をしてくれる友人に家事援助を頼んで過ごしている。
食欲はあるが、手が不自由でお箸を使えなく、雑な嚙み方をしている。過去、整形外科の診断は「脊柱管狭窄症」「頚椎症」。車の運転をするが、むち打ちの経験はない。目、鼻、口の感覚も違和感がある。
初診日、治療院の裏の駐車場から、友人に抱えられ転げ込むように入ってきた。体が異様に大きく、顔は赤黒く、目が大きく、息が上がっていた。予約時に「腰痛」と連絡をいただいたが、何か違う感じがした。糖尿病(血糖値一〇〇、食事制限でコントロール中)の他に病気はないと言うが、これほど不自由な状態で精密検査をしていないのなら、するべきだと勧めた。
【既往歴】
小学生のころよりよく転んだ。原因は承咾覆里と思っていた。腰痛は中学生頃からあり、原因は記憶がない。三〇歳頃、炬燵を持ち上げようとぎっくり腰になり、一か月位で良くなったが、腰痛はずっと気になっていた。
【生活歴】二三歳で親に急き立てられ、何にも分からないまま結婚をした。子供二人を育てながら、姑、小姑に奴隷のように扱われ、ご主人の助けもなく、強いストレスを感じながら毎日を過ごしてきた。子供の大学が終了と共に、ご主人とは別居をしている。現在は実家に戻ったものの、親も高齢となり、兄は結婚をしておらず、一方、別居中のご主人は引きこもり状態で、患者さんがご主人の会社の役員をしているため、両方の家を行ったり来たりしている。  
【初診時の総合所見】
・脈診…左右共に浮、数。
・舌診…舌色は紅。全体に黄苔がおおい、舌裏は色悪く、舌下静脈は怒張。
・腹診…頭、顔、頸の強い熱感。胸中の熱と心頰。胸脇苦満。胃に硬結。右腹直筋の拘攣。右胆経の拘攣。左鼠径部の硬結。両下肢は細く強い冷え。右手は鷲手。右足底は大きなアーチ。
・背診…上部一杯に尋状性乾癬が重なり合う。頸の拘攣。右肩関節が盛り上がり肩甲間部の拘攣。右脊柱起立筋の拘攣。腰部臀部の硬結。右膝裏の筋張り。右踝周囲の強張りと浮腫。
【治療方針】患者さんは「全身の痛み」を訴えたが、右の頸から右踝まで右の節々に痛みがあるので、お灸を有効に使い治療をする。舌苔の状態から、消化器系の異常もあると判断し整える。  
先ずは全身の精密検査をして貰う。
【治療】
・一回目/陰経と陽経の手に引き鍼。頭と顔に沢山の散鍼。さらに合谷に引き鍼。頸から胸も散鍼。「楽になった」という。右腹直筋に細指術と更には爻ショ管術と雀啄術で緩め、季肋部に多く散鍼、期門に細指術に雀啄術。中脘に細指術に屋漏術。鍼をしたところには透熱灸(半米粒大二壮ずつ)。左下の側臥位で頸、肩、腰、臀部、下肢の拘攣を緩めた。右手の神門より上に半米粒大の透熱灸。左右の内踝周辺を棒灸で暖めた。起きて後頚部に雀啄術。左手の中渚に引き鍼。
・二回目/一週間後、近くの病院の総合検査結果を持ってきた。血液のヘマトクリット値が高めだけで、医師の判断は「健康体」のサインがあった。説明不足だったと反省。浦和・大宮方面の整形外科のある病院へ行き、自分の歩き方や不自由さを説明して、リュウマチや腫瘍マーカーの数値、膠原病その他を判断してもらい、レントゲンで本当に「脊柱管狭窄症」なのか、リハビリで治るものなのか、全身的に調べましょうとアドバイス。治療は前回同様。さらに左右の、手の十指間穴に刺し、足の八関穴に透熱灸。下半身を温めて欲しいが、もつれて歩けないので靴下は使えない。その後一週間、腰の痛みがほとんどなく楽になっている。付き添いはなく、自分の運転で来る。


(三回目以降省略)


・翌年十月九日、三八回目/「シャルコー・マリー・トウース病」という結果がでた。遺伝子異常による末梢神経疾患の総称である。特徴は、大腿部を大きく挙げて足尖は垂れて足底が大きなアーチの為不安定で、大きな鶏がゆっくり歩くイメージの「鶏歩」。
病名が判明したことで、患者さんの心がシャンとした。子供さんの結婚が十二月に決まり、正装をして出たいということで、十一月二二日、駐車場まで一緒に歩いてみたが、両手で長い杖を突き揺らぐことなく、一歩一歩ゆっくり歩いた。辛い時はいつでも来るが、近くでの体操に通い、娘さんが妊娠したので面倒を見る覚悟で準備しているという。患者さんを紹介した人に尋ねたところ、患者さんのお兄さんも同じ「鶏歩」だったという。
【考察】
シャルコー・マリー・トゥース病は、普通、左右対称に症状が出るというのに、この患者さんの場合はストレスのため、右に強く出たのだとおもう。
紹介状を書いて病院に依頼したが、その理由の一つはリハビリが必要だと思い、当院ではやりきれない部分を感じたからだ。また、患者さんはお姑さんに文句を言われ、時間を自由にできなく、ちょっとのチャンスを利用しながらこれまで治療を続けて来て、しかも本当の病態を見極めて行くこともできず、料金にしても、治療にしてもひどい目にあっている。長期に渡る苦しみから解放されてほしいと思い、本当の病名を知るのを怖がってもいたが、それを確認してから治療したいと思った。
病院からの検査結果は自分の勉強にもなった。患者さんにも説明してあげて理解してもらえた。しかし病院に丸投げの気持ちはなく、むしろ結果は鍼で治すしかないだろうことも想像しながら、「何病」とこだわることなく、そのままの病体を診て触診して治療をして行く。
私は一五分や、三〇分の治療でできる患者さんはあまりいない。殆んど、長期間あちこち治療院を周り治してもらえず、しかも遠方より、家族の協力を得て来ている方が多い。大体一回目に劇的に良くなって帰ってもらう。初めはできるだけ軽めにするのが理想だが、上記の理由で、瞑眩の説明もするが、はっきりした変化を患者さんに感じてもらっている。
私自身が病気で辛い思いをしてきた。ここが痛いときは他の部位にも影響し、どこにどうなるかが分かる。自分の病気の経験も今は有難い先生のように思う。長時間相談に乗る時間はないが、気になることはちょっとの間にアドバイスする。私は誰にも親切ではない。でもつなぎ目にお茶を一杯一緒にいただき、夜仕事帰りの遅い患者さんには、スープや茶わん蒸しを一緒にいただきながら、雑談もする。
生徒さんを見ていて早く覚えて欲しいのは、どこに鍼をするかという病態の診方である。私は横田先生に直接教えていただく機会は誰よりも少ないが、何時もお腹を探るとき、先生に手ほどきしていただいた時のことを思い出している。正しく探り、丁寧に見落とししないように診ることである。

病名関係なく患者の身体の状態を見極め治療をするのがいやしの道のやり方ですね。患者さんに病院へ行き精密検査を受けるよう促すのも鍼灸師としての大事な責任ですが、やはり見極めが難しくどのような説明をすれば納得してもらえるのかと考えさせられました。とても貴重な症例報告でした。

 

実技

3月は入門講座がお休みのため、また参加者も多く、部屋いっぱいに広がって練習しました。日頃の疑問や課題を解決しステップアップを目指します。

 

帰りの上野恩賜公園では早咲きの桜が開花していました。まもなくソメイヨシノが一斉に咲き始めますね🌸

文責:溝口(春)

| ◇東京月例会 | 20:00 | - | -
2月月例会

今日も良いお天気です

根津の七倉会館で月例会が行われました。

 

・静坐

坐禅、正坐で呼吸、姿勢、心を整えます。

 

・症例検討会 藤田峰観先生

耳鳴りの治療                                                                            

【患者】 女性  六七歳 

【初診】平成三〇年一二月一八日

【主訴】耳鳴り

【現病歴】今年の八月二八日、乗用車で青信号の交差点を右に曲がろうと進入したところ、直進してきた信号無視の乗用車に右中央部を衝突された。事故の衝撃で運転席と助手席のエアバッグが開いた。顔に当たったかは不明。自車は大破し、廃車となった。特に身体に外傷はなく、頸部にも異常は感じられなかったが、大事故だったため念のため救急車で病院搬送となった。搬送中の救急車の中で左耳が聞こえていない事に気付いた。

翌日になっても左耳が聞こえなかったので、近くの耳鼻科を受診。検査で異常が見られなかったので、精神安定剤、ビタミン剤、胃薬を処方され服薬で様子を見ることになったが、二回くらいしか服用しなかった。一カ月くらいして聴力は戻ったが、激しい耳鳴りが起きるようになった。耳鳴りは常時ガンガンやギ―ギーしていてまるで工事しているような音で、特に子供の高い声が響いて聞き取れない。(学童保育の仕事をしており、支障をきたしている。)また、水洗トイレの音が耳障という。

初めから通院している耳鼻科の診断では耳に異常は見られないので、診療機械のそろっている某総合病院を紹介され、受診(発症から約一カ月半後)。やはり検査に異常は見られないので、心療内科を紹介されるも納得がいかず、耳鼻科専門の大学病院を紹介され、受診(発症から約二カ月後)するも同じく、検査に異常はないとのことで、音響療法を進められたが、遠いので通院困難なため断る。鍼灸治療を希望し、来院となった。なお、事故の対応は、保険会社が親身になって対応していて、問題はないとのことである。事故直後食欲はなかったが一週間くらいで戻った。睡眠に影響はでなかった。ただし、交差点では今も緊張して運転しているとのことである。なお、夫と二人暮らしである。

【既往歴】虫垂炎(一〇代)、寒冷蕁麻疹(十数年前で左下腹部に痕あり)、高血圧症(上百六十)服薬なし。

【現症】ガンガン、ギーギーと大きな音はしているというが私との会話は落ち着いて普通に話せる。めまいはないという。睡眠もよく眠れているという。耳や頭・頸部に痛みなどはないという。胸に弱い邪熱があり、心窩部に固まりがあり、左横腹に強いスジ張りがある。左頸部、肩から肩甲間部に強い張りがある。腰や手足に痛みはないという。学童保育の仕事で子供とのコミュニケーションが取れないことのへのいらだちを感じた。仕事を積極的に責任をもって行っているようであり、事故や現状を理路整然と説明した。体質的には陽証に感じた

 心下痞(訂正)→心下痞硬

 

 【診断】

  子供達とのコミュニケーションがとれないこと、事故への恐怖を引きずっていることから、事故の物理的衝撃と、精神面での影響いらだちなど胸の邪気や心窩部の痞え、頸部、肩の張りをおこし、耳の器官にリンパ液等の水分が影響し耳鳴りを起こしているものと判断した。

【治療方針】

 胸の邪気をさばき、横腹のスジをゆるめ、肩、頸部の張りをゆるめリンパの流れをよくする。耳の周囲、頸部等の瘀血も処理をする。また、精神の影響を配慮し、よく話を聞き同調し気分をリラックスできるように対応する。

【治療経過】

第一診、十二月一八日 左心包経、三焦経に刺鍼、胸に散鍼、右横腹、左横腹刺鍼。耳周囲の刺鍼。頸部肩、背部の刺鍼。項に刺絡。

第二診、十二月二一日 強い耳鳴りは変わらず。頸部、耳周囲、肩の刺鍼で楽になり、頭痛、頸部の周囲が張っていたことにあらためて気付いたという。耳門、聴宮、聴会(深く)刺鍼。側臥位で寝ていて左腰が痛いことに気付いたという。

第三診、十二月二五日 強い耳鳴りのガンガン、キーンというのは無くなったが、しかしセミの声のような耳鳴りが静かになると聞こえるという。子供たちの高い声が聞き取れるようになった。水洗トイレの水の音が気にならなくなった。腰の状態も良い。左耳の横、竅陰穴付近に痛みを感じるという。百会、同部を刺絡。

第四診、一二月二八日 頭痛はなくなった。耳鳴りはジーッ、キーンという感じ。

第五診、一月八日 キーンという高い耳鳴りは無くなったが、ジーッと低い音がでている。疲れると項に痛むことがある。

第九診、二月五日 少し気が沈んで元気がない。耳鳴りの治療も少し諦めの感じなので、あらためて治療について説明し、少しずつ良くなってきているので励ます。

第十診、二月一二日 明るい顔で治療室に入ってきた。治療に前向きになっており、灸点の確認と、高血圧の灸点を教える。耳鳴りは初診時に比べ六割。頭痛は時々でるので二割、頸部等の張りは三割程度に減少したとのこと。

 

【考察】交通事故が原因の難聴と耳鳴りで、めまいがない。まず考えられるのは、鼓膜の破損を考えた。後日調べたら、外リンパ瘻も考えられるが耳鼻科でそのようなことは言われていないので、心理面と衝撃による水液、気のめぐりの影響からとして鍼灸治療をしていくこととした。また、事故後四カ月経過しているが左側の頸部と肩の張りにおどろき、これを緩めれば何とかなるのではないかという見込みから治療を開始した。また、治療は経穴にとらわれず反応点に重きをおいて治療するよう心掛けた。

特に印象に残ったのは聴会穴で、二診目にこんなに深く入れて大丈夫だろうか?というほど吸い込まれるように二センチ以上入ったと思われる。手ごたえを感じたが、この穴だけでなく全体として耳の周りが良くなったと思っている。また、竅陰穴付近に痛みを訴えており、細絡は見られなかったが、凹んでいていやな感じだったので、百会とともに刺絡をしたら、かなりの量の瘀血が出て痛みがなくなった。

現在胸の邪気は三割程度に減少した。項の張りも部分的にはまだまだ強く残っており、これらに対応しながら治療を進めている。

初診から二カ月弱で少し治療が停滞し、患者さんも交通事故の保険で治療を続けてよいものか迷いが出てきた。患者さんと話していて、耳鼻科で進められた心療内科、及び大学病院で勧められた音響療法をきちんと理解していなかったようで、自律神経の異常や考えられる耳鳴りの原因を説明した。患者さん自身から、事故の相手のことをうずうず考えず、自分でも努力しながら前向きに治療に取り組みたいと話してくださった。 

耳鳴りは『経絡流注講義』では三焦経の是動病、小腸経の所生病にある。また、病症にはないが胆経も耳を通っている。さらに『鍼道発秘講義』に耳の病として出ている。また、『万病一風論の提唱』の中に「万病一風論における心身相関」の項目があり、この症例に大変参考になった。

 

 

第九診後に丁寧に説明したことで、患者さんが治療の意味を理解し納得してご自身が前向きに治療に取り組むよう、気持ちを切りかえられたというお話がとても印象的でした。

朽名先生からは「聴会穴は耳の疾患に有効な穴ですが、無理に刺すと内出血をおこすことがあるので、初学者は気を付けましょう!」とアドバイスもいただきました。

 

・実技タイム

 ペアになって、稽古開始です。

 

 

 

 

 

 

 

 




・連絡事項

来月月例会時に季刊誌ができる予定です。金額は3,500円くらいになる予定です。25部くらい用意する予定です。

すぐに売り切れてしまうと思いますので、皆様お早めにお求めください

 

 

4月から新期初伝フォローアップ講座が始まります。

 

 (文責・溝口)

 

| ◇東京月例会 | 23:59 | - | -
1月 東京月例会

皆様、あけましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いします。

 

2019年度、いやしの道協会最初の月例会です。

今年も根津、七倉会館でお世話になります。

 

1、静座


坐禅、正坐で呼吸・姿勢・心を整えます。

 

 

2、講話 前之園 空観先生

 

 

 

「伝えられなかったことを伝えに来ました」

 

まるでン十年越しの初恋の告白でも始まりそうですが、勿論違います(笑)。

 

今年の合宿の『形を作る 〜いつも同じでいられるために〜 』の続きになります。

 

まず、前之園先生から坐禅の形をとるように指示がされます。さらにそこから患者さんに鍼をするつもりで手を30兪阿暴个考佑砲箸里海函

 

その時点で皆さんの姿勢はどうなっているでしょうか?。腕の円相や、姿勢が崩れてはいないでしょうか?。

 

前之園先生からは、

 

「いやしの道では、『坐禅しているつもりで鍼をしなさい。』と教わる。」

 

とのこと。その際に、

 

・姿勢が『崩れる』のは初学者

・姿勢を『崩せる』のは熟練の先生

 

ということでした。

 

崩れるパターンにも幾つかあり、

 

・『手を伸ばす』…30僂竜離を稼ぐため手を前に出し腕の円相が崩れる

・『腰を倒す』…肚が入っている人は良いが、背中が丸くなっている人もいる。

 

などがあるそうです。

 

結局のところ、坐禅しているつもりで鍼をするためには『肚で打つ』ということになるということですが、そもそも『肚で打つ』って何?ということに前之園先生も苦労されたようです。そして、

 

「動きを教えるのは、前提を自分と皆さんで共有していなくてはいけない。重心が動くというのは?を共有したい。」

 

ということでした。

 

そもそも、前之園先生は体育畑のご出身。いやしの道では、

 

「一度全てを忘れなさい。」

 

と教わるため、初伝・中伝ではそれ(体育畑出身)を出さずにやってきたが、指導者になって時間が経ち、自分のバックボーンである運動を通して指導した方が伝え易いということです。

 

また、前之園先生が言うには、

 

「自分には信仰心が無い。皆さんが思っているより遙かに無い。心がどうとか言われても…、これはいやしの道無理だわ〜。」

 

と思われたそうですが、

 

「ワザが極まりて心に到る」

 

ということばがあるため、技を極めるために一日を一意専心に過ごすことは禅をやっている人達にも通じることもあるのでは?という思いから「技、技。」と言うそうです。

 

そして技術習得に必要な課程として示された図がこちら。

 

     →客観イメージ(外的イメージ)

 

運動     ↓(上達に従い

イメージ   ↓ 移行してゆく)    

          

     →筋感覚イメージ(内的イメージ)

 

技術の習得は外的イメージの模倣から始めるが、技術レベルが上がっていくと運動イメージが徐々に内的イメージへ移行していく。

 

(※ただし、どこどこの筋肉を動かしている…というのは、外的イメージになり、熟練度が少ない。)

 

無意識の運動とは、小脳で記憶すること。

(運動指令のモデルを作ること

 ……例:ペンを取る、歯磨き、など)

 

これらを観風先生は『筋肉群の調和』とおっしゃるそうです。

 

次に、前之園先生が動きを伝えるために行うことは、

 

1、数多く真似させる。

2、限定された条件下で行う。

3、出力を大きくする。

4、似た動きを使う。

 

ということですが、これらは気付きにしかならないため、その後の工夫が必要ということです。

 

更に、似て非なるものの排除ということも説明されましたが…、

 

1、鍼を『刺す』と鍼を『置く』。

2、『近づける』と『近づく』。

3、目を『つぶる』。目を『そらす』。(熟練者と初学者)

 

……難しい💧。3に関しては前之園先生も、

 

「格好いいんだけどね〜。」

 

と。

 

これに関しては身に覚えがあるのでギクリとしました。熟練の先生方と、その真似をしているだけの初学者とでは雲泥の差があるようです。次の月例会で指導者の先生方にもう一度よく確認しておかないと……💦。

 

ちなみに、来月(2月)のフォローアップ講座は『初伝あれこれ』(いやしの道9号)を用いて、基本の型を順々に前之園先生がご自分の解釈を解説していってくださいます!。初伝の人は是非参加しましょう!!。

 

3、臨床検討会 牛尾 宣子先生

 

 

今回からは、症例発表の際に患者さんの腹診図も示していくとのこと。

よりしっかりと患者さんの生命の状態を把握することが求められてゆきます。

 

 

 

『卵巣がん術後の治療』

 

【考察】初診では脈と舌診から陰証と思われたが、冷えは酷くなく活動も出来ていたので陰証傾向と考え腹部の状態の改善を目指した。胸の熱を取ることで胸のつまり感はとれたが背中の違和感は改善されなかった。十月に東洋医学科から少陽病虚証の薬が処方されたことで膝から下の冷えが改善され、背中の違和感を主に訴えることが多くなり、頭痛が起こり始めた。九診の風邪と考えた熱は、漢方薬の内服によるものと後から分かり勉強不足を痛感した。患者は、柴胡桂枝乾姜湯証で陽証の部分を漢方薬が、陰証の部分を鍼灸が担っていたと考えると、お腹の状態がもっと改善できていればしっかりと熱が出て背中の違和感がとれたのかもしれない。現在も気の動揺で様々な症状がみられるが、邪毒の在り様をきちんとイメージし、どのような順序で、どの様な部位に、どの様な手技を施せばよいか考えながら治療できるようになりたいと思う。患者は、これまでの愁訴が鍼灸でとれたことに驚かれたが、身体が楽になったことで、患者のQOLの向上につながったことは良かった。

 

(※発表された内容は、個人の特定に繋がる情報が含まれるため、ブログでは大部分を割愛させていただきました。ご了承ください。)

 

4、実技タイム

 

 

 

今年最初の実技稽古です。

 

 

 

みなさん、気合が入っています!。 

 

 

…と、奥の方では何やら楽しそうな声が…。

 

 

 

朽名会長はスペシャルゲストのN君と『いやしの道幼稚園』状態でした(笑)。

 

三輪副会長も、

 

「子供が気軽に来られる雰囲気の会でありたい。」

 

とのこと。そんな和気あいあいとした会であり続けたら素敵ですね👍。

 

次回の月例会は2月17日(日)の14時開始になります。

来月もよろしくお願いします。

 

(文責:松本)

 

 

| ◇東京月例会 | 18:33 | - | -
12月東京月例会

曇天の寒い日ですが、会館内は熱気あふれる学びの場です。

根津 七倉会館 於て

 

1 静坐


坐禅、姿勢を整え、呼吸を整え、心を整えます。

 

2 講話

 

 

ー私の「境涯」ということー 

 

いやしの道協会顧問 大浦慈観先生

 

 

 朽名先生からこの講話のお話があったとき、技術的なことにするか、日本の鍼灸の歴史的なことを話そうかと色々考えましたが、このいやしの道で練習をしてこの先一人前になっていこうとしている人に一番大事なこと大事な問題は何かを考えた時、自分の恥さらしもしなきゃなと思いこうしたテーマにしました。皆さん、横田先生から色々とことあるごとに鍼灸師としてやっていくその心構えとか境涯など色々な形で発信されているのでみなさん薫陶を受けていると思いますが、決して1足飛に横田先生のような境涯には絶対なれません。ここで自分の歴史を振り返って私が今どの地点まできているのか、自分の気持ちの面でお話しした方が中間過程として、私の言葉でお伝えできたら少しは参考になるかなと思います。自分の歴史をかいつまんでおはなしします。なぜ鍼灸師になろうかと思ったから始めます。

🔷私の生い立ちと青春

・父と死と母の闘病 ー 父49歳にて死す(高2の時)。母乳癌手術と骨髄炎手術。

・青春の苦闘と家との絶縁 ー 理想と挫折。

・放浪生活 ー 福井での自己を見つめ直す体験、永平寺坐禅。

・何のために生きるか? ー 母と祖母のもとへ帰郷。

🔷鍼灸を手に入れるための旅

・サラリーマン生活の終焉 ー 組織の中での生活に行き詰まる。

・東南アジアへの放浪 ー 言葉や文化が違っても人間の考えていることは共通。日本人が忙しい毎日の中で忘れそうになっている、家族や友人など身近な人間関係を大切に思う余裕。効率や金銭的価値観とは対照的な生活。

・中国への留学 ー 文化大革命の傷跡、日本より厳しい競争社会の現実、豊かになりたい意欲の充満した社会。

・鍼灸は技の世界 ー 湯液は内から治し、鍼灸は外から治す、車の両輪。技は師を選んで自らの手で体得するもの。

🔷鍼灸の道へ踏み込んだ頃

・鍼灸学校時代 ー 早く一人前になって自立したかった。中国鍼灸と日本の鍼灸との違いに戸惑う。得気と鍼響との違い。鍼の効果とは何か?

・技術研鑽 ー 師匠の学び方に倣う。同じように刺鍼しても効果が違う。自己の工夫が大事。患者に受け入れてもらえる刺鍼方法。患者との間合い。治そうという思いの強さと技術の未熟さとの苦闘。

🔷教える立場となって

・自己脱皮 ー 謙虚さと裏腹の自信のなさの克服。前に出る勇気。

・教えることは学ぶこと ー 確信できるまで調べる、実験する。疑問をそのままにしない。

・世に問う ー 恥をかくことを恐れず。文字に残る怖さと、慎重な態度、影響を想像し創造すること。反響はボディーブローのように2〜3年後に出てくる。

・師匠の偉大さに気付く ー 先を読んで見守ってくれていた温かさ。

🔷境涯の大事さへの気付き

・患者の状態に応じた技術力の向上 ー 引き出しを多く持つ。体と心の状態に応じた対応力。

・執着を捨てる ー 見栄を張らない。卑屈にもならない。自分らしく自然体でゆく。他人のやり方と比較しない。

・己を空しくすると ー 患者の今必要としていることがみえてくる。自分のすべきことと、できないことの限界が見える。患者自身がすべきことへのアドバイス。

・信頼と安心を基本とした繋がりへ ー 自分は意識せずとも、天は見ている、人も見ている。結果としてなぜか必要とされる。

・今度は他人を活かせる番へ ー 人の良さを伸ばす、惜しみなく与えられる自分への自己変革。

🔷技術的な面での違い

・慈しみの心を忘れず ー 患者が何を辛く感じているかが分かる。どこが辛くて、どのように辛くて、何がとなっているか、想像できる。

・患者の身体が半透明な空間にみえる ー 分断された諸臓器の組合せでなく、広がりのある一つの皮に包まれた空間。

・患者と自己との境目が稀薄になる ー 針を置くという行為により、自己の気が相手の身体に浸透し、相手の身体も気を反響させ応じてくる。楽になってゆく瞬間や変化が分かる。

・「観」の目を養う ー 初対面の患者、多種の病態へも臨機応変に対応でき、楽な状態に、前向きな気持ちにさせられる。治療開始時と一ヶ月後、半年後との違いや経過が、長いスパンで観える。

 

3 症例検討 

 

「左足先の痺れとお腹の張り感を訴える患者」

 

坂井敏惠 先生(指導教授 朽名宗観先生)

 

 


【はじめに】三年前から足の痺れを発症した患者。痺れの他に首の寝違え等、その時々の愁訴があることが多く、それらの愁訴とともに痺れを中心に治療を行った。段々と痺れは減ってきたが、もう少しというところで留まっている。今後の治療をご指導頂きたく発表する。
【患者】女性、四十七歳、身長一七十儖漫既婚。
【初診日】平成三十年七月三日
【主訴】〆犬梁裏が痺れる。△腹が張ってつらい。
【随伴症状】首肩背凝り。足の張り。
【現病歴】(神二十七年二月、両鼠径部に痛みが出た。痛みは三週間〜一ヵ月程で治まったが、左足裏の先の方に石が一枚入っているような感覚が出る。それから左臀部から足に痺れが発症した。坐骨神経痛と言われたとのことで、他で鍼灸治療を受け、一カ月程で臀部から大腿部の痺れはなくなり、足先に痺れが残っている。
大学で中国へ留学し食生活が変わったころから不調を感じるようになる。今の仕事に転職して食事の時間が不規則になり、普段からお腹が張りやすい。普段お酒を飲んでいないが(元々はお酒が強いとのこと)、昨日は冷たいお酒を飲んだ。胃が動いていない感じがする。
【既往歴】十歳頃、虫垂炎手術。三十六歳、子宮筋腫を内視鏡手術。
【診察所見】〈脈診〉弱・遅。〈舌診〉やや白っぽく丸い。潤。薄っすら白い苔があるが少し剝がれて荒れた感じ。やや舌下静脈色が濃い。
〈腹診・背診〉上腹、下腹部ともに冷えている。軽く圧すといやな感じで、深く圧せない。あまり膨れているという感じではないが、ガスがある。下腹は力がない。肩甲間部、背部、腰部とも軽く圧して圧痛が多い。
〈問診他〉増悪寛解因子はなく、常に痺れている。便秘も下痢もしやすく、月経前は便秘気味になる。月経は三十日周期。月経痛があり、毎回市販薬を服用。排卵痛もある。子宮筋腫の切除をする前はもっと月経痛がひどく、漢方薬を飲んだこともあったが、あまり良くならなかった。仕事は営業職で、重い鞄を持って、長距離の移動が多く、冷房の効いた電車に長い時間乗ることや、長時間車を運転することも多い。睡眠時間は短い時は三〜四時間のこともある。風呂は普段はシャワーのみで、疲れて湯船につかれない。風呂や外気温で熱くなると首から汗をかきやすく、朝は鼻水が出やすい。食欲はあまりないが身体が持たないので食べている(肥ってないが体格がいい)。仕事で、食べたくないときに食べたり、冷たい飲み物を出されて飲むことも多い。初診時に手足は冷えていなかったが、二診以降その時により、膝が冷えていたり、足首や、手足が冷えているときとあった。普段は冷え性という自覚はあまりない様子。徒手検査は行わなかった。
 
【診断】お腹の冷えがあり胃腸の働きが悪い体質。飲食で冷えてさらに機能が悪くなっている。仕事が不規則で、移動時間が長く身体へ負担がかかっている。腰から足への血流が悪く、坐骨神経痛として痺れが出ている。また、瘀血もあると思われる。
【治療方針】お腹の冷えを温め、気血の停滞を動かし胃腸機能を活性化させる。腰から足への気血の還りをよくして坐骨神経痛としての痺れを改善させる。
【治療・経過】(寸三、二番使用)両孔最穴辺りが硬く反応があり切皮程度の鍼。左腕に鍼をするとお腹がぐるっと動く。気海、中脘に鍼と灸。気海の鍼でまたお腹が動き、少し楽になる。肩甲間部から腰部の圧痛の強い場所に鍼と灸。左大腿、下腿部を手掌圧迫。左足首を動かしてもらい右手に引き鍼。腰の圧痛の強い所にパイオネックス。左足裏の母趾側の痺れは少なくなり、小趾側が強くなる。お腹は楽になる。
 第二診(七月十日)〜第二十六診(十二月二十六日)略。
【考察】治療中に痺れが顕著になりその後薄れてきたりするので、血流がよくなると一時的に強くなるのではないか。観風先生の治験録で、痺れの治療で刺絡をしているのを読んで、邪を抜くイメージで刺絡をしたら顕著に痺れが取れることがあったが、痛くないようにとためらうとうまく切れず、その場であまり変わらないが、次の日に楽になることもあった。足裏には鍼はさせないと思っていたが、切皮程度でも刺したら効果があった。観風先生にお伺いした所、甲側から斜めに、あたらないように、足底の方まで刺すとよいとのことで試みた所、響きと同時に痺れが指先に強くなりその後、引き鍼などで薄れていった。
痺れは坐骨神経痛とお腹の冷え、瘀血による血行不良の影響かと思うが、治療後三日位は調子が良くて段々まだ戻ってくる。痺れ発症前の両鼠径部痛は仙腸関節障害などがあっての症状なのかとも思う。
お腹の張りは生活習慣が変わらないと難しいのかと思うが、腹巻をしたり白湯を持ち歩いて飲んだり、風呂につかるようになったりして最近は毎日お酒を少し飲めているとのことではある。
治療後はだるくなったりしてその後楽になると言われるが、陰証傾向で、疲労が回復する以上に働いているので、鍼数を少なくしたり、強く響かせすぎないようにして身体への負担を減らさなければと思う。

 

4 実技稽古

 

 各自がこの一ヶ月間取り組んだ課題を指導者の先生にみてもらい、実技の向上をはかります。

 

5 忘年会

 

 各テーブルに指導者の先生方が数名いらして、入門、初伝、中伝のグループがそのテーブルを回っていきます。

普段の月例会ではタイムスケジュールがあり余談などあまり出来ませんが、ここぞとばかり先生方に色々なことをお聞きすることができまた、先生方の多彩な一面も見せて頂きとても楽しい美味しい時間でした。

 

 

 

(文責 酒井)

 

 

 

 

| ◇東京月例会 | 12:16 | - | -
11月 月例会

あいにくの曇りですが、根津の七倉会館にて月例会が行われました。

 

1.静坐

坐禅、姿勢を整え、呼吸を整え、心を整えます。

 

 

2.講話

 石井 道観 先生

「万病一風論的治療の整形外科的疾患の応用」

 

 

症例を通して、どの様に整形外科的疾患に万病一風論的治療を応用するかの話がありました。

 

症例

「患者、50歳男性

主訴:左肩甲骨内側縁の鈍痛、左上肢の鈍痛

現病歴:2〜3日前に上をみながらクーラーの掃除を3時間した後から、主訴の症状が現れひどくなってきた。今のところ日常生活に大きな支障はないが、痛みが出ている部分には20年前からコリがあり今回と同じような事を繰り返していた。

所見:平脈、舌微薄苔

 腹診:下焦がやや柔らかい程度で特記すべきことはない。

 二便は正常、食欲あり、睡眠は毎日7時間ほど熟睡できている。

 ジャクソンテスト陽性、スパーリングテスト陽性

鍼灸院受診前に整形外科にて頚椎症性神経根症の診断を受けた。

既往歴:中学生のころに器械体操をしていてその練習中に高鉄棒から落下して頸椎捻挫をしたことがある。」

 

「このような患者が来院したときに何をイメージするか。

何をさらに聞くべきか。」

 

質疑応答があり以下のことをさらに聞き出しました。

 

「ジャクソンテスト、スパーリングテストでは頸から上肢にかけて痛みがでる。

今はじっといていても痛い。

痛みで夜、目が覚めることはない。

筋力低下なし。

皮膚感覚に低下はないが、左の母指と示指に違和感がある。

上を向くと痛みは強くなるがそれ以外に楽な姿勢はない。

自覚で熱感はない。

右利き。

仕事は接客業の会社員。」

 

このような患者は鍼灸院によくきますが、患者のイメージをつかめるかが大切です。イメージがつかめたら治療方針が定まって、その方針に従って治療を行うことができます。

 

参加者に患者のイメージ図を描いてもらい質疑応答が続きます。

 

患者のイメージ図というのは毒や邪が描いてあります。そこが原因となるので、邪毒がわかれば治療方針が立ちます。

 

万病一風論的治療では目に見えない身体に悪影響を及ぼす働きを邪といい、

目に見える実態で身体に悪影響を及ぼす働きを毒といいます。

 

この患者は頚椎症性神経根症という西洋医学的診断を受けています。第6頸椎か第7頸椎あたりで何かしらの影響を受けている可能性があります。

普段は神経が影響をうけるものがあったとしても、第0段階では身体の方が症状を出るのを抑えているので、症状は出ません。いわゆる鎮静化した毒の状態でいられます。しかし、身体に負担をかけることをしたので鎮静化した毒を刺激してしまって毒が騒ぎ出してしまった。その毒からでた邪が神経を刺激してしまって今回のような症状が出てしまったと考えられます。

 

整形外科的疾患でも万病一風論的にみると邪毒があるという考えを持つことが大事です。普段は鎮静化した毒があって、それが刺激されて毒が騒ぎ出してそこに炎症がおきて邪が発生して症状がでます。そのように考えれば邪毒に対する治療を行うことができます。整形外科的な鍼灸でも一見やることは一緒ですが、万病一風論的な考え方をすると、このように身体をイメージすることができます。腰椎のヘルニアでも、坐骨神経痛でも同じです。整形外科的疾患も万病一風論的に治療ができます。

 

純粋な整形外科的疾患ならこれでいいですが、純粋にこういう状態の患者は少なく、実際に診断してみると胸に心煩や心下痞硬があることもあります。もともと頸部に古傷があって今回のように上を向いて作業して悪化したのではなくて、過度なストレスが加わって今回のような症状が出た場合は純粋な整形外科的疾患としてみるのではなく、心煩や心下痞硬から今回の症状でているというイメージを持たないと治療は失敗します。

 

腹診にも所見があり、心下痞硬があり、胸にザワツキがあっても、今回の症例のように上を向いてから上肢が痛いという症状がでた転機を考えれば、どちらを優先して処置しればよいかという判断はついてきます。

 

むかし頸椎捻挫をしてその後遺症で瘀血が残っています。その瘀血を毒ととらえることができます。また、椎間孔も狭くなっていることも考えられます。目に見える実態というのを毒と広い意味で考えるのであれば、椎間孔が狭くなっているのも毒ととらえることもできます。

 

きっちりした答えはありません。100%正解の治療はありません。

正解かどうは治療をやってみてその患者がよくなったら正解、よくならなかったら不正解です。その時、どのようにしたらよかったのだろうと、その答えを考えられるようにするには自分の中で患者のイメージを持っていないとできません。患者の状態がこうだからこうしようしようとします。もしそれでダメだったら、患者の状態のとらえ方が間違っていたのか、こうすべきだったところを間違った方法でおこなったのかをつかんでいないと次のステップに行けません。

イメージをしっかりと持つことが大事です。

 

症状がでている原因となるイメージを描ければ治療方針が立ちます。治療方針が立てば治療ができます。治療というのはシンプルにやれればやれるだけ効果があります。

 

 

3.症例検討会

 中川 由紀 先生

「帯状疱疹、帯状疱疹後痺れ&痒み体験記」                    

 

 

【はじめに】鍼灸師であるならば、帯状疱疹の患者様や、帯状疱疹後神経痛の患者様に接することは多々あることだと思われる。そんな時何かの役に立つこともあるかもしれないので、私自身が経験した帯状疱疹について、病の経過や治療内容を報告する。

【患者】女性、四十四歳。鍼灸師。

【主訴】帯状疱疹(左顔面部)。帯状疱疹後の痺れ、痒み

【主訴以外の症状】左側頸部(リンパ節)が腫れて痛い。

【現病歴】

 8月中旬 飲み会が多かった。

 8月末  背中、首に筋肉痛的な痛みが有った。

 9月1日 のどが痛い。

 9月2日 歩き回って汗をかき、冷房で冷える。夜飲み会。

 9月4日以降は【経過・治療】参照

【既往歴】入院・手術なし。水疱瘡は4、5歳に罹患。

【増悪・軽快因子】

痛み:何をしていてもずっと痛い。ロキソニンを飲むと二0分後〜三時間程度は和らぐ。入浴時も少し和らぐ。

痺れ:刺絡すると改善。ある時期からは刺絡すると悪化し灸すると改善。入浴時改善。

痒み:布団に入るとかゆみ増大。歩いて五分位経つと増大。一度掻くと増大。入浴時改善。

【診察所見】(9月6日時点)

〈脈状〉やや弦。寸関尺は記憶なし。浮沈は中。左右差なし。

〈舌状〉見ていない。

〈腹状〉腹部:上脘、中脘固い。下焦冷え、軟弱。

 ※痛みが強い時はどうしても所見を取る気力が出ない。


【診断】帯状疱疹。体力の虚がベースにあり、三叉神経第一枝、表皮に炎症が起こった。越婢加朮湯証。

【治療方針・治療内容】西洋薬でウイルスの増殖を抑え、先急後緩で悪血を出す。休養を取る。痛みが強い時は消炎鎮痛剤で抑える。

【経過・治療】

9月4日 頭部の一点(「五処」辺り)がピリピリすることに気づく。継続して同じ所がピリピリするというのは初めて。

9月5日 ピリピリが更に増して少し痛い。

  (略)

10月5日 痺れ、痒みなし。

10月9日 目の奥が痛いような気がする時が二、三回あった。天柱、風池辺りに響くまで雀啄し、攅竹、糸竹空にお灸したら軽快。

 

【考察】帯状疱疹発症について考えてみると、9月1日頃、のどが痛く、風邪をひきそうな予感があった。その時邪に入られ、その前後飲食の不摂生があったため水毒増大し、虚証となり、免疫力が低下し、元々あった水痘ウイルスの毒性が増大したと考える。帯状疱疹の場合、一刻も早くウイルスの増殖を抑える薬を服用した方が予後が良いことは知っていたが、最初は痛みがそれ程無かった為、「せっかくの機会だし、鍼灸治療を行って様子を観察したい」と、皮膚科受診のタイミングが遅れてしまった。しかし、「合宿(9月16日)までには腫れを何とかしたい」との思いから積極的に刺絡を行ったことが、後の神経痛予防につながったと考える。また、痺れ、痒みを体験したことで、その辛さを身をもって実感できたことは良い経験だった。そして、痺れの治療に関して、悪血を出すことが効果的な場合と、修復を助けるために正気の虚を補うことが効果的な場合があるということがわかった。

 

 

4.実技

今月は初伝と中伝が組んで稽古しました。

  • 5.連絡事項

    来月は月例会の後、忘年会を行います。

    参加をご希望の方でお申し込みがまだの方はお早めに幹事の小池さんまでお願いいたします。

 

   文責:野田

| ◇東京月例会 | 21:52 | - | -
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